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連載「津山 美しい建築の街 再発見」第1回(全4回)

       

稲葉なおと インタビュー  # 津山美しい建築の街 # 津山まちじゅう博物館構想

 

城西浪漫館2階「浪漫館ギャラリー」で、谷口圭三市長と、津山市みらい戦略ディレクターの作家・写真家・建築家 稲葉なおとさんが対談しました。

そのダイジェストは「広報津山2月号」に掲載しています。全文をこちらに掲載します。
 
テーマは、「津山 美しい建築の街 再発見」
 
全4回にわけて、奇数月(3月・5月・7月)10日に掲載します。
 
今回は、その第1回。
 
 

第1回 津山の建築の魅力とは

津山は美しい建築の宝庫

▲生後8カ月の稲葉さんと祖母・き志子さん。実家の化粧品店(市内川崎)裏にて父・右二さん撮影
 
谷口:稲葉さんに改めて、街に点在する建築に光を当てていただくことによって、私はもとより、住民の皆さんも再発見、再認識したのではないかと思います。

そこで今日はぜひ、津山の建築を取り上げていただき、建築の魅力そのものについて、稲葉さんの言葉で住民のみなさんにお伝えいただけたらと思っています。
まずは、稲葉さん自身の津山との接点からお話いただけないでしょうか。
 
稲葉:ありがとうございます。

父が津山市川崎の出身で、母がたの祖母の実家も津山市押入にあることから、ぼくは生後8カ月で初めて両親とともに津山に帰省して、それから毎年暮れとお正月は津山で過ごしてきました。

川崎の化粧品店が父の実家で、そこでお雑煮やお節料理を食べるのが楽しみで。
祖母が始めたイナバ化粧品店が、まさか全国に名が知られるようになるとは、当時は誰も予想していなかったと思うんですが(笑)。

大学の建築学科に入ってからも、ひとりで川崎に帰ることはあったんですが、実は津山の名建築といえば、父や従弟の母校でもある津山高校と、建築界では名の知られた津山文化センターの2つだけと思い込んでいまして、他にこんなにもたくさんの美しい建築が市内に点在するとは、まったく知りませんでした。
 
谷口:そうだったんですね。知るきっかけとなったのは?
 
稲葉:2021年の2月14日に、第2回津山国際環境映画祭が開かれて、そこで講演の依頼をいただいたのがきっかけですね。
 
谷口:本当に最近のことなんですね。
 
稲葉:はい。恥ずかしいほど最近です(笑)。

ご依頼は講演のさらに1年ほど前なのですが、せっかくの機会なので、津山の建築についてお話したいと思いつつ、語るべき建築は本当に、先ほど述べた2軒しかないのだろうかと思って、市の学芸員の方に訊ねたところ、見ていただきたい建築は他にもたくさんありますよ、という力強いご返事をいただきまして(笑)。

その1軒1軒を自分の眼で確認していったことで、津山は美しい建築の宝庫なんだと初めて認識できたわけです。
 
谷口:その1軒1軒の価値の確認が、この写真集『津山 美しい建築の街』につながっていくわけですね。

 

写真集『津山 美しい建築の街』の制作秘話

▲国指定重要文化財の、岡山県立津山高等学校(旧岡山県津山中学校)本館(写真提供:津山市)


▲日本古来の木構造を鉄筋コンクリート造で表現した、津山文化センター(写真提供:津山市)
 
稲葉:講演会に向けて取材を進め、写真を撮っている時点では、写真集という構想は正直、頭にはありませんでした。

講演の趣旨を、まずは住民のみなさんご自身に、市内にこれだけ誇れる建築の数々があることを認識していただき、市外へ、県外へ、どんどん自慢をしてほしいという内容でお話ししたところ、多くの方から賛同のお声をいただいたもので、これは講演を聞いてくださった方だけでなく、もっと多くの人に津山の建築の魅力をお届けしたい、そのためには写真集の出版を、という思いが膨らんだというのが経緯です。
 
谷口:そうしますと、撮り始めて出版まで1年くらいなのでしょうか?
 
稲葉:出版に向けて校了ギリギリまで撮っていましたので、実際には2年ほどですね。
季節を変え、時間を変えて建築1軒につき10数回はお邪魔していますから。
何万枚という撮りためた写真の中から、よりすぐって構成させていただきました。
 
谷口:津山の魅力を発見された稲葉さんの眼から見て、その魅力は、どんなところになるのでしょうか?
 
稲葉:魅力は3つあります。1つ目は、長い時代を超えて存在しつづけていることですね。

江戸以前の寺社仏閣や民家が建ち並ぶ街や、ユニークな現代建築があちこちに建つような街というのは全国に多々ありますが、津山には、室町から江戸、明治、大正、そして昭和から平成にいたるまで、時代を超えて見応えのある建築が現存することが第一の魅力です。
 
谷口:なるほど。たしかにそうですね。

▲写真集『津山 美しい建築の街』について語り合う稲葉さんと谷口市長

稲葉:2つ目は、その建築の用途が様々であることです。

寺や神社、民家に武家屋敷、城跡に歌舞伎舞台、学校に銀行、写真館に多目的ホールまで、建築の種類がこれほど多種多様なことは、訪ねる楽しみがそれだけ増えるということだと思います。
 
谷口:おっしゃるように、文化財建築の使われ方は、多種多様ですね。
 
稲葉:最後に3つ目の魅力は、そういった美しい建築の存在が、世の中にあまりまだ知られていない、知られざる、という点ですね。

時代を超えて美しい建築が点在する街というと、京都とか、金沢の名前を思い浮かべる人が多いと思うのですが、そこに津山が名乗りをあげた。
これまでは、あまり知られていなかったからこそ、インパクトがあったのではないかと思います。
 
谷口:そう言われると、あらためてその価値を認識できた気がします。
私も実は、こうしていつも2つの地図をポケットに入れて持ち歩いていまして。

「つやま近代建築おでかけマップ」と「つやま鉄道遺産お出かけマップ」をポケットから取り出す)

機会があれば自分の眼で、その価値を確かめるようにしています。
そんな私でさえ、稲葉さんの写真集のインパクトは大きかったですね。


▲「つやま近代建築おでかけMAP」(左)と「つやま鉄道遺産おでかけMAP」(写真提供:津山市)

稲葉:ありがとうございます。
 
谷口:写真も見ごたえがありますし、後半の津山建築史も読みごたえがあるのですが、序文の稲葉浩志さんの文章がまた、引き込まれるというか、魅力的な文章で。
 
稲葉:稲葉浩志さんの序文は、編集者とともに最初に読ませてもらったのですが、本当にすばらしくて。住民のみなさんの気持ちを代弁していますよね。

加えて、一緒に市内の建築巡りをした時の体験だけでなく、撮影に向き合う撮影者である、ぼくの心情にまで迫って、率直な言葉で語ってくれていて。
本当に貴重なドキュメント的な文章で、著者として心から感謝しています。
 
 

「まちじゅう博物館」構想とは


▲津山城下町絵図より。津山城下町を核に、まち全体を屋根のない博物館に見立て、建造物・グルメ・芸術などを楽しめる空間としていく構想
 
谷口:私は、まだ仮称なのですが「まちじゅう博物館」という構想を立ち上げようとしていまして、これは文化財の建築や芸術、グルメなどをつなぎあわせ、街全体を博物館と感じながら巡ってもらおうというものです。
 
稲葉:街全体が博物館ですか。そう、うかがっただけで、津山ならではの、街の楽しいイメージが伝わってきます。
 
谷口:津山市内には、相撲にたとえますと、単体では「横綱」級の建築はないですけれども、それに迫る価値のある建築が数多く点在していて、「面」や「群」としてとらえれば、市内外の方々に満足していただけるのではないかと思っています。

そのためにはまず、住民のみなさんが、その価値を知ることが一番と思っています。
建物はもちろんですが、そこに付随します芸術や文化、人々の営みを通じて、地域の歴史も含めて、認識を高め、次の世代につないでいく。

そのようなまちづくりの手法を「まちじゅう博物館」構想という仮称で進めています。
 
稲葉:市長自ら旗振りをされて、住民のみなさんに、街の大きな魅力として、グルメなどといっしょに建築の価値を認識していただくという方針には、建築が専門の一人からすれば、本当に嬉しいかぎりです。

たしかに、国宝建築を「横綱」とすれば、津山には「大関」クラスの重要文化財は複数ありますし、「関脇」「小結」クラスの有形文化財になりますと、数がどっと増えますよね。
 
谷口:市が保有する文化財建築が増えていくことで、維持管理に眼が行き届くことも、津山市としての魅力かと思うのですが。
一方で、その維持管理にはお金がかかることも事実で。

稲葉:建築は建てるまでが大変な事業であることはもちろんですが、建ってからのほうが遥かに大変で、お金もかかる事業ですから。
 
谷口:稲葉さんは、写真家であり、小説家でもありますが、建築家としての専門の立場から、建築の維持や活用についても、ぜひご意見をいただけますか?

 
(以下次号)
 
 

津山市みらい戦略ディレクター 稲葉なおと



© 2022 SeizoTERASAKI 
 
東京工業大学建築学科卒業。一級建築士。建築家を経て作家・写真家としてデビュー。500軒以上の名建築宿に宿泊取材した体験を元に、旅行記、写真集、小説、児童小説を刊行。JTB紀行文学大賞奨励賞受賞。日本建築学会文化賞受賞。2月刊行の講談社文庫・小説『ホシノカケラ』は、児童小説『サクラの川とミライの道』、写真集『津山 美しい建築の街』と共に津山三部作として話題に。他にノンフィクション『夢のホテルのつくりかた』など著書多数。
 

津山市長 谷口圭三


 
平成30年(2018)2月から津山市長に就任。現在2期目。

この情報に関する問い合わせ先

津山市 秘書広報室(広報)
  • 直通電話0868-32-2029
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