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所信表明 令和4年6月

 
 

 「もっとその先へ 誰もが輝く拠点都市津山を❝築く❞」 

1 はじめに
 令和4年6月定例市議会の開会に当たり、今後の市政運営における私の所信につきまして、その一端を申し述べたいと存じます。
 私は、去る2月6日の市長選挙におきまして、住民の皆様の御信任を賜り、2期目の市政運営を担うこととなりました。
 新たな任期のスタートに当たり、改めて今後の津山の未来を切り拓くその責任の重さに身の引き締まる思いであります。
 さて、収束が見通せない感染症に加え、今年2月末からのロシアのウクライナ侵攻により、国際社会や世界経済は甚大な影響を受け、まさに先行きが不透明で不確実な時代を迎えています。こうした世界情勢の中で、我が国では、人口の減少に歯止めをかけ、東京圏一極集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保し、将来にわたって活力ある日本社会を維持することが課題となっております。
 本市においても、このような社会情勢の変化に的確に対応し、住民が豊かさを実感しながら、地域に愛着を持って住み続けられるまちづくりを進めていかなければなりません。
 これからの地域づくりでは、若者から高齢者まで多様な人材が互いに支え合う仕組みづくりや、様々な天災や厄災からのレジリエンスを高めることが求められています。
 地域経済の再生のためには、地域資源を最大限に活かし、自立分散型の社会を目指す「地域循環共生圏」や、自分達のまちに愛着と誇りを持った選択と行動をすることにより、地域経済に好循環を生み出す「ローカルファースト」を実現していくことが重要です。
 さらに、まちの将来を見据え、持続可能性を高めるためには、未来を担う人材の育成は避けて通れない課題であります。
 私は、このまちの10年後、20年後を想い、誰もが輝く拠点都市津山を築くべく、今までの取組を継続・発展させ、住民の皆様と力を合わせて、地域経済の再生と地域社会の活力創出に全力で取り組んでまいる所存でありますので、皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 
2 市政運営における基本的な考え方
(1)新型コロナウイルス感染症対策
 まず初めに、新型コロナウイルス感染症対策であります。
 感染症との闘いの最前線に立ち続ける、医療、介護、福祉の現場をはじめ、住民生活を支えるため御尽力いただいている全ての方々に、改めて心から敬意と感謝を申し上げます。
 オミクロン株の変異株などのまん延により、未だ予断を許さない状況でありますが、県や医師会等関係機関と連携しながら感染拡大防止に全力で取り組んでまいります。
 現在、ワクチンの3回目の追加接種は、皆様の御協力により、本市の接種率は、6月5日現在で67.5%と、国や県の値を上回る状況となっております。引き続き感染状況に応じた効果的な接種体制の整備に努めるとともに、4回目の接種に向けても確実に準備を進め、接種を希望する全ての方々が、速やかに接種できるよう必要な対策を講じてまいります。
 また、感染症の影響を受けた住民生活と地域経済の再生に向けては、必要な財源を確保しながら、生活困窮者への支援や、消費喚起と地域経済循環を目的とした直近の対策に加え、デジタル社会や脱炭素社会の構築に向けた未来投資型の対策にも、臨機応変かつ、きめ細やかに取り組み、1日も早い回復を目指し、今後も市の総力を挙げて対応してまいります。

(2)4つの重点目標
 次に、今後の市政運営における重点目標について申し上げます。
 現在、平成28年度からの10年間を計画期間とする「津山市第5次総合計画」の下、「安心と幸せを実感できる、活力と魅力あふれるまちづくり」を進めているところであり、このたび、令和4年度から令和7年度までの4年間を計画期間とする後期実施計画を策定いたしました。
 後期実施計画では、本市の将来に向けて、4つの重点目標を掲げ、目指すべきまちの実現に向けて取り組んでまいります。
 1つ目は、「快適で楽しい、住み続けたい街を築く」であります。
 私は、人々が「住みたい」あるいは、「住み続けたい」と感じるまちとなるためには、快適な生活を送ることのできる社会基盤や環境整備を進めることが重要であると考えています。
 その実現に向け、社会全体のデジタル化の推進、歴史文化遺産の保存活用、災害対策の充実・強化、公共交通機関の利便性の向上、基幹道路網の整備等に取り組んでまいります。
 2つ目は、「安心して暮らせる地域共生の社会を築く」であります。
 我が国では、全国的な人口減少・少子高齢化による担い手不足や、核家族化が進む中で、地縁、血縁といったつながりの弱体化が進んでおり、人と人、人と社会が支え合う環境を整える新たなアプローチが求められています。
 高齢者や障害のある方など、全ての地域住民が、安心して暮らし続けることができる地域コミュニティの充実やその仕組みづくりに取り組んでまいります。
 3つ目は、「持続可能な地域内循環型の経済を築く」であります。
 地域経済の再生に向けた取組を、雇用創出や所得向上につなげていくための鍵となるのが、「地域内循環型経済」であります。
 地域内で生み出される付加価値を高め、地域外で稼ぐ産業を振興するとともに、流入した資金を域内で循環させる経済活動を生み出す仕組みが重要となります。
 引き続き、域外需要を取り込む企業誘致を積極的に進めるとともに、つやま産業支援センターや地域商社等とも連携し、地域内企業の経営力強化に取り組み、キャッシュアウトしない強靱な地域内サプライチェーンの構築に取り組んでまいります。
 4つ目は、「教育の充実で未来を切り拓く人材を築く」であります。
 私は、これまでも一貫して申し上げてきたとおり、人材は地域の将来を支える大切な財産であり、持続可能な社会を構築するためには、地域で活躍する人材の育成が不可欠であると考えます。
 本市では、第3期「教育振興基本計画」を今年3月に策定いたしました。
 今後、本計画に基づく取組を着実に推進し、保幼こ小の連携を図るとともに落ち着いた学習環境を整え、確かな学力向上に取り組むことで、「自らの将来を自らの力で切り拓くひとの育成」「ふるさとに誇りと愛着を持ち、自己肯定感を高め、地域や社会に貢献できるひとの育成」につなげてまいります。
  
3 新たな津山を築く八つのビジョン
(1)拠点都市にふさわしい都市機能が整備された津山へ
 次に、個別の施策についてであります。今後4年間で実施する主要事業については、今般取りまとめた第5次総合計画・後期実施計画でお示したところであり、個別の施策については、これまでのまちづくりの8つのビジョンに沿って申し述べます。
 最初に、「拠点都市にふさわしい都市機能の整備」についてであります。
 本市は県北の拠点都市であり、拠点性を活かす都市機能の整備が重要であります。
 デジタル社会の実現に向けては、この度取りまとめた津山市デジタル社会の推進に向けた取組方針の個別実行計画を推進し、感染症の収束後を見据えた地域創生や、行政手続のオンライン化などの行政運営の効率化とサービスの向上に取り組んでまいります。
 光通信環境の基盤構築については、本市が加茂・阿波地区において進めている光ファイバ網のほか、今年度中に市内のほとんどの地域で整備が完了する見込みであります。残る地域の高速通信環境の整備についても、最適な整備手法を検討し、計画的に進めてまいります。
 また、今年3月に、市内中心部に2か所のテレワーク施設がオープンいたしました。アルネ・津山に開設したサテライトオフィス「COTOYADO」(コトヤド)については、本市を訪れるビジネス客だけでなく、ノマドワーカーや起業を目指す若者の交流拠点として、新しい価値やビジネスの創出と中心市街地の活性化に寄与するものと大いに期待しております。
 さらに、今年度、国のデジタル田園都市国家構想推進交付金を活用し、地域の課題解決や魅力向上に資するデジタル技術の社会実装の取組として、AIチャットボットや、母子健康手帳アプリ、学習支援システム「AIドリル教材」の導入を行うほか、本市独自の取組として、目指すべきデジタル社会の将来ビジョンとなる「(仮称)津山市スマートシティ構想」を策定したいと考えております。その中では、全国各地で地域課題研究の実績を有する慶應義塾大学SFC研究所との共同研究も計画しており、若者の社会参画と多様な幸せが実現できる社会の構築に取り組んでまいります。デジタル社会の推進により、住民の皆様が、便利になったと実感できるような近未来のまちづくりを積極的に進めてまいります。
 博物館都市構想の実現については、具体化に向け、「(仮称)まちじゅう博物館構想」を策定し、取組をスタートさせてまいります。城下、城東及び城西地区の城下町を彩る町並みや、周辺の色とりどりの歴史文化施設の充実を図るとともに、全国への発信にも努め、本市の認知度の向上を図ってまいります。
 城東地区の道の駅については、地域外から活力を呼び込む「ゲートウェイ型道の駅」を、国等と共同で整備してまいります。これにより、城東重伝建地区はもとより、中心市街地へとさらに周遊を促進することで、城下町全体の活性化にもつなげてまいります。今年度は、道の駅基本計画の策定を進めるとともに、現地調査等に着手することとしています。
 集中豪雨への対策として、計画を前倒しして取り組んだポンプゲートについては、来月、昭和町第3ポンプゲートの完成で、14基全ての整備が完了します。これにより、当該地域の安全性が飛躍的に向上します。今後も、近年多発するゲリラ豪雨等の対策として、幹線雨水路の整備や河川浚渫を行うなど、引き続き、安全安心のまちづくりに取り組んでまいります。
 また、災害時の安全かつ速やかな避難を促すため、県が新たに公表した浸水想定区域や土砂災害特別警戒区域などの情報発信に努め、災害に対する備えの強化や、災害時の避難・危険回避などの自主的な避難行動の支援につなげてまいります。
 公共交通を取り巻く環境は、感染症の影響による生活様式の変化、少子高齢化、AIやIoT技術の進展などにより大きく変化しています。新たな公共交通マスタープランを策定し、JR因美線や姫新線、路線バスなどの公共交通機関の維持確保、利用促進に取り組むとともに、昨年度実施した小型乗合交通の社会実験を基に、デマンド交通など新しい地域公共交通の導入を進め、交通空白地の解消に取り組んでまいります。また、JR津山駅のユニバーサル化、公共交通の非接触型ICカード決済システムの導入やごんごバス車両の更新などにも、取り組んでまいります。
 中心市街地の活性化については、UR都市機構の協力を受け、国際ホテル跡地の活用策や周辺文化施設との連携などを盛り込んだ「城下まちづくりビジョン」の策定を進めているところであり、本ビジョンが示す方向性を念頭に置きながら、国際ホテル跡地の活用に係る実施設計など、具体の作業に着手してまいります。
 併せて、にぎわいの創出やまちづくりの観点から、今津屋橋から「ザ・シロヤマテラス津山別邸」までの鶴山通り沿線を重点地域と位置付け、支援制度を拡充して、にぎわいある景観形成の促進に取り組んでまいります。
 空港津山道路については、被災時に国道53号の代替路として機能するダブルネットワーク化を図る上でも重要な南北軸の要となることから、広域道路ネットワークのミッシングリンク解消に向け、未着手区間の早期事業化を、国、県に対し要望してまいります。また、現在施工中の津山南道路は、早期完成を目指し、地元調整等に積極的に協力し、より一層の事業促進を図ります。
 都市計画道路河辺高野山西線「北工区」については、第3次救急医療施設である津山中央病院への救急搬送の時間短縮や、交通の利便性向上などの大きな効果が期待されることから、本路線の早期整備を目指し、県や地域関係者等と協力を図りながら、事業促進に努めてまいります。
 また、中環状道路を構成する総社川崎線については、一日も早い供用開始を目指し、引き続き、未買収の用地取得に全力で取り組み、本線工事の加速化を図ってまいります。
 
(2)安心して子どもを産み育てられる多世代共生の津山へ
 次に、「安心して子どもを産み育てられる多世代共生」についてであります。
 貧困の世代間連鎖を断ち切るためには、子どもたちが育った家庭の経済状況にかかわらず、十分な教育を受けられる環境を整えることが重要であります。
 生活困窮家庭を対象に行っている就学援助のうち、学校給食費については、現在の8割給付から全額給付に引上げを行います。
 また、昨年度から市内中心部の3中学校を対象に、モデル事業を実施している生活困窮家庭の学習・生活支援については、対象を全中学校に拡大し、「貧困の連鎖」の防止を図ってまいります。
 就労形態の多様化や核家族化により、幼稚園を利用する保護者の就業率も増加傾向にあることから、このようなライフスタイルの変化に対応し、保護者の利便性の向上と働きやすい保育環境の充実を図るため、今年4月から公立幼稚園の預かり保育の時間を延長するとともに、アルネ・津山にある「一時預かりルーム にこにこ」においても、より利用しやすい時間帯に開設時間を変更したところです。
 放課後児童クラブの充実については、利用を希望する全ての児童を受入れできる体制にするため、クラスの増設や支援員の処遇改善などに取り組み、児童の安全で安心な居場所の確保に努めてまいります。
 子育て支援については、子どもの成長記録や成長段階に応じた情報の提供や、予防接種のスケジュールの管理等が行える母子健康手帳アプリを新たに導入し、妊娠から出産・育児のサポートの充実を図ります。
 不妊不育治療に対する支援については、本年4月から、一般不妊治療や生殖補助医療が保険適用となりましたが、依然として治療にかかる経済的負担は大きく、課題となっております。不妊不育に悩む夫婦が安心して治療に臨めるよう、市独自の制度をさらに利用しやすい内容に充実させてまいります。
 健康寿命延伸のためには、要介護状態の予防、生活習慣病予防、がん予防の3つの取組が重要であります。人間ドック受診費用助成制度の拡充を行うほか、健康なうちから始める予防・健康づくりの推進や、健康無関心層に行動変容を促す取組等によって、多様な世代に働きかけを行い、いつまでも健康で幸せに暮らせるまちを目指してまいります。
 高齢者や障害者支援ネットワークの構築については、障害のある方の高齢化・重度化や親亡き後に備えるとともに、地域生活への移行を進めるため、鏡野町、美咲町、久米南町と共同で設置した地域生活支援拠点において、障害福祉サービス従事者の専門性向上のための研修を行うなど、機能の充実を図ります。今後も、障害福祉サービス事業者等と連携し、地域ニーズや課題の把握、機能の充実、支援体制の強化に努めてまいります。
 高齢者や障害のある方、ひきこもり、子育て世代など全ての地域住民が、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる地域共生社会の実現に向け、医療、介護、福祉、保健、教育の各関係機関、地域団体、地域住民などの連携をさらに強化し、小地域ケア会議や地域ケア個別会議の充実と、地域包括支援センターの機能強化に努めてまいります。併せて、民間事業者との連携も検討し、多様な生活課題について、ニーズの発見から早期支援までを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」のネットワーク強化を図ってまいります。

(3)雇用が安定し定住できる津山へ
 次に、「雇用の安定と定住」についてであります。
 雇用の安定には、さらなる地域産業の振興が必要であり、強固な産業基盤の構築に取り組んでいかなければなりません。域外需要を取り込む企業誘致は、雇用創出の観点から大変重要と考えており、今後も、積極的に取り組んでまいります。津山産業・流通センター及び久米産業団地の立地率はともに9割を超え、企業に紹介できる用地も残りわずかとなっていることから、新たな産業団地の整備について検討を進めてまいります。
 地域企業の魅力発信については、小中高校生とその保護者に、地域企業の魅力を発信する「つやまエリアオープンファクトリー」を開催するとともに、インターンシップの推進に努めてまいります。「つやまエリアオープンジョブ」や学生と企業をつなぐ座談会、新たに取り組む「高校生向け企業ガイダンス」など、地域企業を知る機会を多く提供し、学生との接点の創出にも、注力してまいります。また、高校での地域学やキャリア教育に協働して取り組むとともに、大学のキャリアセンターなどとつながることで、引き続き地域内就職のための体制づくりを強化してまいります。
 移住・定住施策の推進については、コロナ禍を背景に地方への関心が高まりを見せる中、「津山ぐらし移住サポートセンター」を拠点とするワンストップの移住相談、住まいや仕事のマッチングなど、引き続き、きめ細やかな支援を継続するとともに、「空き家活用定住促進事業補助金」の拡充や、移住希望者等と地域をつなぐ、体験型プログラムに新たに取り組むこととしています。
 併せて、定住ポータルサイト「LIFE津山」をリニューアルし、利用者の利便性を高めるとともに、より充実した情報を掲載し、津山暮らしの魅力発信に努めてまいります。
 女性の潜在的能力の発揮と活躍推進については、企業の魅力向上と事業の成長に不可欠であることから、女性が働きやすい環境の整備に積極的に取り組んでまいります。企業向けの研修会等を開催するとともに、まちなかカレッジと連携しながら、女性のキャリア形成を支援してまいります。
 
(4)地域産業が発展する津山へ
 次に、「地域産業の発展」についてであります。
 つやま産業支援センターでは、地域企業の高付加価値製品の開発や販路開拓、生産性向上等、成長に向けた活動をサポートするとともに、関係機関と連携し、人材育成や創業支援などに注力します。コロナ禍においては、いち早く経営相談窓口の開設、ECサイト構築やテレワーク導入支援など、地域企業の支援に取り組んでおり、今後においても、企業訪問と専門家等による伴走支援を充実させ、実効性のある助言や支援を行ってまいります。
 また、コロナ収束後の経済再生を目指し、これまでの個別企業に対する支援に加え、複数の企業同士の協力体制を構築し、企業間連携による新たな事業を創造するとともに、地域内サプライチェーンの構築に取り組んでまいります。
 昨年、市内の木材加工5社による家具ブランド「TSUYAMA FURNITURE」(津山ファニチャー)が加わった「MADE IN TSUYAMA」(メイドイン津山)ブランドについては、新たにデジタルマーケティングの手法も取り入れ、より一層の販路開拓とブランド構築を行ってまいります。
 デジタル分野においては、市内のICT関連企業で組織する「つやまICTコネクト」を核とした企業のスマート事業の具現化を支援していくとともに、産学官連携の場として津山高専に設置した「津山市IoTラボ」を拠点として、5Gのメリットを活かしたソリューション開発を促進してまいります。また、企業と津山高専の人的交流を通じ、ICT人材の市内就業や、地域企業の持つ高い技術力の継承をサポートしてまいります。
 脱炭素社会の実現に向けては、昨年2月、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」を岡山連携中枢都市圏構成市町と共同で行いました。地域脱炭素は地方創生に貢献できるものであることから、本市においても、脱炭素の取組を地域経済の活性化や地域課題の解決につなげるため、今年度、地理的環境及び社会特性に適した再生可能エネルギー導入可能性調査を実施してまいります。
 農業者支援については、持続可能な農業に向け、スマート農業機械の導入支援等を行い、収穫量の向上や生産者の負担軽減を図り、次世代型農業への転換を進めてまいります。
 つやま和牛の販売促進については、流通量の増加を図りブランド化を加速するために、月平均10頭の出荷を目標としています。このため、今年度、つやま和牛創出資金貸付事業について、月平均7頭を10頭に拡充し貸付を行うとともに、情報発信などにより、さらなる需要拡大と販売促進に努めてまいります。
 農業ビジネスモデルの構築に向けては、地域商社「曲辰」が核となり、戦略的な販路の開拓と確保、大学等と連携して取り組む商品開発や、ブランディングによる農産加工品の高付加価値化などを進めております。昨年度は、クラウドファンディングで多くの方から御支援をいただき、牛肉料理に合う日本酒、クラフトビール、スパイスの商品化に結び付けることができました。今後もこうした地場産農産物や加工品の販売促進を図るなど、地域の農業を持続可能で儲かる産業として確立してまいります。
 森林環境譲与税の活用については、近隣自治体と連携して実施している森林調査結果を基に、適正な経営管理を促進し、林地災害などを防止するとともに林業の活性化を図ってまいります。地域材利用促進についても、公共施設などに積極的な活用を進めてまいります。
 感染症の影響による木材価格の急騰「ウッドショック」への緊急対策として、住宅の新築で県補助と合わせて最大120万円、リフォームで最大50万円とする補助制度の拡充を行うほか、今年度から新たに木質バイオマス発電の原料となる林地残材の運搬助成制度を創設いたします。
 
(5)将来を見据えた人材育成を進める津山へ
 次に、「将来を見据えた人材育成」についてであります。
 大学や高専などの高等教育機関は、教育研究の拠点といった役割に加え、産業振興、学生による社会貢献活動や経済活動への寄与、若者の定住人口の増加など、本市の活力向上やにぎわい創出のためには欠かせない地域資源であります。
 津山高専では、基礎科学を基盤とした専門性と、分野横断力を兼ね備えた実践的技術者を、数多く養成してこられました。
 本市としては、高い技術研究力を有する津山高専と企業との交流の促進、地域産業の振興や同校の発展を目的に、津山高専技術交流プラザ等の活動を通じ、連携や協力を一層進めてまいります。
 美作大学では、きめ細かな学生支援や教育力を強みとし、人々の生活を守り支える専門的人材を養成することで、地域社会を豊かにしてこられました。高等教育機関、とりわけ私学を取り巻く環境は大きく変化しており、美作大学におかれては、足下の変化に対応できるよう取組を進めておられます。
 本市は、美作大学と連携し、大学間や地域間の競争に打ち勝つ創意工夫や、大学資源を活かした地域課題解決について、改めて共同で研究することといたしました。
 今後も、地域の知の拠点である両校を支援することで、本市の魅力を一層向上させ、学園都市としてのまちづくりを進めてまいります。
 早稲田大学との連携事業である「地域連携ワークショップ」については、本市の魅力を伝える体験メニューを考案するなど、これまで3年間継続して取り組んでおり、本市との連携を通じて、地域外に居住しながら本市と関わりを持ち、地域課題の解決に積極的に関わる関係人口を拡大していくため、引き続き実施してまいります。
 公民館の利活用と機能の充実については、公民館整備方針に基づき、老朽化が進んでいる佐良山公民館等、順次建替えに向けて地元協議を進めてまいります。また、学習環境の充実と防災拠点施設としての機能強化を図るため、全ての公民館に公衆無線LAN・Wⅰ-Fiを整備してまいります。併せて、デジタルツールの利用に不慣れな方を対象としたスマートフォン教室や、マイナンバーカードの出張申請受付サービスなどを行ってまいります。
 
(6)多様な教育機会が得られる津山へ
 次に、「多様な教育機会の充実」についてであります。
 昨年実施された全国及び岡山県学力・学習状況調査で、全国平均を上回るなど、児童生徒の学力は向上しています。引き続き、各学校での授業改善、家庭学習、確認テスト、補充学習等の確実な実施を通じた学習習慣のさらなる定着を進めるとともに、児童生徒が落ち着いた学習環境で学べるための体制整備に取り組んでまいります。
 保幼こ小の連携については、小学校と保育園、幼稚園等との連携を強化・充実するとともに、「小1グッドスタート教育支援員」を30人以上の学級に年間を通じて配置し、新入生の生活を丁寧にサポートすることで、幼児教育から小学校教育へのスムーズな移行を図ってまいります。
 また、市内全小中学校に「教師業務アシスト員」「部活動指導員」等を引き続き配置し、教職員が日々の授業改善をはじめ、教育活動に専念できる体制を構築してまいります。
 現在、GIGAスクール構想に基づき、全小中学校の児童生徒が一人一台端末を活用しながら、自ら興味を持って、友人や教員などと主体的・対話的で深い学びや、協働的な学びができるよう、授業改善に努めているところであります。
 今年度は、東京学芸大学との共同研究で開発された学習支援システム「AIドリル教材」を全小中学校に導入するほか、各学校においてはオンライン授業等により、様々な理由で登校できない場合においても、学習機会を提供できる体制の構築に取り組んでまいります。今後も、関係機関と連携し、ICTを活用した先進的な授業展開をより一層推進してまいります。
 また、子どもたちがふるさと津山に誇りを持ち、郷土愛を育む取組として、津山洋学資料館や津山郷土博物館等での体験学習など、津山の歴史・伝統・地域の様子等を児童生徒が主体的に学ぶ「つやま郷土学」を小中学校の全ての学年で実施いたします。
 特別支援教育においては、それぞれの障害に応じた適切な指導・支援を行う体制の整備が必要です。今年度から、北小学校にある津山市特別支援教育推進センターに県内で初めて「特別支援教育ナビゲーター」を2名配置し、学校への巡回相談や研修の企画・実施を行うことといたします。
 長期欠席・不登校については、本市におきましても増加傾向にあり、児童生徒一人ひとりに寄り添い、欠席状況の変化や背景を校内で共有し、必要に応じて、登校支援員や臨床心理士、教育相談アドバイザー等の専門家、鶴山塾などの関係機関と連携した支援に取り組んでまいります。
 さらに、中学校においては、今年度から新たに専用教室の設置と専任教員の配置により、個々の生徒の状況に応じた学習支援や生活支援を行ってまいります。併せて、タブレット端末を活用し、不登校児童生徒と学校をオンラインでつなぎ、児童生徒の学びを保障する取組を進めてまいります。
 学校給食では、児童生徒が食べ物を大切にし、食について自ら管理・判断できる力が身に付くよう、食育に取り組んでいるところであります。地場産品を積極的に活用し、行事食等を献立に取り入れることにより、学校給食の教育的効果をさらに高めるとともに、児童生徒が生産者等給食に関わる人々のことを学ぶことで感謝の心を育む取組を行い、給食での食品ロス減少に努めてまいります。
 また、学校給食費については、会計の透明化や業務の適正化、また、学校現場での働き方改革を進めるため、市が一括徴収・管理を行う公会計化に向け、手法や手順についての具体的な検討を進めます。
 学校施設については、計画的な整備を進めており、本年度は河辺小学校校舎大規模改修や鶴山小学校等のトイレ改修を実施いたします。なお、小中学校のトイレについては、本年度で計画した全てが完了となります。
 また、本市の今後の児童生徒数の減少を見据え、昨年度設置した「津山市立小中学校の将来構想検討委員会」からの提言や、地域の実状などを踏まえ、今後の学校教育の体制整備や魅力ある学校づくりの方策等について検討してまいります。
 地域のスポーツ振興については、スポーツ協会やスポーツ推進委員協議会など、関係団体との連携を進め、スポーツを通じて、市民誰もが健康で明るく活力のある生活が送れるまちの実現に取り組んでまいります。
 青少年の健全育成につながるスポーツ少年団の運営については、資格制度の改正による公認指導者資格の取得義務化に対応し、補助額を拡充いたします。
 プロスポーツイベントの誘致推進については、昨年度、本市をホームタウンとして活躍する「トライフープ岡山」、国内トップリーグの「岡山リベッツ」のリーグ戦を開催することができました。今後も、プロリーグ公式戦の開催誘致にも取り組むとともに、プロ選手によるスポーツ教室の開催や、小中学校でのスポーツ指導などによる地域の活性化につなげてまいります。
 また、市全体のスポーツ施設については、老朽化した施設の修繕、照明設備のLED化、トイレの洋式化などに計画的に取り組むとともに、旧町村地域のスポーツ施設についても、今後のあり方を検討し、それぞれの地域の特徴的な施設となるよう、改修・改築を進めてまいります。

 
(7)歴史と文化に誇りを持ち、観光都市として発信する津山へ
 次に、「歴史と文化に誇りを持った観光都市としての発信」についてであります。
 感染症の影響により、大きく落ち込んだ観光産業を力強く立て直し、年間観光入込客数をコロナ前を上回る250万人へ押し上げていくため、まずは、「春はつやま」のキャッチフレーズで、3月から5月を観光キャンペーンの強化期間と位置付け、春の観光プログラムを作り上げてまいりたいと考えております。
 また、来月から開催されるJR西日本の大型観光キャンペーンを契機に、津山線を中心に県北を周遊する新たな観光列車「SAKU美 SAKU楽」(さくび さくら)の運行が7月から開始されます。このキャンペーン期間に合わせて、本市の魅力発信を積極的に行うとともに、津山城イルミネーションや、津山まなびの鉄道館のナイトフェスといった夜間のイベントを開催するなど、通過型観光から滞在型観光への転換を図る取組を進めてまいります。
 外国人観光客の誘致については、今後の需要回復を見据え、より一層の誘客促進とブランド力の向上を図るため、台湾を中心とした海外へのプロモーションを強化するとともに、台中の彰化市にある扇形車庫とのコラボ事業を実施することとしております。
 観光都市基盤の整備については、観光まちづくりを戦略的に実行する「津山版DMO」が、昨年11月、市町村単位では県内で初めて「登録DMO」となりました。これまでのマーケティング調査、体験プログラムの造成等の取組に加え、農泊・城泊事業や、県内で唯一国から認定を受けた食文化海外発信事業などの新たな取組も進めてまいります。
 また、教育研修旅行の受入れを推進するため、市内の歴史文化遺産や費用助成制度の積極的な情報発信を行い、市外の児童生徒に津山を知っていただくための取組も推進します。
 文化財等の活用については、県内で唯一認定を受けている「津山市文化財保存活用地域計画」等に基づき、旧苅田家住宅や鶴山館などの歴史的文化財の価値を高め、観光資源に活用することで、保存する文化財から活用する文化財へ転換し、博物館都市構想の一環として取り組んでまいります。
 また、今年度、本市を会場に「第23回全国近代化遺産活用連絡協議会」を開催することとしており、このような機会を通じて、津山の歴史遺産の魅力を全国に発信するとともに、観光資源としての近代化遺産の活用を進めてまいります。
 昨年、本市からの提案により、大分県中津市と島根県津和野町の両市町との「蘭学・洋学三津同盟」が実現しました。共通の歴史的背景と“津”の文字を持つ両市町と、学術や知的観光の振興に連携して取り組むとともに、「蘭学・洋学のまち」としての共同プロモーションや、講演会、シンポジウム、企画展の開催などを計画しております。
 音楽、舞台公演、創作展示等を行う「(仮称)津山総合芸術文化祭」については、多彩な芸術ジャンルを束ねたプログラムを年間を通じて開催できるよう検討してまいります。
 シティプロモーションについては、「春はつやま」などの観光の情報発信をはじめ、市の方針や施策、行政サービス等を市内外へ積極的にPRするため、広報の体制強化を図り、効果的な実施に努めてまいります。
 
(8)行財政改革を断行し、効率的な行政運営を行う津山へ
 次に、「行財政改革の断行と効率的な行政運営」についてであります。
 私は、財政基盤の安定化が市の持続可能性を高めるための最も基本的な条件になると考え、平成30年度にサマーレビューによる事務事業の総点検を実施いたしました。
 また、令和2年2月に策定した財政構造改革に向けた取組方針では、それまで3億8千万円の見通しであった令和12年度末基金残高を10億円確保することを目標に、令和2年度、3年度を取組強化期間として進めてまいりました。
 その結果、長期財政計画上最も減少が見込まれる令和12年度の基金残高を12億6千万円にまで回復させる見通しを、昨年11月にお示ししたところであります。
 感染症の影響により「新たな日常への対応」が広く求められることに加え、急速に進展する少子高齢化や、気候変動等による予測困難な災害、新たなパンデミックにも対応できるまちづくりには、財政調整基金の確保が必要であり、引き続き、行財政改革に不退転の決意で取り組んでまいります。
 一方で、前任期4年間では、単に経費削減を目的とする減量型の行革だけではなく、活性型の行革にも取り組んできたところであり、今後についても、これを継続してまいります。
 自治体DXの推進については、住民の利便性向上、行政運営の効率化等を推進するため、住民記録、税、福祉等、主要な20業務について、令和7年度から開始される全国クラウド基盤・標準準拠システムの利用に向けて取組を進めます。また、より実効性のあるデジタル・トランスフォーメーションを実践していくため、今年度、業務プロセスの可視化を目的とした業務量調査とデジタル技術の導入実証実験を実施します。
 感染症の拡大や、甚大化する自然災害などの社会状況の変化を背景に、市町村が担う業務はますます多様化し、その業務量は、増大の一途であります。このような状況にあっても、住民サービスの維持・向上を図るとともに、職員の働き方改革も、推進してまいります。
 民間活力の導入については、民間事業者から、公共施設のさらなる利活用や、公共サービスの向上に寄与し、独創的な提案を広く募集する「民間提案制度」、グリーンヒルズ津山でのトライアルサウンディング、旧苅田家付属町家群のコンセッション事業といった公民連携手法も、先駆的に取り入れております。
 独立採算での運営が可能な事業への転換を目指し、全国的にも例のないRO-PFIとコンセッション方式を組み合わせてリニューアルを行ったグラスハウスについては、先月から新たな健康増進施設として運営が開始されています。
 このような公民連携による取組を今後も積極的に推進することにより、住民サービスの向上、地域内ビジネスの創出、行政コストの削減の「三方よし」を実現し、「活性型の行財政改革日本一」を目指してまいります。
 企業版ふるさと納税につきましては、地方創生事業の財源の確保につながるだけでなく、本市に関心を持ち、応援していただける企業を増やすきっかけとなります。昨年度は、御賛同いただいた企業9社から御寄付をいただきましたが、引き続き、本市に関わりを持っていただける企業の増加に努めてまいります。
 行財政改革の不断の取組を継続し、財政運営の安定化を図り、本市の未来を切り拓く取組を加速させ、持続可能なまちづくりを進めてまいります。
 
4 おわりに
 以上、今後の市政運営についての私の考えを申し述べました。
 4年前、私は、「拠点都市津山の再興」をスローガンに、本市を動かすための8つのまちづくりのビジョンを掲げ、市政を推進してまいりました。
 新たな任期となる今後の4年間は、動き出した市政を軌道に乗せ、困難な時代にあっても、本市が持続可能性を高め、将来に向けて発展していくための基礎を築くことが求められる重要な期間となります。
 2期目の政策を取りまとめた第5次総合計画・後期実施計画には、これまでの取組を継続・発展させるとともに、新たなまちづくりの視点も取り入れ、任期4年で取り組む212の主要事業を掲げ、誰もが輝く拠点都市津山を築いてまいります。
 原油・原材料価格の高騰に伴う物価高や歴史的な円安など、外的要因による混乱が私たちの生活を脅かしていますが、こうした状況下においても、コロナ禍からの社会経済活動の回復を確実なものとしていかなければなりません。
 私は、このような時こそ、「かつてない困難からは、かつてない変革が生まれる。かつてない変革からは、かつてない飛躍が生まれる。」という、現パナソニックの創業者の松下幸之助氏の言葉を肝に銘じて、この重責に立ち向かってまいる所存であります。
 津山は動き始めました。10年、20年後を見据え、ともにより良い津山の未来を築くため「精神一到」の覚悟で取り組んでまいりますので、住民並びに議員の皆様には、なお一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

 津山市長 谷口 圭三
 

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