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施政方針 令和5年3月

「新時代を“築く”大いなる挑戦」

1 はじめに
 令和5年3月定例市議会の開会に当たり、今後の市政運営に向けての基本的な考え方と主要施策の一端を申し述べたいと存じます。
 はじめに、観測史上最大となった1月の大雪への対応に当たりましては、多くの住民、事業者の皆様に並々ならぬご尽力をいただき、日常生活の速やかな再開につなげることができました。この場をお借りしまして、厚くお礼申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症については、国において感染症法上の分類が5月から5類へ引き下げられることが決定され、社会との共生を念頭に置きながら、徐々に平時の生活を取り戻していく道筋が示されたところであります。
 一方で、昨今の円安や不安定な世界情勢によるエネルギーや食料品などの物価高騰が、住民の暮らしや事業経営に大きな影響を及ぼしております。
 こうした背景の下、本市では人口減少・少子高齢化が進行しており、地域の経済や社会、コミュニティの維持に支障が生じることが懸念されております。
 このように内外の難局が複合的に押し寄せている状況の中で、本市を持続可能でレジリエンスの高い地域としていくためには、大胆な対策が必要であります。
 少子化や人口の流出に歯止めを掛けるため、思い切った移住・定住施策を行うとともに、「津山市スマートシティ構想」や、「(仮称)津山まちじゅう博物館構想」などの新時代のまちづくりのビジョンを着実に推進して本市の付加価値を高めることにより、住民の暮らしへの満足度や幸福感Well-Being の向上につなげ、「誰もが輝く拠点都市津山」を築いてまいります。
 次年度においては、これまで以上に、住民、事業者、関係機関等の多様な関係者が未来のまちのビジョンを共有しながら、共創型のまちづくりを展開してまいりたいと考えており、その取組内容について、次の4つの重点目標と8つのまちづくりのビジョンに沿ってご説明いたします。

2 市政運営における基本的な考え方(4つの重点目標)
 それでは、まず、今後の市政運営における重点目標について申し述べさせていただきます。
 次年度は、第5次総合計画・後期実施計画の2年目となり、4つの重点目標の達成に向け、さらに施策を充実させてまいります。
 1つ目は、「快適で楽しい、住み続けたい街を築く」であります。
 スマートシティ構想やまちじゅう博物館構想に基づき、住民が豊かさを実感しながら、地域に愛着を持って住み続けられるまちづくりを進めるとともに、地域防災力を向上させるための災害対策の充実・強化、公共交通機関の利便性の向上、幹線道路網等の都市基盤整備に取り組み、快適で安全なまちづくりを推進してまいります。
 2つ目は、「安心して暮らせる地域共生の社会を築く」であります。
人口減少や高齢化によって担い手が不足し、地域で支え合う関係が希薄化していることから、誰もが地域から孤立しないよう、人と人、人と社会がつながる取組を進め、地域課題の解決や持続可能な地域コミュニティの実現を図るとともに、高齢者や障害のある方が、住み慣れた地域で健やかに生活できるよう、地域共生社会の実現を目指してまいります。
 子育て世代の経済的負担を軽減するため、国の新たな対応を待つことなく、本市独自の対策を講じ、安心して出産、子育てができる環境の整備を速やかに、また、強力に進めてまいります。
 住民の「健康寿命」の延伸を図り、日常生活が制限されることなく、いつまでも自分らしく暮らせるまちを目指してまいります。
 3つ目は、「持続可能な地域内循環型の経済を築く」であります。
域外に流出する資金を少なくし、それを域内で循環させる「地域内循環型経済」を実現するため、地域内の受発注をより促進するとともに、クリエイターやICT企業とのマッチングなどの新たな取組を行い、キャッシュアウトしない強靭な地域内サプライチェーンを構築してまいります。
 また、事業の再構築や事業継続を促進するため、成長分野における創業や、地場産業の高付加価値化の支援に取り組み、地域の稼ぐ力の強化を図ってまいります。
 中心市街地のまちづくりについては、民間投資を促す施策を展開し、賑わいの創出と地域経済の活性化を図ってまいります。
 4つ目は、「教育の充実で未来を切り拓く人材を築く」であります。
 人材は地域の大切な財産であり、持続可能な社会を構築するためには、地域で活躍する人材の育成が不可欠であります。
 学校教育においては、グローバル化やデジタル技術の進展など急激に変化する社会環境の中で、子どもたち一人ひとりに、課題を見出し、主体的に考え、多様な人々と協働しながら課題を解決することができる能力を育成することが求められています。個人の学びから一歩踏み出し、共に学び合うことで、その成果を広く社会の中に活かすことができる基礎となる力を育んでまいります。
 産業分野においては、経営者やIT人材など様々な職種・職域を対象としたキャリアアップやスキルアップに資する教育機会の提供に取り組んでまいります。

3 新たな津山を築く8つのビジョン
 続きまして、個別の施策について、後期実施計画に掲げたまちづくりの8つのビジョンに沿って申し述べさせていただきます。

(1)拠点都市にふさわしい都市機能が整備された津山へ
 最初に、「拠点都市にふさわしい都市機能の整備」であります。
 本市は県北の中心都市であり、拠点性を活かした都市機能の整備が重要であります。
 空港津山道路は、県南地域とのアクセス時間の短縮や人流・物流の活性化など沿線地域の経済に好循環をもたらすとともに、被災時において国道53号の代替路として機能する重要な南北軸の要となります。引き続き沿線自治体とも連携し、未着手区間の早期事業化を国、県に対し重ねて要望するとともに、現在施工中の津山南道路についても、地元調整等に積極的に協力し、より一層の事業の促進を図ってまいります。
 河辺高野山西線「北工区」については、交通の利便性向上や3次救急医療施設である津山中央病院までの救急搬送の時間短縮が期待され、現在、県による道路設計が進められており、県道とのアクセス道路の整備を含め、引き続き県や地元関係者等と協力し、事業促進に努めてまいります。
 総社川崎線については、市街地へ集中する交通を分散し、地域の経済活動や防災活動の円滑化も図られることから、一日も早い供用開始に向け、引き続き、本線工事を進めてまいります。
 生活道や通学路としての市道については、利便性と安全性を向上させるとともに、老朽化する道路施設の長寿命化を図ってまいります。
 城東地区の道の駅整備については、地域外から活力を呼び込む「ゲートウェイ型道の駅」を国等と共同で整備することで、城東重伝建地区並びに中心市街地への周遊を促進してまいります。引き続き、地域住民や関係団体等から意見を伺いながら、基本計画の策定を進め、現地調査等に順次着手してまいります。
 防災レジリエンス向上の取組については、近年多発するいわゆるゲリラ豪雨等に対応するため、幹線雨水路の点検・検証を行い水路断面の確保など雨水路の整備を行ってまいります。また、つやま災害情報メールや、緊急告知防災ラジオ、防災行政無線により速やかな避難行動を促し、地域防災力の向上を図ってまいります。
 大雪への対応については、今般行った検証を踏まえ、除雪が早急に実施できる体制を再構築し、避難行動要支援者等への支援活動がスムーズに行われるよう、引き続き関係機関や団体等との連携を深めるとともに、災害ボランティア等による共助の仕組みづくりをさらに進めてまいります。
 公共交通の利便性の向上については、JRの路線維持に向け、国、県等へ要望を行うほか、関係者とも連携して利用促進を図ってまいります。また、福祉の観点も入れながら、JR在来線や基幹バス路線の2次交通及び交通空白地の移動手段の確保策として、AI等の先進技術と既存の交通手段を融合させた公共交通網の構築に向けて取り組んでまいります。さらに、ごんごバス循環線に非接触型ICカード決済システムを導入し、利用者の満足度の向上を図ってまいります。
 まちじゅう博物館構想の推進については、本市全体を「屋根のない博物館」と捉え、歴史、文化、自然、食などの「津山らしさ」を発見、再認識し、住民と行政が一体となって、新たな魅力を創造・発信することにより、交流人口、関係人口の創出を図ってまいります。また、市、関係機関、関係団体により組織するコンソーシアムを立ち上げ、具体の施策を展開し、新たなシティ・プロモーションにつなげてまいります。
 城下地区については、UR都市機構に協力をいただき、多くの歴史・文化施設を有する地区の特色を踏まえたまちづくりを進めてまいります。旧国際ホテル跡地については、隣接する森本慶三記念館と一体的な利活用を検討し、市民・観光客が憩える場所として整備を進めてまいります。
 中心市街地の活性化については、今津屋橋からザ・シロヤマテラス津山別邸までの鶴山通り沿線地域における町並みの景観形成や、中心商店街の空き店舗対策、城東・城西地区等の空き家対策を引き続き行うとともに、国の制度も活用しながら、民間投資を促す取組など様々な施策を進め、まちの魅力と活力の向上につなげてまいります。
 多くの市民から開設が望まれている映画館については、市内で気軽に新作映画が鑑賞できる施設の開設に向けた調査・研究を行ってまいります。
 公民館の施設整備については、今年度、用地取得を予定している佐良山公民館の造成工事等を進めるとともに、大崎公民館及び河辺公民館の建替えに向け、地元協議を進めてまいります。
 デジタル化の推進については、地域産業の生産性や生活の質の飛躍的な向上が図られることから、本市では、デジタル実装を強力に進めております。
 少し先の未来の便利で快適な技術や仕組みをいち早く生活に実装するスマートシティ構想を推進し、社会や産業の構造的な変革を支えるとともに、それを担う人材の育成も進めてまいります。
 データ連携基盤を整備し、これまで別々に管理されていた様々なシステムやデータを組み合わせて、新たなサービスやビジネスを創出できる環境を整えてまいります。市民ポータルサイトによる住民一人ひとりに合わせた情報発信や、電子申請による書かない窓口サービス、買い物データを活用したヘルスケア等にも取り組んでまいります。
 情報通信基盤である光ファイバ網については、市内全域への整備を進め、高速通信環境の利用できない地域の解消を図ってまいります。

(2)安心して子どもを産み育てられる多世代共生の津山へ
 次に、「安心して子どもを産み育てられる多世代共生」についてであります。
 子育て支援については、妊娠時から出産・子育てまで、保健師等による身近な伴走型相談支援と経済支援を一体的に推進してまいります。
 経済的な負担の大きい多子世帯の生活を応援するため、第2子以降について新たに市独自の給付金制度を創設し、安心して子育てができる環境を整えることにより、出生数の増加を図ってまいります。
 不妊不育治療の支援については、昨年4月から治療費の一部が保険適用となりましたが、本市では、自己負担となる費用の独自助成制度を創設し、経済的負担の軽減を図っており、引き続き、不妊不育に悩む家庭の支援を行ってまいります。
 子ども医療費については、令和6年1月から、入院・通院分の自己負担無償化の対象の上限を中学生から高校生に拡大し、経済的な支援の充実を図ってまいります。
 放課後児童クラブについては、支援員の処遇改善の継続実施による人材確保や、クラスの増設、定員増に向けた取組を引き続き実施し、利用を希望する全ての児童の受入れができる体制を目指してまいります。次年度は、一宮小の児童クラブを1クラス増設し、定員の拡充を図ることとしております。
 地域子育て支援拠点施設「すくすく」は、中央児童館へ移転し、働く保護者も利用しやすいよう土日開設を行うとともに、育児参加促進のための講習会などを実施してまいります。
 児童発達支援や療育機能の拡充については、公認心理師等が保育所・幼稚園に直接訪問し、専門的なアドバイスや指導、助言を行う「保育所等訪問支援事業」に新たに取り組んでまいります。
 医療的ケア児への対応については、新たにコーディネータを配置し、医療的ケア児及びその保護者への支援や、関係機関等との連携強化を図ってまいります。
 子どもの貧困対策については、安心して過ごせる居場所づくりの費用助成や学習・生活支援を引き続き行い、世代を超えて貧困が連鎖することのないよう、関係団体等と連携し、支援体制の充実を図ってまいります。
 ヤングケアラーへの支援については、昨年12月に庁内横断的組織として検討会議を設置し、関係部署が連携して対策を進めているところであり、引き続き地域全体で見守ることができる環境づくりを目指してまいります。
 地域福祉については、誰もが住み慣れた地域で健やかに安心して暮らせる地域共生社会の実現を目指し、第3次地域福祉計画など各種計画を策定し、全ての人が支え合い、助け合うまちづくりを推進してまいります。
 また、高齢者の多様な心身の課題に対し、保健事業と介護予防を一体的に実施する「健康長寿はつらつ事業」を新たに開始することとし、市内全8圏域のうち、まずは1圏域で実施してまいります。「こけないからだ講座」などの通いの場への積極的な働きかけに加え、保健指導などの個別支援も行ってまいります。
 高齢者の居場所づくりについては、身近な場所に気軽に集まることのできる「ふらっとカフェ」の普及を進め、生きがいの創出による、介護予防事業を推進してまいります。
 障害のある方への支援については、地域生活支援拠点や障害福祉サービス事業者等と連携を図り、地域で自分らしい暮らしができるよう取組を進めるとともに、障害者の高齢化・重度化や「親亡き後」を見据えた支援体制の強化に努めてまいります。
 福祉交通施策については、老朽化している市の福祉車両を更新し、学区外に通う難聴児などの特別支援学級等に在籍する児童・生徒のスクールバスとして使用するなど車両の効果的な活用を図るとともに、高齢者や障害者の交通支援策として、AI デマンド型交通などの新たな移動サービスの導入を検討してまいります。
 国民健康保険については、標準保険料率との乖離が生じたことや、昨今の物価高騰などの社会情勢も考慮し、5年間据え置いてきた保険料率を引き下げてまいります。また、健康ポイント事業や人間ドックへの助成も引き続き実施し、健康寿命の延伸と医療費の抑制を図ってまいります。
 久米地域の健康保持に必要な施設である倭文診療所については、現在休診中となっておりますが、本年4月から診療を再開し、地域住民の健康保持の拠点施設となるよう取り組んでまいります。

(3)雇用が安定して定住できる津山へ
 次に、「雇用の安定と定住」についてであります。
 企業誘致については、現在、久米産業団地の立地率が100%、津山産業・流通センターでも90%を超え、分譲可能な用地が少なくなったことから、引き続き雇用の創出と域外需要の取込みにつなげていくため、新たな産業団地の整備に向けた適地調査を進めてまいります。
 若者の地域内就業の促進については、「つやまエリアオープンファクトリー」の参加企業をさらに拡大し、津山高専、津山工業高校等の市内教育機関と地域企業との連携に努めるとともに、インターンシップの推進や、「高校生向け企業ガイダンス」などを実施し、地元での就職が選択肢となるよう、地域企業と学生との接点創出に注力してまいります。
 移住定住に向けた取組については、「津山ぐらし移住サポートセンター」を拠点とするワンストップの移住相談や、住まいや仕事のマッチングを進めるとともに、県外からの移住の促進と空き家の購入や改修費等の助成などきめ細やかな支援を継続してまいります。
 また、本年リニューアルした移住・定住ポータルサイト「LIFE津山」を活用し、より一層の情報発信に努めるとともに、トライアルステイの充実や農業トライアルワーク、地域体験型プログラムの実施など、移住・定住に向けた各種施策を推進してまいります。
 女性活躍の推進については、まちなかカレッジの女性キャリア支援講座や、ワーク・ライフ・バランスについての企業向けの研修会を開催するとともに、仕事と子育てを両立し、安心して働き続けることができる職場環境づくりに企業と連携を図りながら取り組んでまいります。

(4)地域産業が発展する津山へ
 次に、「地域産業の発展」についてであります。
 地域経済の発展のためには、今後成長が見込まれるエネルギー、環境分野における脱炭素の取組は有効な手段の一つであり、本市においては、脱炭素の取組を単にカーボンニュートラルの実現だけでなく、地域経済の活性化や住民の暮らしの質の向上につなげていく必要があると考えております。
 その足掛かりとして、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて先行的な取組実施を行う「脱炭素先行地域」の選定を受けるべく、本市の課題解決に向けた施策をとりまとめてまいります。
 また、津山市地球温暖化対策実行計画に基づき、市の事務・事業の実施に伴う二酸化炭素排出量を、国の政府実行計画と同水準に削減するとともに、地域全体の取組においても、現計画を改訂して、新たな産業振興や地域課題の解決につなげてまいります。
 さらに、エネルギー効率の高い機器や二酸化炭素の排出削減効果が図れる設備等を導入した個人に対する補助制度を拡充し、環境負荷の少ないライフスタイルへの転換を促進するための需要を喚起し、地域産業の振興と家庭における一層の二酸化炭素排出量削減を図ってまいります。
 地域の企業や産業の発展のためには、エンジンの役割を担う、つやま産業支援センターの取組が不可欠であります。そのため、引き続き新製品開発や販路開拓、生産性向上など、企業の成長に向けたチャレンジを専門家派遣や補助制度などでサポートするとともに、人材育成や創業支援に取り組み、地域の稼ぐ力の強化を図ってまいります。
 企業のデジタル化への促進については、「つやまICTコネクト」の成長支援や「津山市IoTラボ」を通じたDX推進、サテライトオフィスの設置に対するサポートを行うとともに、企業内のデジタル人材育成やICT導入を積極的に推進し、生産性の向上につなげるなど、企業の競争力の強化を図ってまいります。また、ワーケーション事業を実施し、ICT・DXを柱に地元企業と市外企業のマッチングを行ってまいります。
 地域内サプライチェーンについては、クリエイターやICT企業と地域企業とのマッチングや地域内での受発注を促進・強化してまいります。
 また、津山ステンレス・メタルクラスターの成長支援や、縫製業、木材加工業による「MADE IN TSUYAMA」プロジェクトなど、地場産業の高付加価値化支援に引き続き取り組んでまいります。
 併せて、京都府立大学とも連携したフラン樹脂化技術による高付加価値木材などの商品のプロモーション・販路開拓についても支援してまいります。
 創業促進については、創業塾や創業者コミュニティの形成、高校生、高専生への創業意識の醸成などのほか、社会的課題の解決につながるソーシャルビジネスの創出を図ってまいります。
 農業は、食料の供給や農地などの環境保全を担う主要産業として、持続的な発展が求められる重要な産業であります。
 農業ビジネスモデルの構築については、地域農業生産者の所得向上を図るため、地域商社「曲辰」を核として、引き続き、定住自立圏エリアの農産物の高付加価値化やブランド化、新商品の開発に取り組み、戦略的に圏域外への販路開拓を進め、津山地域の農業を持続可能で強い産業にしてまいります。
 津山産小麦については、作付面積を広げていくほか、パンなどへの原料供給を増やすとともに、次年度より地場産小麦を100%使用した学校給食用の麺を提供するなど、引き続き取組を進めてまいります。
 ぶどうの生産については、今後も需要拡大が見込まれることから、大規模な団地化への取組などにより供給力を一層強化し、産地が維持・発展する好循環を目指した生産振興を図ってまいります。
 つやま和牛については、出荷頭数を増加させる取組を進めるとともに、市内飲食店舗での取扱いやふるさと納税返礼品のメニュー数の拡充を行い、ブランド力の向上を図ってまいります。
 施設の老朽化が進んでいる津山市食肉処理センターについては、学識経験者等の専門家で構成する委員会を新たに設置し、将来におけるセンターのあり方を検討してまいります。
 林業・木材産業については、森林経営管理の合理化や木材の需要拡大を推進することにより林業経営体や従事者数を増やすとともに、民有林の整備や公共施設への地域材の活用、木質バイオマス事業の促進に取り組んでまいります。併せて、地域材を住宅の新築、リフォームに活用した場合の助成を引き続き行ってまいります。

(5)将来を見据えた人材育成を進める津山へ
 次に、「将来を見据えた人材育成」についてであります。
 本市の高等教育機関である美作大学・津山高専との連携については、行政課題や地域課題の解決に資する教育研究活動を新たに展開し、社会が求める職業人の育成や、卒業後に地元定着する学生と関係人口の増加を図ってまいります。
 美作大学との連携では、県北地域の教員不足など、新たに生じている社会課題に対し、地域に根ざした教育研究活動と連携した取組を進めてまいります。
 津山高専との連携では、全国的にデジタル分野をけん引する高度専門人材や創業人材が不足していることから、国に対し情報系コースの機能強化を要望しているほか、津山高専による創業人材育成の取組を支援してまいります。
 岡山大学津山スクールにおいては、県北地域を訪問し、それぞれの地域を学ぶ中で持続可能な地域づくりについて考える「Rediscovery 美作国」を引き続き実施してまいります。
 早稲田大学との連携では、自治体が抱える課題解決策などを提案する「地域連携ワークショップ」に取り組んでおり、次年度は、まちじゅう博物館構想に基づいて実施する施策の共同研究を行ってまいります。
 慶應義塾大学SFC研究所との連携では、スマートシティ構想の策定に向けた取組として、未来社会を先導する人材育成等に関する共同研究を行っており、次年度は津山ブランド事業の研究や施策立案を題材としたアイデアソン等の取組を実施してまいります。
 今後とも、地域の内外の学生と地域住民との関わりを通じて、地域課題の解決に積極的に関わる人材の育成と関係人口の創出を図ってまいります。
 また、近年のデジタル技術の革新やビジネスモデルの変化に対応するために、「地域DX推進ラボ」を立ち上げてまいります。成長分野やDXなどの新しい知識やスキルを学ぶリスキリングや、学校教育から離れた後も学べるリカレント教育の充実を図ることにより、デジタル人材の育成を進めてまいります。

(6)多様な教育機会が得られる津山へ
 次に、「多様な教育機会の充実」についてであります。
 第3期教育振興基本計画に基づき、自らの将来を自らで切り拓く人材の育成とともに、ふるさと津山に誇りと愛着を持ち、自己肯定感を高め、地域や社会に貢献できる人材の育成を目指し、教育施策を推進してまいります。
 今後の小中学校の体制整備については、少子化に伴う過小規模校の発生とともに、本市が目指す「魅力ある学校づくり」の3つの視点を踏まえ、来月末に基本方針を策定いたします。4月以降は、この方針について保護者や地域住民の皆様に説明しながら、今後の学校体制整備について議論を進めてまいります。
 教育環境の整備については、令和2年度に各校の特別教室1室にエアコンを設置いたしましたが、次年度から市内の小中学校35校の全ての特別教室にエアコンを順次設置し、より一層学習に集中できる取組を進めてまいります。
 「GIGAスクール」構想については、東京学芸大学やNTTグループとの連携事業により、ICTやVR等の技術を用いた主体的な学びや蓄積された教育データを活用したAI学習サポートの提供等により、学習活動の質を高めてまいります。
 学力向上については、令和4年度学力調査の結果では、小学校3、4、5年生の学年平均は、国語、算数ともに全国及び岡山県平均を上回っており、子どもたちの学力は着実に向上してきております。今後も引き続き、小1グットスタート支援員を、年間を通して配置するとともに、市独自の教師業務アシスト員の配置など、教育体制の充実を図ってまいります。
 全国平均を下回っている英語については、外国語指導助手ALTの派遣人数を増やすとともに、新たに授業と研修がリンクする実践型研修を実施し、指導力向上に努めてまいります。
 不登校については、小・中学校共に国、県の平均出現率を下回っているものの、長期欠席者数は増加傾向であります。現在、4中学校に配置している常駐の専属教員と別室支援員を、次年度にはさらに増員し、新たな居場所づくりと多様な学びを保障する取組を充実させてまいります。また、実態に配慮した特別の教育課程により独自の教育を実施することのできる不登校特例校についても検討してまいります。
 ニートやひきこもり対策については、青少年育成センターの機能の充実を図り、ひきこもりの理解を深めるための講演会や学習支援を行うとともに、当事者やその家族が気軽に集まることのできる場を設け、社会参加や自立への入口となるような支援を進めてまいります。
 部活動については、生徒数の減少により、単独校での活動が継続できない状況になるなど、その環境は年々厳しさを増しております。国が策定したガイドラインも踏まえ、休日の部活動の実施のあり方とともに、地域との連携・移行について検討を進めてまいります。
 特別支援教育については、市内小中学校の巡回相談や研修企画を行う「特別支援教育ナビゲーター」を引き続き配置し充実を図るとともに、本市の特別支援教育の核となる人材の育成を行ってまいります。
 郷土愛の醸成については、津山の歴史・伝統・文化等を児童生徒が主体的に学ぶ「つやま郷土学」に取り組んでおりますが、大分県中津市・島根県津和野町との「蘭学・洋学三津同盟」の協定を踏まえた教育分野における学校間の交流をさらに深め、郷土に誇りと愛着を持つ児童生徒を育成する取組を充実させてまいります。
 コミュニティ・スクールについては、令和6年度の全小中学校での展開を見据え、次年度は、新たに15校に導入してまいります。今後も、学校と共に地域が責任をもって子どもたちの教育に積極的に関わっていただく仕組みづくりを進めてまいります。
 学校給食については、地場産品を積極的に活用し、児童生徒が地域の食文化を学び、食べ物を大切にする心を育むとともに、関係機関と連携を図り、食品ロスの減少につながる仕組みづくりを検討してまいります。また、給食調理用燃料費については、引き続き、全額を公費負担とすることにより、家庭の負担軽減と安定的な給食提供に努めてまいります。
 スポーツの振興については、健康で明るい豊かな都市を目指す「スポーツ振興都市宣言」を行っており、引き続きスポーツ協会などの関係団体と連携し、誰もが健康で明るく活力のある生活が送れるまちの実現に取り組んでまいります。
 プロスポーツの誘致促進については、トライフープ岡山などの試合が市内で開催され、地域に様々な経済効果を生み出していることから、試合誘致をさらに進めてまいります。また、プロスポーツチームによる地域でのスポーツ教室の開催や、学校訪問などの交流活動を通じて、引き続き地域の活性化を図ってまいります。
 スポーツ施設の老朽化対策については、順次改修を行い利用者の安全性や快適性の向上を図ってまいります。
 加茂町スポーツセンター並びに加茂町武道館については、トイレを洋式化し、勝北スポーツ公園については、園内遊具やテニスコートの修繕を行ってまいります。
 久米市民プールについては、次年度は、整備内容等の詳細を示す「整備基本計画」を策定し、早期開業に向けた取組を進めてまいります。

(7)歴史と文化に誇りを持ち、観光都市として発信する津山へ
 次に、「歴史と文化に誇りを持った観光都市としての発信」についてであります。
 観光都市として年間観光入込客数を250万人へ押し上げ、旅行消費額の拡大を図るため、町並み、建築、食、自然等の歴史・文化遺産をつなぎ合わせ、観光客の関心や興味を引きつける魅力的なコンテンツを充実させてまいります。
 また、海外旅行博や「ツーリズムEⅩPOジャパン」に参加するとともに、ライフスタイルに合わせた情報誌など様々な媒体で積極的にシティ・プロモーションを実施し、本市の認知度を向上させてまいります。
 さらに、「春はつやま」や津山城を舞台とした各種イベント、アフター・デスティネーションキャンペーン事業などにより、誘客の促進を図ってまいります。
 インバウンドへの取組については、大阪・関西万博やアフターコロナの需要を見込み、台湾彰化市の扇形車庫と連携・相互協力を行うとともに、本市の魅力を国内外に発信するため、国の観光再始動事業も活用し、文化・観光コンテンツの造成等の取組を進めてまいります。
 また、本市の牛肉料理は、農林水産省の「農泊食文化海外発信地域SAVOR JAPAN」の認定を受けており、食文化によるインバウンド誘致を積極的に進めるとともに、引き続き国内においても牛肉グルメによる誘客を図ってまいります。
 「津山版DMO」の取組については、観光マーケティングにDXを導入し、体験プログラムの造成や農泊事業のほか、「観せる文化財から、活用する文化財へ」の転換を図る城泊事業を促進し、着地型観光につながる取組を加速させてまいります。
 アートを切り口にした観光振興については、県、JR等と構成する実行委員会が実施する森の芸術祭との相乗効果を図り、関係団体と連携した県内周遊型の観光施策を実施してまいります。
 まちなかサインの整備については、訪れた誰もがスムーズに目的地に向かえるよう、案内標識の表記の統一や多言語に対応した「観光デジタルサイネージ」を計画的に設置し、まちの魅力や回遊性の向上を図ってまいります。
 教育研修旅行については、遠足や校外学習の費用助成を引き続き行い、点在する歴史・文化施設を面的につなぎ合わせて、まちの回遊性と魅力の向上を図る取組と並行して積極的にプロモーションを実施してまいります。
 芸術文化の振興については、「津山国際総合音楽祭」の発展的な後継事業として、音楽やアートなど多様な芸術ジャンルで構成された「(仮称)津山総合芸術祭」の開催に向けた検討を進めるとともに、次代を担う人材の育成等を図ってまいります。
 城東・城西の重伝建地区の伝統的建造物については、修理や修景を進め、町並み景観の維持向上に引き続き取り組み、地域の個性を活かした持続可能なまちづくりを目指してまいります。
 県指定の文化財を保管するだんじり保管庫については、老朽化している八子の保管庫に変わる新たな施設の整備に向け、用地の調査を進めてまいります。
 「あば交流館」については、大規模改修を行い、交流人口の増加と持続可能な地域づくりを推進してまいります。

(8)行財政改革を断行し、効率的な行政運営を行う津山へ
 最後に、「行財政改革の断行と効率的な行政運営」についてであります。
 行財政改革の取組については、「財政構造改革取組方針」に基づき令和2年度から3年度にかけ、減量型と活性型の行革の取組を両面から強化したことにより、令和12年度末基金残高の目標額10億円を確保できる見込みとなりました。昨年11月の長期財政見通しにおいては、最も減少が見込まれる令和12年度の基金残高を13億7千万円にまで回復させる見通しをお示ししたところであります。
 今後の財政運営においても、厳しい状況は続きますが、本市の財政基盤をより強固なものとするため、事務事業に関する不断の見直しを継続しつつ、効率的な行政運営の取組を一層強化してまいります。
 ファシリティ・マネジメントについては、民間提案制度やコンセッション方式などの手法により低未利用公共施設等の有効活用を図ることで、施設運営費や維持管理費の削減などに積極的に取り組んでおり、この度、「第17回日本ファシリティ・マネジメント大賞2023」において、奨励賞を受賞することとなりました。
 引き続き、公民連携による取組を積極的に推進することにより、住民サービスの向上、地域内ビジネスの創出、行政コストの削減の「三方よし」を実現し、「活性型の行財政改革日本一」を目指してまいります。
 事務の効率化については、BPRによる業務プロセスの見直しにICTを活用するとともに、令和7年度の全国クラウド基盤・標準準拠システムへの移行に向けた準備を進め、住民の利便性向上や行政運営の効率化を推進してまいります。
 ふるさと納税については、本市への寄付金額は近年増加傾向にあります。応援していただくサポーター数の増加を図るため、マーケティング分析を効果的に行い、返礼品の種類の追加などの取組を一層強化するとともに、企業版ふるさと納税についても積極的に寄付を呼び掛けてまいります。
 組織機構については、社会の変化や新たな課題に的確に対応できる効率的な組織づくりのため、企画部門、環境部門、都市建設部門を再編し、デジタルの推進、脱炭素社会の実現並びに中心市街地の活性化に取り組んでまいります。

4 おわりに
 以上、次年度の主要な事業について、私の考えを申し述べました。
 私は、我がまち津山が果たすべき役割は2つあると考えております。
 一つは県北の中心都市、拠点都市としての役割であります。
 圏域全体の発展を図るためには、時には背伸びをしてでも必要な都市基盤を整備していくことが求められています。
 定住自立圏をはじめとする周辺自治体とそこに暮らす住民から頼られる存在、また、その期待に応えられる存在でなくてはならないのが本市であります。
 こうした拠点都市としてのまちづくりは、まちの活力を創出し、引いては本市の発展につながってまいります。
 もう一つは、基礎自治体として住民の生活に対する満足度を高める機能を備えるという役割であります。便利で快適なまちを創ることが本市の持続可能性を高めることにつながってまいります。
 本市に求められる役割をしっかりと果たし、誰もが輝く「拠点都市津山」を再興させるため、私は、「新時代を“築く”大いなる挑戦」を旗印とし、今後の行政経営に臨む所存であります。
 チャールズ・ティボーの提唱した「足による投票」のごとく、住所を置くことで住民が地域を選択する時代となっています。こうした選択において、本市が多くの方から支持を得られるよう、私は、「気炎万丈」の気概をもって、これからのまちづくり、地域づくりに取り組む覚悟であります。
 議員各位、住民の皆様には、なお一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。