表紙  障害を理由とする差別の解消の推進に関する津山市職員対応要領に係る留意事項  第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・ 1  第2 正当な理由の判断の視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  1  第3 不当な差別的取扱いの具体例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1  第4 合理的配慮の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2   第5 過重な負担の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3  第6 合理的配慮の具体例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4  1 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例 ・・・・・・・・  4  2 合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例・・・・・・・・・・・  4  3 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例・・・・・・・・・・・・・・・・・  5  4 障害特性に応じた留意点について(障害特性に応じた対応の具体例)・・  6  (1)視覚障害(視力障害・視野障害・色覚障害・光覚障害)・・・・・・・  6  (2)聴覚障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  9  (3)音声・言語機能障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12  (4)盲ろう(視覚と聴覚の重複障害)・・・・・・・・・・・・・・・・ 14                 (5)肢体不自由 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  16  (6)高次脳機能障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18  (7)内部障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20  (8)難病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23   (9)重症心身障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25  (10)知的障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27  (11)発達障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29  (12)精神障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 P1  第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方   法は、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害のない人に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害のある人の権利利益を侵害することを禁止している。   ただし、障害のある人の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害のある人を障害のない人と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害のある人に対する合理的配慮の提供による障害のない人との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害のある人に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。   このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害のある人を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害のない人より不利に扱うことである点に留意する必要がある。  第2 正当な理由の判断の視点   正当な理由に相当するのは、障害のある人に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。津山市においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害のある人、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び津山市の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。   職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害のある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。  第3 不当な差別的取扱いの具体例   不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお、第2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、それらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。   (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例)   ○障害があることを理由に窓口対応を拒否する。   ○障害があることを理由に対応の順序を後回しする。   ○障害があることを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。   ○障害があることを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。   ○事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害があることを理由 P2   に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。  ○身体障害者補助犬の同伴を拒否する。  第4 合理的配慮の基本的な考え方   1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。     法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害のある人が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとするいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、障害のある人が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものをいう。     合理的配慮は、津山市の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。   2 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害のある人が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。     なお、合理的配慮を必要とする障害のある人が多数見込まれる場合、障害のある人との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供を行うよりも、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につなげる視点が重要である。 P3   3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害のある人が他者とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。     また、障害のある人からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害のある人の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。     なお、意思の表明が困難な障害のある人が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害のある人が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害のある人に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。   4 合理的配慮は、障害のある人等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害のある人に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害のある人との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。   5 津山市がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害のある人が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましい。  第5 過重な負担の基本的な考え方   過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。   職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害のある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましい。   ○事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か)   ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)   ○費用・負担の程度 P4  第6 合理的配慮の具体例   第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。   なお、記載した具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。   なお、対応が難しい時や、よくわからない時には専門家等に相談しながら、適切に応対する。  1 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例   ○段差がある場合に、車椅子利用者に対してキャスター上げ等の補助をする。または携帯スロープを渡すなどする。   ○配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。   ○目的の場所までの案内の際に、障害のある人の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害のある人の希望を聞いたりする。   ○障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。   ○疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害のある人に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。   ○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害のある人に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。   ○災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害のある人に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。  2 合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例   ○筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段や、わかりやすい表現を用いる。   ○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。   ○視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。   ○意思疎通が不得意な障害のある人に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。   ○駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。   ○書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 P5   ○比喩表現等が苦手な障害のある人に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。   ○障害のある人から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて渡す。   ○会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある委員や知的障害のある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。   ○会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。  3 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例   ○順番を待つことが苦手な障害のある人に対し、周囲の人の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。   ○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の人の理解を得た上で、当該障害のある人の順番が来るまで別室や席を用意する。   ○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。   ○車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。   ○庁舎の敷地内の駐車場等において、障害のある人の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。   ○他者との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障害のある人に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。   ○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する人の同席を認める。 P6  4 障害特性に応じた留意点について(障害特性に応じた対応の具体例)    障害のある人と接する際には、それぞれの特性に応じた対応が求められる。主な障害特性と対応時に配慮すべき事項については、次のようなものがある。また、障害が多様化・重複化している中で、それぞれの個性に適切に対応していくことが大切である。    このほか、障害のある子どもについては成人者と異なる支援の必要性がある。子どもは発達段階にあり、個々の子どもの発達の段階に応じて一人ひとりの個性と能力に応じた丁寧に配慮された支援を行うことが必要である。また、子どもを養育する家族を含めた丁寧かつ早い段階からの家族支援が必要である。特に、保護者が子どもの障害を知った時の気持ちを出発点とし、障害を理解する態度を持つようになるまでの過程においては、関係者の十分な配慮が必要である。  (1)視覚障害(視力障害・視野障害・色覚障害・光覚障害)              【@障害の概要】    視覚障害とは、目が見えない、又は見えにくい状態であり、メガネやコンタクトレンズを使用しても視力や視野が一定以上は改善されない状態をいう。全く見えない(全盲)、見えにくい(弱視)など個人差がある。また、特定の色の識別が困難な場合もある(色覚障害)。    人は生活に必要な情報の約8割〜9割を視覚から得ると言われており、視覚障害のある人はその障害により様々な困難を抱えて生活している。   【A主な特性】    ○文字の読み書きが困難。また、タッチパネル式の機械はうまく操作できない。    ○耳で聞くことや手で触れること等で得られる情報を頼りにしている。ルーペ等を使うことや点字などにより情報を取得する。ただし、視覚障害のある人全てが点字を読めるとは限らない。    ○一人で移動することが困難。自分がどこにいるのか、そばに誰がいるのか、説明がないとわかりにくい。不慣れな場所や混雑した場所での移動には不安や大きな困難を伴う。    ○人の視線や表情が理解できず、コミュニケーションに苦労する。    ○点字ブロックの上に、物や自転車などが置かれていると困る。    ○外出する際は白杖を使用したり、盲導犬を連れたりしている。    ○先天性の場合もあるが、最近は糖尿病性網膜症などで受障する人も多く、高齢者では、緑内障や黄斑部変性症が多い。    ○視力障害:視覚的な情報を全く得られない又はほとんど得られない人(全盲)と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる人(弱視)に大きく分けられる。     ・視力をほとんど活用できない人の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握している。     ・文字の読みとりは、点字に加えて最近では画面上の文字情報を読み上げるソフト P7      を用いてパソコンで行うこともある。(点字の読み書きができる人ばかりではない。)     ・視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用したり文字を拡大したり近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ている。    ○視野障害:目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなる。          「求心性視野狭窄」見える部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなる。                   遠くは見えるが足元が見えず、つまずきやすくなる。          「中心暗転」周囲はぼんやり見えるが真ん中が見えない。                文字等、見ようとする部分が見えなくなる。    ○色覚障害:色を感じる眼の機能が障害によりわかりづらくなる状態。(色が全然わからないというよりは、一定の色が分かりづらい人が多い。)    ○光覚障害:光を感じその強さを区別する機能が、障害により調整できなくなる状態。暗順応(明→暗で目が慣れてくること)や、明順応(暗→明で目が慣れてくること)がうまくできない。    ※白杖について:白杖は視覚障害のある人が歩行する時に使う道具。地面に杖の先端を触れさせながら歩くことで、障害物や段差、路面の変化を知らせてくれるだけでなく、車の運転手、自転車・歩行者などに視覚障害のある人であることを知らせ、注意喚起を行う。    ※盲導犬について:盲導犬は視覚障害のある人の先導役として、障害のある人の危険を察知したりする重要な役割を担う。仕事中は、トイレも食事もせずに付き添っているので、むやみに触ったり、食べ物を与えたりしないようにする。公共施設、デパート、飲食店などには、盲導犬の受け入れが義務付けられている。   【B主な対応】    ○視覚障害のある人は困っていても、自ら介助等を求めることが困難な場合があるので、戸惑っている人を見かけたら、まず声かけをする。声をかける時には前から近づき「●●さん、こんにちは。△△です。」など、自分の名前を伝える。    ○声だけだと分かりづらいこともあるので、軽く肩に触れて「こんにちは。何かお手伝いすることありませんか。」と声がけすると気付きやすい。この時、恥ずかしがらずに行うことが大切である。    ○例えば、視覚障害のある人は、信号機のある交差点で、赤になったとか青になったとかわからないことが多いので、白杖を持っている人を見かけたときに、「信号が変わりましたよ。」と軽く肩に触れて声がけをする。(ただし、視覚障害のある人が驚かないように配慮する。)    ○音声、点字や拡大文字など、視覚情報を代替する配慮。    ○説明する時には「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あと10メートルほど前方です」「あなたの正面」「● P8     ●くらいの大きさ」などと具体的に説明する。    ○中途受障の人では白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な人も多いため留意が必要。    ○普段から通路(点字ブロックの上等)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害のある人が使用している物の位置を変えないなど周囲の協力が不可欠。    ○視覚障害のある人に、インターネットで情報提供する際には、画面拡大ソフト、画面音声化ソフト(読み上げソフト)などを有効活用することによって、視覚障害のある人が読みやすいようなホームページ作りが望まれる。また、写真やイラストなどの画像に説明文をつけるといった配慮が必要。    ○盲導犬には、触ったり食べ物を与えたりしないようにする。    ○移動介助の配慮       視覚障害のある人が抱える大きな問題の一つとして、単独での歩行及び移動の困難さが挙げられる。移動介助を頼まれたり、困っている人を見かけたときは、上記の対応と合わせて、以下のポイントを参考に誘導する。    ・まずは、どのような介助が必要なのか聞く。その本人の希望を聞いた上で支援を行う。    ・誘導は、視覚障害のある人の手を引くのではなく、視覚障害のある人にひじか肩を持ってもらう。誘導する人は脇をしめ、段差や階段の前ではいったん止まり、言葉で伝える。    ・誘導するときは身長に大きな差がなければ肘を持ってもらい、相手の早さに合わせて、半歩程度横前を歩くことが基本。もし身長差がある場合には、肩や腕に手を添えてもらうなど、歩きやすいように工夫してみる。    ・周囲の状況(「階段があります」など)を説明しながら移動すると安心感が高まる。特に段差の前では、一度立ち止まり、指示することが大切。    ○※白杖SOSシグナルを見かけたら、「どうしたのですか」と声をかけ、困っていることを聞いてサポートする。     ※「白杖SOSシグナル」とは       外出先などで困ったことがあった際に、白杖を頭上50センチメートル程度に掲げて周囲にサポートを求める合図。(社会福祉法人福岡県盲人協会により提唱)     ※「白杖SOSシグナル」運動とは       東日本大震災などを契機に、白杖SOSシグナルが見直されようとしており、岐阜県岐阜市が平成27年3月に制定したシンボルマークを活用し、全国的な普及啓発をめざしている運動。 P9  (2)聴覚障害                【@障害の概要】    ○聴覚障害とは、聴感覚に何らかの障害があることにより、音や人の声が聞こえにくい状態をいう。その程度には個人差があり、全く聞こえない人やある程度聞き取りが可能な人もいる。    ○聴覚障害のある人には、生まれつき聞こえない「ろう(あ)者」と、音声言語の獲得後に聞こえなくなってしまった「中途失聴者」があり、そのコミュニケーション手段も障害の特性や程度により様々である。    ○障害が発生した時期及び障害の程度や生育環境や教育環境によって、コミュニケーションなどの社会生活上の困難さは異なる。   【A主な特性】    ○聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、その人が抱えている困難さを理解してもらえなかったり、他の人からは気づかれにくい側面がある。    ○言葉などの音による情報を得ることが困難であるため、文字や絵、図、写真、表情など、見て分かるものが大事な情報取得の手段となる。    ○手話を使う人もいるが、聴覚障害のある人全てが、手話ができるわけではない。    ○病院での呼び出しや駅の構内放送に気づかないなど、日常生活での生活のしづらさがある。車のクラクションなどに気づかず、危険な状態に陥ることがある。災害時の音声による情報取得が困難で不安である。    ○先天性のろう者の場合は、手話でコミュニケーションをとる人も多い。    ○難聴者は補聴器や人工内耳で聞き取りを補う。    ○補聴器や人工内耳を装用している場合、スピーカーを通じる等、残響や反響のある音は、聞き取りにあまり効果が得られにくい。    ○聴覚障害のある人のコミュニケーション方法には手話、筆談、口話など様々な方法があるが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害のある人は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせるなど使い分けている。    ○聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより、聴覚障害のある人の国語力は様々であるため、筆談の場合は、相手の状況に合わせる。   【B主な対応】    ○聴覚障害は外見上分かりにくい障害であり、その困難さを理解してもらいにくい側面がある。まずは本人からその置かれている状況や不都合な点を聞いて、理解することを心がけることが大切である。    ○音声だけで話すことはできるだけ避け、視覚的なより具体的な情報も併用するようにする。また、同時に複数の人が話さないようにする。    ○手話や文字表示など、目で見てわかる情報を提示する配慮を行う。    ○聴覚障害のある人の中でも、聞こえ方は様々であり、育ってきた環境も様々なの P10     で、先天性聴覚障害者・中途失聴者・難聴者など、それぞれに合わせたコミュニケーション方法をとることが必要である。    ○わかりやすい話し方を心がける。    ・顔の見える位置で、はっきりと口を動かす。    ・文節で区切る(例 ここに/名前を/書いてください)    ・複数の人が一度に発言しない。    ○聴覚障害のある人本人にどのようなコミュニケーション方法(会話方法)がよいか確認するとともに、ある方法での意思疎通が困難な場合は、他のコミュニケーションを図りやすい方法を用いる。また、手話・筆談・身振り・指文字・空書・口話など一つの方法だけでなく、いくつかの方法を相手や場面に応じて組み合わせて使うことも場合によっては伝わりやすくなる。    ○コミュニケーション方法の例     ◇手話      手の動きや顔の表情、体、目の動きなどで意思を伝える言語。聴覚障害のある人のコミュニケーション方法の手段として、平成23年度に改正された障害者基本法で、言語として位置付けられた。聴覚障害のある人の約2割程度の人が使用している。     ◇手話通訳      手話を使って聴覚障害のある人と健聴者のコミュニケーションを仲介するもの。     ◇筆談      口で話をするのではなく、メモ用紙等に互いに文字を書いて意思を伝え合う方法。手話等ができない健聴者と聴覚障害のある人がコミュニケーションを図る際には最も精度が高いものと考えられている。      (筆談する際のポイント)      ・短文(箇条書き)で書く。※日本語が苦手な人もいる。      ・漢字を使用する。(漢字から意味を理解することができる。)      ・記号や図を用いる。      ※スマートフォンなどのアプリに音声を文字に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができる。     ◇要約筆記      話し手が話している内容や会議の進行、講演の内容などを要約し文字にして伝える筆記通訳。     ◇空書き      健聴者が指を使ってガラスに文字を書くようにする。聴覚障害のある人は筆順で読み取るので読み手に合わせた書き方はしない。     ◇口話      口の形で言葉を読み取る。口の形にメリハリをつけリズミカルに適切なスピードで話す。日常生活用語を使うときは読み取りやすいが熟語は読み取りにくい。    ○伝わりにくいときの工夫 P11     ・手がかりになる言葉を挿入する     (例 「たまご」買ってきて。→ホットケーキ作るからたまご買ってきて。)     ・筆談や身振りを積極的に交える。     ・聞き直しやすい雰囲気づくり(対人関係に消極的にならないよう)     ・大事なことはメモをして渡す。     ・広告や案内書などにFAX 番号やメールアドレスを載せる。     ・その他、FAX、インターネット、携帯電話画面への文字入力など各種機器を使ってコミュニケーションをとる。    ○聴覚障害のある人は、健聴者の集団での会話にはなかなか入りにくい状況があるので、孤立しないよう配慮が必要である。    ○聴覚障害のある人が健聴者と会話する際、緊張のため言いたいことが十分言えないこともあるので、話しやすい雰囲気づくりが大切である。    ○聴覚障害のある人との会話においては、質問が具体的であることや主語をはっきりさせることが大切である。    ○聴覚障害のある人が参加する会議では、手話通訳および要約筆記が必要となり、会議のリズムやスピードからずれることも起こるが、発言の権利を確保するためには会議の流れに間を持たすことが重要である。    ○聴覚障害のある人が手話通訳を利用しても意思疎通が成立するまで時間がかかることもあるので配慮が必要である。 P12   (3)音声・言語機能障害                   【@障害の概要】      音声機能障害は、喉頭や発声筋等の音声を発する器官に障害があるため、音声や発音、話し方に障害がある状態を言う。      言語機能障害は、言語を構成するための神経調節機能に障害があるため、言葉の理解や表現に障害がある状態を言う。例えば、失語症等がある。     【A主な特性】    <喉頭摘出を行った人の主な特性>     ○喉頭部周囲のガンのため喉頭摘出を行った人には、声帯からではなく別の機能を使って音声を発声する人もいる。(例:食道発声(食道を震わすようにして発声)や電気喉頭(首のあたりに振動する器機をあてて発声)など)     ○喉頭摘出を行った人は、嗅覚が低下している。    <失語症の主な特性>      主に脳出血、脳梗塞などの脳血管障害によって、脳の言語機能の中枢(言語野)が損傷されることにより、一旦獲得された、聞く、話す、読む、書くといった言語機能が障害された状態をいう。     ○聞くことの障害      音は聞こえるが「ことば」の理解に障害があり、「話」の内容が分からない。      単語や簡単な文なら分かる人でも早口や長い話になると分からなくなる。     ○話すことの障害      伝えたいことをうまく言葉や文章にできない。      発話がぎこちない、言いよどみが多くなったり、誤った言葉で話したりする。     ○読むことの障害      文字を読んでも理解が難しい。     ○書くことの障害      書き間違いが多い。      また「てにをは」などをうまく使えない。文を書くことが難しい。    <構音(こうおん)障害の主な特性>      声帯の振動によってつくられた原音は、咽頭から上に続く咽頭、口腔、鼻腔などの付属管腔に共鳴して音声となるが、その付属管腔に形態的又は機能的異常があるために正しい語音をつくることができない言語障害をいう。     ・正確に話す言葉自体を聞き取ることが困難な状態となる。     ・話す運動機能の障害、聴覚障害、咽頭摘出などの原因がある。 P13    【B主な対応】     聞き取りにくいことなどがあるが、一人一人の方の状況に応じてコミュニケーションをとり、温かく普通に接することが大切である。    <喉頭摘出を行った人への主な配慮>     ○とっさの声が出しにくかったり、器具を通した発声により機械的な声になっていることもある。喉頭摘出をした人が発声に問題を抱えていることに対する理解が大切である。     ○喉頭を削除しているため、鼻や口で呼吸はしていない。事故や病気等で呼吸がなく人工呼吸をする際には、頸(頸)の前を開いて呼吸孔を露出し、顎を上げて呼吸孔に口をあてて強く息を吹き込む。呼吸が戻ったら頸の呼吸孔から酸素吸入をする。    <失語症の人への主な配慮>     ○表情がわかるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短い言葉や文章で、わかりやすく話しかける。     ○一度でうまく伝わらない時は、繰り返して言ったり、別の言葉に言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすい。     ○「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすい。     ○話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなる。     *「失語症のある人の雇用支援のために」(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター)より一部引用    <構音障害の人への主な配慮>     ○しっかりと話を聞くことが大切である。     ○会話補助装置などを使ってコミュニケーションをとることも考慮する。 P14   (4)盲ろう(視覚と聴覚の重複障害)    【@障害の概要】     「盲ろう」とは、視覚と聴覚の両方に障害があり、日常生活や社会生活に大きな困難を抱えている状態をいう。     障害の程度は様々で、「全く見えず、聞こえない」「見えにくく、聞こえない」「全く見えず、聞こえにくい」「見えにくく、聞こえにくい」など人により大きく異なる。    【A主な特性】     ○障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられる。     (視覚障害、聴覚・言語障害の項も参照のこと)    <見え方と聴こえ方の組み合わせによるもの>    @「全盲ろう」:全く見えず、聞こえない状態    A「弱視ろう」:見えにくく、聞こえない状態    B「盲難聴」:全く見えず、聞こえにくい状態    C「弱視難聴」:見えにくく、聞こえにくい状態    <各障害の発症経緯によるもの>    @「盲ベース盲ろう」:盲(視覚障害)があり、のちに聴覚障害を発症したもの    A「ろうベース盲ろう」:ろう(聴覚障害)があり、のちに視覚障害を発症したもの    B「先天性盲ろう」:先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症したもの    C「成人期盲ろう」:成人期以後に視覚と聴覚の障害を発症したもの     ○盲ろう者は、視覚障害と聴覚障害を併せ持つため、情報の取得や外出が困難であるため、テレビやラジオを楽しんだり本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられることが多い。     ○盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、あるいは他の障害との重複の仕方等によって異なり、介助方法も異なる。     ○ ろうベースで、のちに見えなくなる人が多く、点字を身につけるのに時間がかかる人が多い。    【B主な対応】     (視覚障害、聴覚・言語障害の項も参照のこと)     ○そばに人がいても分からないことがあるので、まず、話しかけてみる。話しかける時はそっと手や肩に手を触れ、自分の名前を伝える。様々なコミュニケーション方法を確認・試行して、その人にあった方法で意思疎通を図る。     ○話が通じているか常に確認する。また、会話の内容とあわせて、周囲の状況をできるだけ伝えるようにする。他の人の発言や、「道沿いに赤い花が咲いている」などの情景等、できるだけその場の状況を知らせることも大切である。     ○盲ろう者関係機関等の専門家に相談し、対応に関する助言を受ける。 P15     ○障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害のある人と同じ対応が可能な場合があるが、 同様な対応が困難な場合が多く、手書き文字や触手話、指点字などの代替する対応や移動の際にも配慮する。     ○様々な絵、文字、表示等のコントラストをはっきりさせ視認性に配慮する。     ○会議等で事前に資料を送付する場合は、文章を読み取れるように予め点訳することもあり時間を要するので、1週間程度前に送付するよう配慮する。     ○コミュニケーション方法の例      ◇手書き文字:相手の手のひらに指先などで直接文字を書き伝える。誰にでもできるのが利点。      ◇触手話:相手の行う手話に触れて、手話の形や動きを読み取る。弱視の人は近距離で相手の手話を目で見て理解することもある。障害の程度や明暗など周囲の環境によって工夫が必要。      ◇指点字:点字タイプライターのキーの代わりに、盲ろう者の指を直接たたいて点字を表す。両手の人差し指、中指、薬指の6本の指を点字の6点に見立てて、直接たたいて点字を表す方法。人により読み取る早さや理解が異なる。      ◇音声:聴覚の活用が可能な人に対して、耳元や補聴器のマイクなどに向かって話す。声の大きさ・抑揚・早さ・音の高さなど、聞こえ方に合わせた配慮が必要。      ◇文字筆記:視覚の活用が可能な人に対して、紙やパソコンに文字を筆記して伝える。文字の大きさ・間隔・線の太さなど見え方に合わせた配慮が必要。     ○言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝える。     (例)状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など P16   (5)肢体不自由    【@障害の概要】     肢体不自由とは、四肢(上肢・下肢)や体幹の機能が病気や怪我により損なわれてしまい、そのために歩行や食事、入浴など日常生活動作に困難を伴う状態をいう。肢体不自由となる原因は様々で、先天的なものもあれば事故等による後天的なものもある。障害の程度や不都合に感じることにはかなりの個人差があり、障害の状態に応じて、車椅子や義肢、装具等を使用することで失われた機能を補いながら生活している人もいる。    【A主な特性】     ○主に下肢の障害のために歩行が不安定な人や車椅子、杖などを使用している人は階段など段差があるところでの昇降に苦労する。     ○ドアの開閉が困難なことがある。     ○手や指、腕などに障害のある人は、高い所にあるものが取りにくく、床に落ちているものは拾いにくいことがある。     ○脳性麻痺や脳血管障害により、会話の困難な人がいる。     ○下肢や体幹に障害のある人は体のバランスをとることが難しいため、転倒したり、よろめいたりしてしまうことがある。    <車椅子を使用している場合>     ○車椅子を使用している人の状態は、一人ひとり異なり、それぞれの状態によって、様々な車椅子がある。例えば、事故などで両足が麻痺する脊髄損傷では両腕で車椅子をこぐが、両腕にも麻痺がある等、重度であれば電動車椅子を使用する場合がある。     ○病気等による筋力低下や関節損傷などで歩行が困難な場合がある。     ○ベッドからの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で援助が必要な人の割合が高い。     ○車椅子使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになる。     ○主な症状      ・脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害など)      ・脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、知的障害重複の場合もある)      ・脳血管障害(片麻痺、運動失調)     ○十分なスペースがなかったり、ちょっとした段差や障害物があるために、移動することができないことがある。     ○高いところにあるもの、床にあるものなどを手にすることが困難である。     ○ATMや自動販売機等に、正面向きでは手が届かない。     ○障害者用駐車スペースが空いていないため、駐車に困ることがある。    <杖などを使用している場合>     ○脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調) P17     ○麻痺の程度が軽いため、杖歩行や装具歩行が可能な人や、切断者などで義足を使用して歩行可能な人は、日常生活動作は自立している場合が多い。     ○失語症や高次脳機能障害がある場合もある。     ○長距離の歩行が困難であったり、階段、段差、エスカレーターや人ごみでの移動が困難な場合もある。    【B主な対応】     ○歩行が困難な人にとっては、通路上に荷物や物が落ちているなど障害物があると通行の大きな妨げとなる。特にドアの前や狭い通路においては十分なスペースを確保し、障害物を置かないようにする。     ○歩行が困難な人のそばを通り過ぎるときは、ゆっくり歩く。     ○階段等、段差の前で困っている人がいたら、移動を手伝う。     ○水などで濡れて滑りやすい床など転びやすいので、雨天時などに配慮が必要。     ○トイレでの杖おきの設置や靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮が必要。     ○上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができる配慮が必要。    <車椅子を使用する人への配慮>     ○車椅子を使用する人への移動介助を行う際は、次のことに配慮する。      ・車椅子を動かす場合には、まず「動かします」「前に進みます」など声をかける。また、方向転換や停止時にも声をかける。周りに障害物がないか確認する。車椅子を急に押したり、押す手を急に離さないようにする。      ・停止の際はもちろん、介助者が車椅子から少しでも離れる場合はブレーキをかけるようにする。      ・急なスロープを下る時は後ろ向きでゆっくりと下るようにする。傾斜がある場所では加速がかかり危険なことが多いので、特に注意する。      ・前輪は側溝や小さい段差ほどひっかかりやすいので、特に注意する。     ○自転車ですれ違うときは減速するかよける。      (車椅子は急にかわす動きができない。)     ○机を使用する際に車椅子が入れる高さや作業を容易にする等の配慮。     ○ドア、エレベータの中のスイッチなどの機器操作のための配慮。      (ボタンを代わりに押す。乗り降りしやすいようにドアを開けておく等)     ○目線をあわせて会話する。     ○脊髄損傷のある人は体温調整障害があるため、部屋の温度管理に配慮。    <杖などを使用している場合の配慮>     ○滑りやすい床など転びやすいので、雨天時などの対応。     ○トイレでの杖おきの設置や靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮。     ○上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができる配慮。 P18   (6)高次脳機能障害    【@障害の概要】     脳卒中、インフルエンザ脳症、脳腫瘍、脳血管障害等といった病気や交通事故などが原因で脳に損傷を受け、記憶障害、注意障害、失語や、感情のコントロール不良といった感情障害などが引き起こされる症状のことを「高次脳機能障害」と呼ぶ。     高次脳機能障害の症状は脳の損傷部位により様々であるが、後天的な障害であるため、これまで当たり前にできていたことができなくなったことへの対応に、本人も周囲も戸惑ってしまう場面が多くある。そのため、日常生活や社会生活への適応が困難となり、学業や職場に適応できず、退学や退職をせざるを得なくなるなどの深刻な問題となることもある。また、肢体不自由など身体的な後遺症がない場合、外見では症状がわかりにくく、本人の自覚症状が薄い場合も多いことから「見えない障害」とも言われている。    【A主な特性】     ○以下の症状が現れる場合がある。     記憶障害:すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりするという、受傷発症後の学習障害がある。更には、それ以前の記憶の喪失を認めることもある。     注意障害:集中力が続かなかったり、ぼんやりしてしまい、何かをするとミスが多く見られる。          二つのことを同時にしようとすると混乱する。          右の脳が損傷を受けたとき、主に左側の食べ物を残したり、障害物に気が付かないことがある。(半側空間無視)     遂行機能障害:自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てられない。     社会的行動障害:ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。             こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢できない。             思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする。     病識欠如:周囲は困っているにもかかわらず、本人は「困ったことはない」と自分の障害を認識できないことが多く、できるつもりで行動してトラブルを起こしやすい。     失語症:言葉の障害を伴う場合がある(「(2)聴覚・言語障害」の項を参照)。    【B主な対応】     ○日常生活や対人関係、仕事などが上手く行かず自信をなくし、混乱や不安の中にいることを理解する。これまでの生活や人生観などを尊重した関わりを持つようにする。     ○高次脳機能障害のある人に話しかけるときは、ゆっくり、わかりやすく、具体的 P19      に話す。情報は、メモを書いて渡し、絵や写真、図なども使って伝える。何かを頼むときには、一つずつ具体的に示す。     ○疲労やいらいらする様子が見られたら一休みして気分転換を促すようにする。     ○この障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関の支援コーディネーターに相談する。    <記憶障害のある人への配慮>     ○新しいことを覚えられない、約束を忘れてしまうなど記憶に障害のある人には、必要に応じて言葉で伝えるだけでなくメモを渡すなどする。     ○自分でメモを取ってもらい、双方で確認する。    <注意障害のある人への配慮>     ○何かをお願いするとき、指示するときは複数のことを一度にしないようにする。     ○短時間でこまめに休憩してもらうようにする。     ○周囲の人や物音などに気が散って集中できない場合は、部屋を変えたり机の向きを変えて集中しやすくするなど、環境を調整する。     ○コミュニケーションを取るときは、まず本人がこちらを見ているか確認する。    <社会的行動障害のある人への配慮>     ○何らかのきっかけでいきなり泣き出す、怒り出すなど感情のコントロールが難しいことがある。そのような場合は、冷静に話をすることが困難な場合が多く、説得をして落ち着かせようとするのは逆効果となることもある。席を外したり、話題を変えて気分転換をする等、時間をかけ、落ち着くのを待つなどの対応が必要である。    <言葉の障害のある人への配慮>     ○言葉がうまく出てこないことがあるので、困っている人を見かけたら何を言いたいのかを表情や言葉の端々から推測してみる。プレッシャーを与えてしまうと更に言葉が出にくくなるので注意が必要である。     ○何かを尋ねる時は、「はい」、「いいえ」など一言で返答できるような簡単な質問を心がける。 P20   (7)内部障害                                   【@障害の概要】     内部障害とは、体の内部(心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝臓機能、HIVによる免疫機能)のいずれかに障害のある状態をいう。     内部障害の人は、その障害が体の内部にあることから、外見から分かりにくく、周囲から理解が得づらく、電車やバスの優先席に座りにくいなど、心理的ストレスを受けやすい状況にある。     障害のある臓器だけでなく、全身状態が低下しているため、体力が低下しやすく、疲れやすい。重い荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担を伴う行動や作業が困難な場合がある。こうしたことから集中力や根気が続かないことがある。特に肝臓機能障害のある人はこうした症状が顕著に現れる場合がある。     また、内部に障害のある人には継続的な医療的ケアが必要な人も多いため、病院への通院や日常生活を円滑に送るための周囲の理解と配慮が必要である。    【A主な特性】     ○心臓機能障害      全身に必要な血液を送り出すポンプの役割を果たす心臓の機能が、様々な病気により低下してしまう状態。動悸や息切れなどの体力低下が見られ、ペースメーカー等を体内に埋め込んでいる人もいる。     ○腎臓機能障害      様々な病気により、腎臓の働きが悪くなり、身体にとって有害な老廃物や水分を排泄できなくなり、不必要な物質や有害な物質が身体に蓄積する状態。人工透析を行ったり、移植を受け、拒絶反応予防のために免疫抑制剤を服用している人もいる。     ○呼吸器機能障害      様々な病気により、肺の機能が低下して、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかずに酸素が不足する状態。呼吸困難や息切れなどがその主症状であり、携帯用酸素ボンベを使用している人もいる。     ○膀胱・直腸機能障害      尿をためる膀胱、便をためる直腸が様々な病気のために機能低下し、又は機能を失ってしまった状態。そのため、排泄物を体外に排泄するためのストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設する人もいる。ストーマを保有している人を「オストメイト」という。     ○小腸機能障害      様々な原因によって小腸が広い範囲に切除された場合と、小腸の病気によって働きが不十分で消化吸収が妨げられ、通常の経口摂取では栄養維持が困難な状態。小腸は消化・吸収に関係する器官であり、機能の低下により食事の管理制限が必要となる。 P21     ○肝臓機能障害      肝臓の機能が著しく低下した状態。肝臓移植を受け、拒絶反応予防のために免疫抑制剤を服用している人もいる。     ○ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害      HIVとはヒト免疫不全ウイルスという病原体で、このウイルスが人に感染し、発病すると、白血球の一種であるリンパ球を破壊し、免疫機能を低下させ、発熱、下痢、体重減少、全身倦怠感などが現れる。特定の病状が現れたとき、エイズの発症となり、様々な感染症が起きるリスクが高まる。HIV感染症は、適切な治療を行うことでエイズの発病を遅らせたり、症状を軽くすることができる。    【B主な対応】     ○外見からは分かりにくい障害があることを理解する。     ○内部障害のある人は全体的に体力や免疫力が低下していることから、風邪などに感染しやすくなっているため、対応者は風邪をひいている時は、内部障害のある人にうつさないよう配慮する。     ○常に医療的対応を必要とすることが多いことを理解する。    <心臓機能障害のある人への配慮>     ○椅子に座ってもらってから、話を始める。全体的に、動悸、息切れ、疲れやすいなどの体力低下があるため、椅子を用意するなどの配慮が大切である。     ○重い物を代わって持つなど、声をかけて手伝う。階段はなるべく避け、エレベーターやエスカレーターを勧める等のほか、本人に聞いて必要な介助をする。ゆっくりした日常生活動作は支障がなくても、活発な動作になると身体的な不調や発作を誘発する。     ○心臓機能障害でペースメーカーをつけている場合、携帯電話などの機器が発する電磁波の影響により誤動作を起こす可能性がある。近くにペースメーカーをつけている人がいる場合、電源を切るなどの配慮が必要である。    <腎臓機能障害のある人への配慮>     ○腎臓機能の不全による人工透析のための定期的な通院に配慮する。腎臓病の人は、体にたまった老廃物を排泄できないため、人工透析が大切な治療となる。     ○文字を読んだり書いたりする場合には、視力に問題がないか、確認する。腎性網膜症・糖尿病性網膜症などにより、視力が低下している人がいる。    <呼吸器機能障害のある人への配慮>     ○ゆっくり歩く、適宜休憩する、椅子に座らせるなどの対応を心がける。椅子を勧めるときは、楽な姿勢でゆっくりと話をしてもらい、長時間にならないようにする。     ○呼吸器機能障害のある人は慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があり苦しい状態となっている。ゆっくりとした日常生活動作には支障がなくても、それ以上の動作になると息苦しさが起こる。息切れが現れたら、休憩して呼吸を整 P22      えるよう働きかける。    <膀胱・直腸機能障害のある人への配慮>     ○膀胱、直腸に障害があり、スト−マ装具を利用している人をトイレに案内する際には、ゆとりのある広めの洋式トイレに案内する。設置してある場合はオストメイト対応トイレに案内する。    <小腸機能障害のある人への配慮>     ○小腸機能障害により口からの食事が摂れず、鼻に管を入れ栄養を摂る、静脈から直接栄養を注入するなどの対応が必要な人がいるので、栄養補給のために必要な時間への配慮が必要。    <肝臓機能障害のある人への配慮>     ○肝臓機能障害のある人は、体力低下や疲れやすさといった症状が、特に顕著に現れる。風邪などにも感染しやすくなっており、肝臓機能に悪影響を及ぼすこともあるので、対応者は、風邪をひいている場合はうつさないよう配慮する。    <ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害のある人への配慮>     ○プライバシーには十分注意した対応をするよう配慮する。また、免疫機能障害(HIV感染症やAIDS)を正しく理解し、偏見や差別をなくすよう配慮する。 P23   (8)難病                                           【@障害の概要】     難病とは、発症の原因が明らかでなく、治療方法が確立されていない希少な疾病であり、長期にわたり療養を必要とするものをいい、その種類は多岐にわたる。     根本的な治療は困難であるものの、適切な治療や自己管理を続けることで通常に近い生活を送ることができるものもある。     難病における大きな問題として、病気を抱えながら就労を継続することの困難さや、長期にわたり療養を必要とするものが多いことから、一人ひとりが難病のある人の状態を理解し、サポートしていくことが大切となる。    【A主な特性】     ○治療が難しく、慢性の経過をたどる。     ○症状や病態は個人によって様々であり、同じ疾病でも、重症で全面介助の生活を送っている人もいれば、ほとんど問題なく日常生活を送っている人まで様々である。     ○疾病の種類は、神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病、血液系など多種多様で、各分野の専門医でなければ診断できない疾病も少なくない。      血液系の疾病としては「再生不良性貧血」、消化器系としては「潰瘍性大腸炎」、神経・筋・感覚系では「パーキンソン病」などの病名が知られている。     ○常に医療的対応を必要とすることが多い。     ○症状に変化があり、一日の中でも軽い症状と重い症状になる場合がある。また、日によって変化が大きい等の特徴がある。進行性の症状がある疾病では、大きな周期でよくなったり悪化したりを繰り返すという難病特有の症状が見られる。     ○病態や障害が進行する場合が多い。     ○合併症のある人も多く、治療のために使用する薬の副作用により別の疾病を発症する、機能障害が数年かけて進行するなど、二次障害が生じる場合もある。     ○決まった時間に服薬しなければならない場合がある。また、治療に使用される薬等には非常に高額なものがあり、経済的な不安を抱えている人がいる。     ○介護等に著しく人手を要することがあるため、家族や周囲の人の身体的・精神的負担が大きい。    【B主な対応】     ○一見して難病であると分かる人もいれば、分かりにくい人もいる。外見上病気があることが分かりにくく、健康な人と同じように生活している難病の人もいるので、周りから理解されずに苦しんでいる障害のある人がいることを知って理解と配慮をしていくことが大切である。     ○疾病によっては、疲れやすい、重い物を持つ事が出来ない等の症状が見られる。難病のある人は、多くの場合、障害者認定の基準に含まれない機能障害があり、 P24      例えば、病気による疲れやすさや痛み、また疾病によっては、皮膚の症状や自律神経障害、貧血なども見られる。無理のない仕事内容、生活支援など、その人に合った理解と配慮が必要とされる。     ○それぞれの難病の特性が異なり、その特性に合わせた対応が必要。例えば、「言語障害」や「四肢麻痺」などの症状のために、会話や意思伝達が困難な場合がある。従って症状に合ったコミュニケーションを取る必要がある。     ○進行する場合、病態・症状の変化に対応が必要。     ○定期的に通院や服薬が必要な人がいる場合には、職場などで理解と配慮が必要とされる。排泄の問題などにも留意が必要。     ○疾病によっては、皮膚など外見に症状がある場合がある。一般生活をする中では、難病はうつる種類の疾病ではないので、偏見や差別のないよう対応する。     ○必要に応じて専門の医師等に相談する。 P25   (9)重症心身障害                                 【@障害の概要】     重度の身体障害と重度の知的障害が重複している最も重い障害。自分で日常生活を送ることは困難であり、自宅で介護を受けたり、専門施設に入所したりして生活している。口の動きや目の訴えで意思を伝えるが、常時介護している人でないと理解が困難である。また、医学的な管理がなければ、呼吸することや栄養を摂取することが困難な人もいる。    【A主な特性】     ○姿勢      ほとんど寝たままで、自力では起き上がれない状態が多く、座るのが精一杯である。     ○移動      自力での移動や寝返りが困難で、座った姿勢で移動したり車椅子などで移動を行う。     ○排泄・入浴      全面的な介助が必要であり同性の介護が原則となる。     ○食事      自力での食事が困難で、スプーン等を用いて介助を行う。誤嚥を起こしやすいので注意を要する。また、通常の食事が食べられない人には、食べやすいように細かく刻んだり、飲み込みやすいようにとろみをつけたりする。      外食時には、ハサミやミキサーの貸し出しがあると助かる。     ○生活動作      手、足が変形または拘縮しており、側わんや胸郭の変形を伴う人が多くいる。極度に筋肉が緊張し、思うように手足を動かすことができない。     ○コミュニケーション      言葉による理解や意思疎通が困難。口の動きや目の訴えで意思を伝える。常時介護している人でなければ理解が困難である。     ○医療・健康      肺炎や気管支炎を起こしやすく、多くの人がてんかん発作を持つため、常に健康が脅かされている。また、痰の吸引が必要な人も多くいる。常に医師の管理が必要な最重度の人は、水分と食べ物を鼻から胃へ注入する管をつけたり、呼吸がうまくできないため人工呼吸器をつけたりする。このような障害のある人は外出することが難しいのが現状である。 P26    【B主な対応】     ○意思疎通を図ることが非常に難しいが、本人に合った方法をとることが重要。具体的には、アイコンタクトやスキンシップ、口の動き等によって思いを伝えたり、コミュニケーションをとることができる。また、介護している人等を通して、意思疎通を図る。     ○車椅子やストレッチャーでの移動に人手が必要な場合には、介護している人に声をかけて手伝う。     ○人工呼吸器などの医療機器のアラーム音が鳴っているときは、速やかに介護している人に知らせる。     ○体温の調節が苦手なので、室内や戸外の温度に配慮する必要がある。また、この場合、手足が細く骨がもろくなっている人が多いので、特に気をつける。 P27   (10)知的障害                                   【@障害の概要】     知的障害は、概ね18歳頃までの心身の発達期に、知的機能の遅延等の障害が現れることによって、日常生活や社会生活上の適応に困難が生じる状態をいう。     知的障害のある人は、文章の読み書きや計算、金銭管理などが苦手であることが多い。重度の場合、常に同伴者と行動する人もいるが、軽度の場合は、会社で働いている人も大勢いる。障害の程度によっては一見して障害の有無が分かりにくい人もいる。また、発達障害と重複する人もいる。まずは、その人の障害の特性をよく理解することが大切である。    【A主な特性】     ○考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したりする等の知的な機能に発達の遅れが生じる。     ○複雑な会話や抽象的な概念を理解するのが苦手。人に尋ねたり、自分の意見や気持ちを表現するのが苦手な場合もある。     ○漢字の読み書きや計算が苦手な人もいる。一つの行動に固執したり、同じ質問を繰り返す人もいる。     ○突発的な出来事に対して、状況に応じた行動をすることが困難である。     ○金銭管理、会話、買い物、家事等の日常生活に状態に応じた援助が必要。     ○主な原因として、ダウン症候群などの染色体異常又は先天性代謝異常や、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患があるが、原因が特定できない場合もある。ダウン症の場合の特性として、筋肉の低緊張や心臓に疾患を伴う場合がある。     ○てんかんを合併する場合もある。    【B主な対応】     ■話をする場合     ○「一方的に話す」「独り言を言う」「同じ言葉を繰り返す」等コミュニケーションがうまくとれない場合がある。そのようなときは、内容が理解できるようにゆっくり簡単な言葉で話しかける。また、話しかけるときは、相手が安心するようななるべく優しい口調と表情で話しかけるよう努める。     ○複雑で抽象的な話は理解が難しく混乱してしまうので、なるべく分かりやすくゆっくりと具体的に話をする。     ○相手がきちんと理解しているか、時間がかかっても確認しつつ話を進める。     ○知的障害のある人は使う言葉や表現があいまいなことがあるので、断片的な言葉からでも、できるだけ意図をくみ取るよう努める。     ○絵や写真や実物等を見せて話をすると、状況理解がしやすくなり気持ちが通じやすくなる。 P28     ■文章を作成する時     ○漢字の読み書きが苦手な人もいるので、会議などで文章を作成するときにはルビ(ふりがな)を付ける等の配慮をする。     ○文章はなるべく分かりやすい表現で、簡潔に記述する。     ■その他配慮すること     ○「赤信号でも渡る」「車が来ても避けない」「遮断機が下りても線路に入る」等危険が分からず、助けを求めることができない場合がある。そのようなときは、命に関わる危険な場面であり、まず、安全確保を優先した後、やさしく声をかけ危険であることを知らせることが大切である。     ○状況の変化に柔軟に対応できず、パニック行動が起こることがある。そのようなときは、落ち着ける場所に誘導する。     ○「通行する人を無表情で見ている」「一つのことにこだわる」など誤解されやすい行動をする場合がある。そのようなときは思い込みで判断せず見守る。 P29   (11)発達障害                                  【@障害の概要】     発達障害とは、脳機能の発達に関する障害である。発達障害のある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手で、その行動や態度から、様々な形で誤解されることも少なくない。     発達障害は、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などを総称したものをいう。なお、これらの複数の障害が重なって現れることもあり、障害の程度や年齢(発達段階)、生活環境などによっても症状は違ってくる。発達障害は多様であることを理解することが大切である。また、生活の中で困難なこと、苦手なことも一人ひとり違うため、それぞれの特徴に応じて配慮し、支援することが重要である。    【A主な特性】    <自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)>      自閉症を中核とする障害グループ(連続体)の総称で、従来は広汎性発達障害(PDD)と呼ばれてきたものである。2013年のアメリカ精神医学会の改訂診断基準(DSM−5)で、広汎性発達障害(PDD)から、ASDと名称変更されるに伴い、心理的発達の障害ではなく、生まれつきの「神経発達障害」に位置づけられた。      多くの研究成果から、自閉症、アスペルガー障害、特定不能型とタイプ分類をする根拠がないことがわかり、重症型である古典的な自閉症を中核として連続体(スペクトラム)をなしている障害と考えられるようになった。      普通に生活している人の中にも軽度の自閉スペクトラムが認められることがあるが、そのことで適応上の障害がある場合に自閉スペクトラム症と診断される。      通常は発達早期に症状が認められるが、保護的な環境では症状が見られず、社会的な行動を求められる年齢になって初めて症状が明らかになり、診断されることもある。     ○ASDの症状      ・対人関係・社会性の障害       他者との情緒的交流や同年児との仲間づくりができにくい。      ・コミュニケーションの障害       視線、表情、身振りなどの非言語的コミュニケーションの使用に制限がある。      ・パターン化した行動、興味関心の限局、感覚の障害(過敏、鈍麻)       動作やフレーズの反復、同一性の保持、興味関心の限局や、聴覚、触覚をはじめとする感覚領域の過敏さや鈍感さ。     ○ASDには注意欠陥多動性障害(ADHD)や精神疾患の併存が多いことが指摘されている。     ○ASDの重症度は、対人関係・コミュニケーション、反復・こだわりの2領域に P30      ついて、それぞれ別に評価する。     ○ASDと診断するだけでなく、個人の状態をより詳細に評価することが、早期から見通しを持った支援を継続するために大切である。     ○なお、従来のアスペルガー障害という用語は、正式な診断名ではなくなったが、便宜上使用しても構わないとされている。    <注意欠陥多動性障害(ADHD)>     ○「不注意:集中できない、忘れやすい、うっかりミス)」、「多動性:じっとできない、活動性過多、多弁」、「衝動性:抑制が効かず考えるよりも先に行動する、待てない、我慢ができない)」の3症状を特徴とする神経発達障害である。3つの症状が揃っているタイプを「混合型」、多動性と衝動性が顕著なタイプを「多動・衝動優勢型」、また多動症状がないタイプを「不注意優勢型」と分類する。12歳までに複数の場面で、6ヶ月以上にわたり症状が見られるときに診断される。     ○多動症状は幼児期に最も目立ち加齢とともに軽減するのに対して、不注意症状は青年期以降も持続することが知られている。衝動性症状は支援の適切さや本人の自己評価次第で良くなることも悪化することもある。     ○ADHDの支援には、心理教育的支援とADHDに特化した薬物療法の2つのアプローチが有効である。     ○ADHDは子どもの時期だけの障害ではなく、ASDと同様に慢性経過をとる神経発達障害である。発達期の治療教育だけでは症状をコントロールできず、成人期以降も支援や治療を必要とする Adult ADHDが少なからず存在することが知られている。    <学習障害(LD)>     ○全般的な知的発達に遅れはなく「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」などの特定の能力を学んだり、行ったりすることが著しく困難である。    <その他の発達障害>     ○我慢していても声が出たり体が動いてしまったりするトゥレット症候群(チック)、一般的に「どもる」と言われる、なめらかに話すことが年齢や言語能力に比して不相応に困難な「吃音」なども、発達障害に含まれる。    【B主な対応】     ○発達障害は、障害の種類や程度、知的水準によって症状は違い、年齢や性格などによっても、一人ひとり、症状の現れ方は違う。また、同じ人でも、環境によっては症状が目立たなくなることもある。 P31      発達障害のうち、ASDは脳の情報処理システムに複数の機能障害があるといわれており、社会的状況や集団生活上、最も多くの支援を必要とする。一般的に、視覚情報を把握することは得意だが、聴覚性情報(複雑な話ことばなど)を意味づけて理解することが苦手である。目に見えない相手の気持ち、暗黙の了解や約束事、未経験のことなどを、想像力を駆使して想定し、対処することも苦手である。また、ものごとの細部に注意が向きやすく、全体像を把握することが苦手である。      発達障害のある人は、生活の中で困難なこと、苦手なことが一人ひとり違うため、どうしてほしいのかをよく聞いて、それぞれの特性に応じて配慮し、支援することが重要である。     ○コミュニケーションをとる際には、「ゆっくり」「短く」「具体的に」      話しかけるときは、ゆっくり短く分かりやすい言葉で話す。また、周囲の状況を理解したり、人の表情から気持ちを読み取ったりすることが苦手なことから、初めての人に接したときには不安が大きくなるので、安心感につながるよう穏やかに接する。     ○発達障害のある人の多くは、あいまいな表現を理解するのが苦手。言葉で説明するときは、優先順位を明確に具体的に伝え、一度に二つの指示を出さない。「ちょっと待ってください」ではなく、「5分待ってください」のように具体的に伝える。     ○視覚的な情報を提示して説明する。      発達障害のある人の多くは、言葉で言われるよりも、目で見て分かる情報の方が理解しやすいことが多くある。言葉による意思疎通が苦手な人の場合は、絵、写真、イラスト、手順書、マニュアルなどを添えて、その人が理解できる表現を上手に組み合わせてコミュニケーションを取ってみる。     ○自分の気持ちや考えを表現することや相手にうまく伝えることが苦手なので、「早く」、「まだ」など急がず、じっくりと話を聞くことが大切。     ○行動の修正が必要なときは、否定的な表現(〜してはいけません)よりも肯定的な表現で伝えるよう努める。     ○肯定的対応を心がける。     ○発達障害のある人は、急な変化に対応することが難しいので、前もってスケジュールや計画などを伝えておく。     ○安心できる環境を整える。      発達障害のある人たちの中には、人混みや大きな音、光、温度などの刺激を苦手とする人が多くいる。そのような刺激による不快感を大きくしないよう、安心できる環境をつくるよう努める。また、不安定になった時に落ち着ける静かな場所、気持ちの立て直しができる場所を予め確保しておくよう努める。     ○枠組みを明確にし、その場の約束事は初めにはっきりと伝える。     ○発達障害のある人には、適度な距離を保って、穏やかな態度で接する。結果を急 P32      がず、長い目で支援する。     ○発達障害のある子どもを温かく見守る      発達障害のある子どもが騒いだり、パニックを起こしたりしているときは、少しの時間、待つことで、無理に叱るよりも早く混乱から抜け出せることもある。         周囲の人にこうした気持ちや知識があることによって、本人も家族も楽になれる。     ○対応が難しい時には、専門家等に相談する。    <自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人への配慮>     ○肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫(何かを伝えたり依頼する場合には、必ずその意図や目的を伝えたり、図やイラストなどを使って説明するなど。)     ○スモールステップによる支援(新しく挑戦する部分は少しずつにする。)    <注意欠陥多動性障害(ADHD)のある人への配慮>     ○気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などの配慮。     ○ストレスケア(傷つき体験への寄り添い、適応行動が出来たことへのこまめな評価)    <学習障害(LD)のある人への配慮>     ○得意な部分を使って情報アクセスし、表現できるようにする。(ICT※の活用など)      ※ICT:情報や通信に関連する科学技術の総称。     ○苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減し、柔軟な評価をする。    <その他の発達障害のある人への配慮>    ○叱ったり拒否的な態度を取ったりするのではなく、日常的な行動の一つとして受け止めるなど、楽に過ごせる方法を一緒に考える。 P33   (12)精神障害                                        【@障害の概要】     精神障害には、統合失調症、うつ病、神経症、心身症など様々なものがある。代表的な病気である統合失調症は急性期には、幻覚や妄想、不安、憂うつ感、不眠などが認められる。これらの症状は、薬を服用することや環境が安定することにより、軽快していく。     その後、「意欲がなくなる」「集中力や注意力が低下する」「感情の動きが乏しくなったり、周囲への関心が薄くなる」などの症状が見られることがあり、周囲から怠けているように見られるなどの誤解を受けることがあるが、決して怠けているとか、意志が弱いということではない。これらの症状は、病気の症状が落ち着いてくる経過の中で認められるもので、これが「陰性症状」といわれるものである。    【A主な特性】     ○精神疾患には、いくつもの種類があり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なる。その中には長期にわたり、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがある。     ○代表的な精神疾患として、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)等がある。     ○障害の特性もさまざまであるため、積極的に医療機関と連携を図ったり、専門家の意見を聴くなど関係機関と協力しながら対応する。    <統合失調症の場合>     ○発症の原因はよく分かっていないが、脳の中の神経伝達物質の働きに何らかの異常が生じて病気を引き起こすもので、比較的一般的な病気である。     ○「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている。     ○陽性症状      幻覚:実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。         なかでも、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い。      妄想:明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがある。     ○陰性症状      意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる、疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる。入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となるなど、周囲から怠けていると誤解されたり、生活しづらさに結びつくつらい症状である。 P34    <双極性障害(躁うつ病)の場合>     ○気持ちが強く落ち込んだり(うつ状態)、逆に過剰に活発になったり(躁状態)することを波のように繰り返す。     ○うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えがまとまらない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる。     ○躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。    <依存症(アルコール)の場合>     ○飲酒したいという強い欲求をコントロールできず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じる。     ○体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出る。     ○一念発起して断酒しようとしても、強い飲酒要求や離脱症状の不快感、日常生活での不安感から逃れるために、再飲酒することがある。    <てんかんの場合>     ○何らかの原因で一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作がおきる。     ○発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある。    <認知症の場合>     ○認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態である。     ○原因となる主な疾患として、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病など)がある。     ○認知機能の障害の他に、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)がある。    【B主な対応】     ○精神疾患は、誰もがかかる可能性がある病気である。精神障害のある人との自然な付き合いが、その人の安心につながり、症状の安定につながることを理解して対応する。     ○無理な励ましは、本人の過剰なストレスとなることがある。本人のペースに合わせた働きかけや、じっくりと時間をかけることが必要である。     ○相談されたときは、なるべく相手の話を聞くことを心がける。また、話を聞く時には相手が何を伝えたいのか根気よく聞くよう努める。     ○対応が難しい時には、専門家等に相談する。 P35     ○再発の予防      ・精神疾患では、薬を中断したり、多くのストレスが重なると再発することがある。不眠が見られたり、急に活動的になったり、ささいなことに過剰に反応するなど、再発につながる注意のサインとみられる症状を知っておくことも大切である。      ・こうした症状が見られたら無理を避けて、ゆっくりと休養するように働きかける。また、主治医にも早めに相談するよう働きかける。     <統合失調症の人への配慮>     ○統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある。     ○薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。     ○社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る。     ○一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心掛ける。     ○一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心掛ける。     ○症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに受診することなどを促す。    <双極性障害(躁うつ病)の人への配慮>     ○専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する。     ○薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する。     ○うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する。     ○躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する。     ○自分を傷つけてしまったり、自殺に至ることもあるため、自殺などを伺わせるような言動があった場合には、本人の安全を確保した上で速やかに専門家に相談する。    <依存症(アルコール)の人への配慮>     ○本人が依存症であることを否認して自分の症状を認めたがらないことが多いが(場合によっては家族も)、アルコール依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲の人が理解する。     ○周囲の対応が結果的に本人の飲酒につながってしまう可能性があるため、家族も同伴の上で、アルコール依存症の専門家に相談する。     ○一度断酒しても、再度飲酒してしまうことが多いため、根気強く本人を見守る。    <てんかんの人への配慮>     ○誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの人が一般的な生活が送れることを理解する。     ○薬を飲んで発作がコントロールされている場合は、普通の生活が可能なので過剰に活動を制限しない。 P36     ○内服を適切に続けることが重要である。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する。    <認知症の人への配慮>     ○高齢社会を迎え、今後ますます認知症の人又はその予備軍が増えることが予想されていることから、認知症は誰もがかかる可能性のある身近な病気であることを理解して対応する。     ○各々の価値観や個性、想い、人生の歴史等を持つ個人として尊重し、できないことではなくできることに目を向けて、本人が有する力を最大限に活かしながら、住み慣れた地域で安心して暮らしていけるよう、支援していく。     ○行動・心理症状(BPSD)については、何らかの意味を持ったその人からのメッセージとして聴くことが重要であり、BPSDの要因として、さまざまな身体症状、孤立・不安、不適切な環境・ケア、睡眠や生活リズムの乱れなどにも目を向ける。     ○認知症に早期に気付いて適切に対応していくことができるよう、小さな異常を感じたときに速やかに適切な機関に相談できるようにする。     ○症状が変化した等の場合には、速やかに主治医を受診し、必要に応じて専門機関に相談することなどを促す。