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第21回 津山(まち)づくりミーティング-目指す農業と担い手育成-

第21回 津山(まち)づくりミーティング-目指す農業と担い手育成-

12月22日、津山市農業後継者協議会に所属する若手農業者の5人が、就農のきっかけや目指す農業、農地の維持、担い手育成などについて、まほらファーム(野村)で市長と意見交換しました。
*まほらファーム イチゴやブドウなどの収穫体験ができるほか、農業の担い手育成などに取り組む市農業振興拠点施設

ミーティングの様子

就農のきっかけ
市長 実家が田畑や山林を持っていることもあり、農業には思いがあります。
農業を生業として成り立たせる「攻める農業」と、農地を守っていく「守る農業」とを分けて考える必要があると思っています。
例えば、津山産で一束100円のネギが、他の産地では200円になります。ここの儲けを作っていくことが大切です。
農業を生業として成り立たせることができなければ、担い手の確保も農地の維持も難しいと感じています。
まず、皆さんが就農したきっかけや、現在生産されている農作物などを教えてください。
参加者A 青果を作って販売する一般的な農家と異なり、サツマイモの苗を主に、青果のおおもとになる苗を作って出荷しています。
後継者が減っている中、津山の農業後継者協議会には、米や酪農、花、果物など、さまざまな分野の人が集まっていて、いろいろな角度からの意見を聞くことができます。
参加者B 父と一緒に養鶏と野菜の生産をしています。
養鶏だけを行っていて経営がうまくいかなくなった祖父の姿も見ていたので、リスク分散の意味もあって、少量多品目の野菜生産に取り組んでいます。
日々やらなければならないことに追われていて、取り残してしまうことも多く、そういった課題をどう克服するかを考えながら、挑戦しているところです。
参加者C 一昨年の9月から、まほらファームで新規就農のための実務研修を受けていて、今年の1月から就農する予定です。
元々実家は兼業農家で、米を作っていますが、米だけでは生活できないという思いがありました。
家族が体調を崩したことをきっかけに転職し、定時で帰れる仕事をしながら、勝央町のモモ農家の友だちを手伝っていました。
家族の体調が落ち着いてきたら、農業をしてみたいという気持ちが強くなる中、まほらファームでの新規就農者の研修に参加しました。
研修を受ける中で、ブドウの栽培に興味がわき、実家の保有する農地と、足りない部分は借りた農地で取り組んでいきたいと思っています。
初心者なので、農業に携わるさまざまな人と関わる機会を増やしていきたいです。
参加者D 加茂地域で農業を始めて5年目で、現在13町(約13ヘクタール)を耕作し、主に米を作っています。
条件が不利な中山間地域での米の高付加価値化やブランド化を目指し、無農薬や有機栽培を手掛けてきました。
現在の規模では有機栽培だけでは難しく、飼料用米やWCS(稲発酵粗飼料)、小麦なども作っています。
担い手がいなくなった中山間地域では、将来的には1人100町(約100ヘクタール)は担当しないと土地を守ることができない未来が来るのではないかと思っています。
土地を「守る農業」と「攻める農業」を組み合わせ、大規模な面積を維持していかなければ、中山間地域での米作などの土地利用型の農業は厳しくなると感じています。
現在、LAアライアンス(市内下高倉東を拠点に、条件が不利な中山間地域で持続性ある農業の実現を目指して若手農家が集まって結成した営農集団)に参加して、2年目になります。
参加者E 農業に興味があり、畑違いの仕事から転職し、15年前に新規で就農しました。
まほらファームを立ち上げた初代代表の「生活が成り立つ農業を成り立たせなければならない」という考えに影響を受け、そこに自分の一生を費やそうという思いで、まほらファームを引き継ぎました。
まほらファームでは、将来的に農業経営ができる就農者を育てる場所にしたいと思っています。
農産物は、個々の農家が良いものを作るだけでなく、例えば「津山地域のブドウはおいしい」など、地域が産地として確立していることで、その価値が市場に認められるところが大きいと思います。
地域が産地として認められているかが、同じものが100円で売れるか200円で売れるかの違いです。
この地域で、ブドウなら、作って農協に出荷すれば生活していける。そんな農産物が一つでもある津山は、恵まれた地域です。
地域としての価値が認められる農産物が何品目もあって、生産者が選択できればもっと良いと思います。
ここから先、次の世代のために何ができるか悩んでいます。
これまでの地域のまとまりが、地域としての農産物の価値を作り、認められてきた経緯がありますが、個々のことだけ、今だけを考える新規就農者も増えていて、次の時代に引き継ぐという感覚が薄くなっているようです。
これも時代の変化と捉え、個々が潤うような仕組みを考えていくことも必要だと感じています。
ミーティング参加者の寺谷さん ミーティング参加者の山口さん

目指す農業の姿
市長 ブランド化された品目を増やしていくことも課題ですね。
また、生業として成り立たせるには、通年の事業にする必要もありますね。
わたしは「儲かる農業」という言葉を、さまざまな機会でお話ししています。
一例でいうと、機械の補助などの対象にもなる10町(約10ヘクタール)の田で、小麦の生産も取り入れながら、まずは、サラリーマンの平均年収を稼げるようになることを目指すものです。
では、儲けるために、10町の農地を集約するにはどうすればよいか、どんな品目に取り組めばよいかなどが、産地化・ブランド化の取り組みと合わせて課題になります。
それぞれ違う農作物に取り組む中で異なる課題もあると思いますが、皆さんは「儲かる農業」にはどんなことが必要だと思いますか。
参加者E わたしたちの会社でいえば、資材費などの高騰で生産環境が厳しいイチゴ、自然任せで安定しないイチジクの生産を止めて、人を効率化し、ブドウに傾注するなど、儲かっている部分に総力を注げば利益は上がっていくと思います。
また、高級ブランド化して、値段を上げれば解決するかもしれませんが、わたしの目指すところではありません。
わたしが買いたいものでなければ、売りたいと思いません。
贈答で一般的な人が送りやすい値段でいうと3,000円から5,000円程度。品質でも、価格でも、いろんな人に食べて喜んでもらえるものを作っていきたいです。
市長 資材費の高騰は大きな問題だと認識しています。少しずつですが、皆さんを応援する制度を整えました。
参加者E 補助制度の手続きが簡素化されると、さらにうれしいです。
参加者D わたしが取り組んでいる中山間地域など不利な条件の農地では、例として出た10町(約10ヘクタール)の農地では、家族まで養うのは厳しいです。
圃場整備など、効率化が大切だと思います。
現在管理している田は、1番大きくて2反(約20アール)で、枚数でいうと100枚を超え、畔の草刈りなどにもコストが掛かります。
何で儲けるかの品種選定も大切ですが、将来増えていく管理農地を見越した設備投資ができれば、反当たりのコストを下げることができると思います。
また、業務用や加工用の農産物は品薄で、輸入品が取り扱われているケースも多い中、高付加価値化やブランド化だけでなく、プロの農家が業務用・加工用の分野に打って出て利益が出れば、勝負ができると思っています。
米でいうと、1俵の価格が15,000円より下がらなければ、収入は確保できると思います。
でも、小麦の技術で米を作れるようになるなど、技術の向上で、1俵7,000円で作れてしまう他地域の米が市場に出回ると、勝負はできません。
そういった先進的な取り組みを行う他の産地にも学びながら、効率的に作れる技術を突き詰めていく必要があると思います。
参加者C これから取り組もうとしているブドウも品種によっては、市場価格が下がっているものがあります。
ブドウだけにしがみつかず、他のものにもつなげながら、自分が自信を持てる良いものを売っていきたいです。
また、後継者も外からの人にばかり目を向けるのではなく、地域に住む人が地域の農産物に携われる機会を作っていく必要があると思います。
良いものは外にあると感じている人もたくさんいますが、例えば、地域で収穫できる農産物に目を向け、食べてもらえる機会を増やすなど、地域に住む人たちが地域の農産物に関われる場が増えていってほしいです。
参加者B 儲けることも大切ですが、どうやったら農地を維持できるか考えています。
特産品が何種類かあり、生産者が選んで育てることができたら良いと思います。
特産品が一つでなく、いろいろなものができるのが、津山の強みだと思います。
環境的にいろいろなものを作れるという地域の強みを生かし、少量多品目でさまざまな品目に挑戦し、自分の姿を示すことで、担い手育成や農地の活用につながっていくとうれしいです。
ただ、何でもできるという分、売り先は一番大切です。
ショウガやアスパラガス、ブロッコリーなど、農協が買い取ってくれる品目は安心感がありますが、価格は安定していません。
市長 価格が安定しないと設備投資もできないですね。
参加者A キュウリなどの作物は出荷する時期が集中し、価格が下がってしまいます。
わたしが取り組んでいるサツマイモの苗は、1本ずつは安価ですが、苗の値段はあまり変わらないため、まとめた量を出すことで価格は一定になるのが強みです。
青果は、消費される場所が限られているため、出荷すれば出荷するほど安価になります。
つるし柿を作っていますが、家に柿の木があり、軒先でつるし柿を作る風習がある津山では、当然売れません。作物にあった売り場は、重要です。
津山の市場の販売能力が強くなれば、直売所価格でなく市場価格で儲かる仕組みが整うと思います。
ミーティング参加者の早瀬さん ミーティング参加者の田邉さん ミーティング参加者の鈴木さん
 
担い手育成のカギは道筋の見える化
市長 地域の農業を盛り上げていくためには人が重要です。担い手育成について話が出ましたが、担い手育成で重要なことは何でしょう。
参加者A わたしは後継者として父のもとで就農しましたが、新規就農者にとっては「何を作る?」「どこに売る?」が一番の悩みです。
作ったものをどこに売るか、道筋を分かりやすく示すことができれば、農業にも参画しやすいのではないでしょうか。
参加者B 「これだけ儲かる」ということにひかれて農業を始める人は少ないと思います。
安心して農業に取り組めるよう、生産から販売までの道筋を示すことが大切です。
参加者C 「農業はこういうものだ」というイメージにとらわれたくないと思っています。
「こんなことができる」という幅広い可能性を見出し「そんなことができるならやってみたい」と1歩踏み込んでもらえるようになりたいです。
大変なこともある中で、やりがいを感じたり、心が豊かになったりすることを見出せるような活動をしていきたいです。
参加者D 何を作っても地域であふれてしまっているので、都市部での販売や給食での活用など、農産物を地域外に売って外貨を稼ぐ仕組み作りが重要です。
そのために、必要な物量を生産者に情報提供する仕組みを作ってほしいです。
また、いったん耕作放棄地になると、荒れた状態から始めていくのは難しいです。
荒れないように管理し、維持することもこれからは大切です。
だからといって、耕すだけでも経費は掛かります。
例えば、地元の畜産農家との間で牧草の販路を作り、牧草を植え、土づくりをしながら、必要な時に農作物の生産にシフトするなど、農地の保全管理の仕組みを後押ししてほしいです。
参加者E 企業のように、人の受け皿だけ準備しても、農業を目指す人は来ません。
家族の同意や収入の確保など、個々に応じた課題があります。
ブドウでも生業として行っていこうとすれば、最初に2,000万から3,000万円程度の投資が必要で、事業をしたことがない人だと、心配しながら送り出しています。
参加者C そこが農作業がしたいか、農業経営がしたいかの違いですよね。
参加者E 就農したいと思う人のニーズがどこにあるか見据えないと、新規就農者は増えません。
まほらファームで研修を受ける人は、自分一人で取り組みたい人が多く、一生懸命やったことが対価で直に帰ってくることを望んでいる。そのニーズに合った仕組みを整えていきたいです。
市長 新規就農者のニーズも大切ですね。
農業は基幹産業であり、食糧生産はわたしたちの暮らしになくてはならないものです。
産地化・ブランド化の取り組みと合わせ、収入を確保しながら、生活が保障される生産から販売までの仕組みの道筋を示すことも重要ですね。
今後も皆さんの力を借りながら、地域農業の活性化に取り組んでいきます。
ミーティング参加者の集合写真

左から 早瀬裕貴さん、山口葉子さん、鈴木妃奈さん、田邉晃次さん、寺谷和也さん、谷口市長

参加者の皆さんからいただいた事後アンケートの声

  • 市長の儲かる農業に対する思いが少し理解できました。先に対しての具体的な策が何も生まれなかったのが残念です。
  • 農を生活の糧としている農業者、未来に繁栄するであろうものに集中して、補助制度などを考えてほしいです。
  • 市長と直接話せて良かったです。お金や収入のことに重点を置いているという思いがありましたが、もっと根本的なことも考えてくださっていることが分かってよかったです。
  • 市長の思いを聞けたことはもちろんのこと、会のメンバーから意見を聞く良い機会でした。
  • 新規就農に対して少しでもリスク回避ができる仕組み、労働力や運転資金不足の課題対策を考えてほしいです。本気で頑張れる人を増やせる仕組みを。

このほかの津山(まち)づくりミーティングの様子はこちらをご覧ください

この情報に関する問い合わせ先

津山市 秘書広報室(広報)
  • 直通電話0868-32-2029
  • ファックス0868-32-2152
  • 〒708-8501岡山県津山市山北520
  • Eメールkouhou@city.tsuyama.lg.jp