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第29回 津山(まち)づくりミーティング-生きる力を育む-

第29回 津山(まち)づくりミーティング-生きる力を育む-

8月28日、市立小中学校に勤務する30歳前後の若手教職員5人が、子どもたちの生きる力を育むために必要なこと、教職員に必要な力など、未来を生きる子どもたちの教育について、市長と意見交換しました。
ミーティングの様子

 
身近な大人としての先生の存在
市長
教職員という職業を選んだ理由を教えてください。
松本祥
教師にはずっとなりたいと思っていました。
自分にとって中学校3年間は、勉強、部活動、生徒会など、自分が変わるチャンスをもらい、成長したと感じる時期でした。
人生が一番大きく変化する中学時代を過ごす子どもたちと関わりたいと思い、中学校の教師になりました。
松岡
高校3年生の春に養護教諭になりたいと思い立ちました。
当時お世話になった部活動の顧問の先生が、人の話を上手に聞いてくれる人でした。
その存在にあこがれ、いろいろな子どもたちの話を聞き、寄り添うことができる養護教諭になりたいと思いました。
子どもたちと話をするのが好きで、仕事が年々楽しくなっています。
松本兼
わたしは鳥取県出身です。小学6年の頃から陸上競技の短距離走に打ち込み、スポーツに夢中でした。スポーツが縁で進学した美作大学で一緒に過ごした先輩に、小中学校の先生になる人が多く、自分も先生になるのが自然のことのように思っていました。
大学4年で陸上競技をやめ、他に熱中できることがないかと思っていた自分にとって、頑張れば頑張った分、目に見えて成長する子どもたちの存在が自分を奮い立たせる大きな存在になりました。
いろいろなことがありますが、毎日が試合のようなものだと思って楽しく取り組んでいます。
國米
父が大工で、子どもの頃は大工になるのが夢でした。高校在学中に父が会社の都合で職を失ったのをきっかけに、違う分野での職業も考えるようになり、公務員の道を選びました。
公務員の中でも、自治体職員や自衛官などさまざまな職種を受験しましたが、根本的に子どもが好きで、子どもとも楽しく関わることができる学校事務に、最終的に決めました。
雨森
中学生の頃は反抗期で、先生や大人に反発したいという気持ちを強く持っていました。
所属していた野球部の顧問の先生が一時期休んだとき、急遽、教頭先生が代わりに見てくれることになりました。野球をしたことのない人が、手に豆を作りながらノックをしてくれる姿を見て、自分たちに真剣に向き合ってくれる大人を「格好いい」と思い、教師を目指すようになりました。
市長
先生は、身近な大人として、成長段階にある子どもたちに大きな影響を与える存在ですね。
わたしにも、印象に残っている先生や言葉があります。
大変なことも多い中で、仕事が年々楽しくなっている、楽しく取り組んでいると話す姿を頼もしく思います。
ミーティングの参加者 ミーティングの参加者
 
津山の印象
市長
市外出身の人もいますが、津山の印象はどうでしょうか。
雨森
津山に来て初めて見た、津山城(鶴山公園)のきれいな桜が印象に残っています。
地域のまつりや昔からの行事などに、子どもたちが意欲的に参加していて、自分が住んでいたまちに比べて活気を感じました。
松本兼
人間関係がさっぱりしているところが好きです。
また、いろんな場所に出掛けますが、自分の地元に近く、他の地域にも好アクセスなのが魅力です。
松岡
自分が住んでいたまちより便利だと感じています。
津山にずっと住んでいる皆さんに地元の港町のことを話すと「海があっていいね」と言われます。今まで当たり前だと思っていた自分の地元の魅力を、あらためて知る機会にもなりました。
市長
山の中に住んでいると海へのあこがれは強いんですよね。
(みんなで笑う)
市長
皆さんが良いまちという印象を持ってくれていてうれしいです。もっと良くなってほしいと感じることはありますか。
松本兼
本屋が少ない印象です。
市立図書館もよく利用していますが、他の市の図書館の話を聞くとうらやましいと感じることがあります。
松岡
強いて言うなら、映画館が欲しいです。映画館についての市のアンケートにも参加しました。
雨森
大きい買い物は、どうしても市外に出るようになりますね。
ミーティングの様子 ミーティングの参加者
 
未来に向かって生きる力を育む
市長
わたしは津山というまちを説明するとき、一通りのものが最低限そろいながら、身近なところには豊かな自然がある「適度な田舎暮らしができるまち」という言葉を使います。一通りのものがそろい、大きな都市にもすぐにアクセスでき、周辺からも頼られる、地域の拠点都市としてのまちづくりを進めています。
また、拠点性の機能の中でも大事にしているのが、学園都市という側面です。
全国に700ある市の中で、人口が10万人前後のまちが48市あります。
その中で高校、専門学校、高専、大学を合わせた定員が5,300人というのは、48市の中で上位5番目になります。市役所周辺に昼間5,000人の若者が集まってくるまちとして、その火を消したくないと思っています。
そんなまちの基礎は義務教育にあり、学力ももちろん大切ですが、子どもたちには地域のことをしっかり学んでほしいと思っています。
皆さんが目指す教育として、津山でどんな子どもを育てたいと思っていますか。
雨森
子どもたちの印象として気になっているのが、好きなことは頑張れるけど嫌なことや苦手なことからは逃げる、我慢できない子どもが多いことです。
好きなことに力を入れるのはもちろん大切ですが、生きていると好きなことばかりできるわけではありません。
子どもたちには「我慢すること」「自分をコントロールすること」の大切さを伝えています。
我慢といっても、悪いことや理不尽なことに耐えるということでなく、自分がなりたいものなど、目標に向かって壁を超えてほしいと思っています。
子どもたちには目標に向かって「逃げずに頑張ろう」「粘り強く取り組もう」と日々伝えています。
市長
好きなことを伸ばしていくためにも、目標に向け、困難に立ち向かうことは大切です。
松本兼
ここ数年「あがく子どもたち」「対話のある子どもたち」の二つを意識しています。
目まぐるしい社会の変化など、新しい課題が次々と山積していく中で、未来を生きる子どもたちは、わたしたち大人も想像できないことに立ち向かっていかなければなりません。
そんな中で生きる力として必要なのが、自分にとっての問い、課題を見い出し、あがき、問題解決していく力です。そして、そこに必要なのが人との対話。コミュニケーションです。
さまざまな課題を友だちと一緒に解決する。学校の意義の一つは、対人関係にあると思います。
そして、もう一つ大切にしているのが、子どもたちに人生を「楽しい」と感じてもらうことです。
松本祥
雨森さんも言われましたが「自分をコントロールする力」は大切です。
大人も子どもも、余裕がないと人のせいにしてしまいます。自分をコントロールできれば、そんな発想にはならないと思います。
問題が起きたとき、人の批判でなく、まず自分はどうだったかを振り返るよう、投げかけています。
また、子どもたちが自分で考えるためには、教え過ぎてはいけないと思っています。
教え過ぎてしまうと、子どもたちは教えてくれる先生に依存し、その先生がいなくなったとき、自分の抱えている問題の解決の仕方が分からず、その気持ちが周りの人への批判に変わり、前に進むことができなくなってしまいます。
教師として、子どもたちがどうやって学んでいくかという視点を磨く必要があると感じています。
教えてもらうことだけが勉強ではなく、分からないことを分かるようにするためにはどうしたらいいかを、子どもたちが考えられるようにすることが、教師にとっては大切だと思います。
上手に教えられるのが良い先生というわけではなく、教師という仕事は、誰でも担うことができるものではないと思っています。
市長
大切な人間形成の過程で、先生が子どもたちに与える影響は大きいです。
松岡
養護教諭として、子どもたちの話を聞くことが、次につながる何かの形になってほしいと思っています。
何かあったときに人に助けを求めることができる。逆に話を聞くことで自分が人を助けることができる。子どもたちとの関わりが、そんな経験の一つになってほしいと思っています。
人と話をすることで、自分と向き合うことを大切にしてほしいと思っています。
市長
話を聞いてもらえるところがあると、子どもたちの心に余裕が出てくると思います。保健室は、そんな大切な場所ですね。
國米さんは、学校事務の立場から見て、先生や地域、子どもなどについて感じることはありますか。
國米
わたしが子どもの頃、先生は絶対的な存在でしたが、今の子どもたちはそこまで敷居が高くありません。社交的で先生との距離も近いです。
一方で、場面場面で線引きもきちんとできていて、緩めるところと締めるところを見極めることができる、ハイブリッドな子どもが多いと感じています。
また、子どものときには分かりませんでしたが、先生方はさまざまな場面で、細やかな配慮をされていることが伝わってきます。
地域との関係でいうと、今在籍している学校は、地域との交流が深く、学校行事にもボランティアとして皆さんが積極的に参加してくれるなど、協力関係がしっかりできていると感じています。
市長
昔、学力調査の結果で高い結果が出ているまちを視察したとき「特別なことはしていません。地域の皆さんが、学校という存在を大事にし、学校のすることを受け止め、協力してくれているのです」という説明を受けたことがあります。
地域の皆さんの存在は心強いですね。
ミーティングの参加者 ミーティングの参加者
 
子どもたちが変わるきっかけを作る
市長
学校事務、養護教諭の立場から、子どもたちと接する際に大切にしていることは何ですか。
國米
例えば、遊び時間に鬼ごっこをしていて、いつも鬼になっている子どもが突然怒り出すことがあります。
「嫌だ」と言えないことがそういった行動に現れるのだと思いますが、そんなときは「嫌なときは嫌と言えばいいんだよ」と伝えるようにしています。
子どもは、会話や遊びを通して、人の気持ちが分かり、自分の思いを伝えられるようになります。人も自分も大切にできる子どもに育ってほしいです。
子どもたちにフラットに関われる、学校事務という立場から、子どもたちの協調性やコミュニケーション力を育む部分について、少しでも手伝いたいと思っています。
松岡
子どもたちとじっくり話をする中で、教師とは違う立場から、自分も周りも大切にできるよう、しっかりサポートしていきたいと思っています。
市長
自分自身を大切にできないと、人を大切にはできないものです。
先生方からは、子どもたち自身が自分で考えることができるようにすることが大切という話が出ました。
今、教師にとって必要な力について、意見を聞かせください。
雨森
現在、学校で研究主任をしています。
大切なのは、いろいろな研修や視察などで情報を仕入れてくることだと思います。そして、得た知識や経験を基に、失敗を恐れず、チャレンジすることが大切です。
学校全体で「ICTの活用」「UD化(学力の優劣や発達障害などの有無に関わらず、全ての子どもが楽しく「分かる・できる」ように工夫・配慮された通常学級の授業)」「アクティブラーニング(対話)」の3つに力を入れています。
グループ分けをして、まずはそれぞれが取り組みたいと考える分野から力を入れ、実践しているところです。
その中でも、わたしは「ICTの活用」に力を入れています。
子どもたちはタブレットを喜んで使います。渡すと、話を聞かなかったり、寝ていたりする子どもも開いてみる。他の先生には、子どもたちの興味を引き付けるきっかけとして、怖がらずに、利用する回数を増やし、積極的に活用していこうと声を掛けています。
松本兼
教師になって1・2年目は、子どもたちをいかに引きつけ、学力を上げていくかを考えていました。
でも、仮にうまくいっても、教師主導型では、子どもたちは成長していきません。
子ども主導型にするには、教員のコーディネートする力が必要です。
子どもたちが課題を見つけ、自らこうしたいという目当てや問いを立てることができるよう場面を設ける。すると、子どもたちは、自分たちが決めたことだから頑張ります。
このように考えを切り替えたところ、子どもたちが自分で考え、動くようになったと感じています。
子どもたちが知りたいことをいかに調べられるようにするかなど「コーディネート力」が求められていると思います。
松本祥
実は、わたしも市長と同じまちに1週間派遣され、視察しました。
そこで言われたのが「火のついたところから個別に少しずつ変えていくスタイルでは難しい。目標に向けて学校全体、市全体で変えるくらいの勢いが必要。まち全体で子どもたち主体の授業に取り組んでいることが、子どもたちが自分で考え、表現する力が養われることにつながっている」ということです。
自分たちの教育が本当の学力、生きていく力につながっているのだろうかと、体制の違いに面食らって帰ってきました。
この経験で学んできたことを生かし、少しでも「変える力」につなげたいと、周りの先生方にはさまざまな場面で話をしています。
例えば、ICTでいうと使えることはもちろん大切ですが、さまざまな場面に遭遇したとき、ICT機器を使うも使わないも選ぶのは子どもです。
ICTも従来の方法も大切に、子どもたちが考えることができるよう導くのが教師の役割だと思っています。
先生のおかげと言われるのはありがたいことですが、子どもたちを「変える」のが目的でなく「変わる」きっかけを少しでも作れるようにするのが教員です。
誰にでも任せられる仕事でないことを常に忘れないこと。それが教員の専門性につながると感じています。
市長
子どもたちが主体性を持つことで、生きる力が備わり、それに付随して学力も上がっていくということですね。
皆さん、それぞれの立場から、自分の考え、課題を持ち克服しながら、津山の教育を良い方向に持っていこうと周りにも影響を与えてくださっていることに感謝します。
教育委員会とも連携しながら、皆さんの頑張りをしっかりサポートしていきたいと思います。
集合写真
左から 雨森宥人さん(鶴山中学校教諭)、國米一貴さん(一宮小学校事務主任)、松本兼也さん(鶴山小学校教諭)、谷口市長、松本祥輝さん(津山東中学校教諭)、松岡優希さん(弥生小学校養護教諭)
 

参加者の皆さんからいただいた事後アンケートの声

  • 市長から質問されるなど滅多にあることではないので、とても良い経験になりました。自分が教職員として働く中で、疑問に思っていたこと、その中で実践してきたことを市長や教育委員会の皆さんの前で伝えられたことがうれしかったです。自分の意見がもしかしたら津山の教育に何らかの形で反映されるかもしれないと思うだけで、とても誇らしい気持ちになりました。そして、なおさら津山の教育がより良いものになるために、精一杯協力していきたいと思いました。
わたしも他県の学校の授業を見に行くことが多いですが、やはりすごいと思える学校は、子どもたち自ら学ぶ姿勢、それをサポートしたり、コーディネートしたりする教員の姿が必ず見られると感じます。時と場合によって必要な場面もたくさんあると思うので一概に悪いとは思っていませんが、市内では、教師のレールに乗せた教師主導型の授業も多く見られます。コーディネートをして子どもたちから動くような授業をするには一筋縄ではいかないですし、根気も必要だとは重々承知の上です。しかし、大好きな津山と大好きな職業だからこそ、津山の先生方には一緒に子ども主導型で考える仲間であってほしいと思います。
周りに自分のような授業をする人が少ないので、暗闇の中を明かりもつけずに歩いているような状況で、わたし1人では絶対に潰れてしまいます。ぜひ、これからの子どもたちのために一緒に考え悩める仲間が1人でも増え、強いて言うなら、市や学校単位で同じ方向で取り組めたら良いなと心の底から願っております。
津山の教育について、ここまで考える機会を与えてくださりありがとうございました。これを機に、自分も小さなコミュニティから少しずつ同志を増やして、津山に貢献ができるように取り組んでいきます。
 
  • 普段直接お話しする機会のない市長と話すことができてよかったです。また、他校の同年代の教職員の皆さんと意見交換できたのも良い機会となりました。話が盛り上がったためか、会の時間が短く感じました。
津山はB’zの稲葉浩志さんや、親戚で写真家の稲葉なおとさん、オダギリジョーさんなどたくさんの著名人と関連するまちでもあり、他市町村に比べても注目してもらいやすい地域だと思います。注目してもらった際に行ってみたいと思ってもらえたり、来られた時にまた行きたいと思ってもらえるようになってほしいです。
 
  • 市長とお話させていただくという貴重な機会を得ただけでなく、接点のなかった市内の教職員の皆さんともつながることができて良かったです。
「自分たちが社会をより良く変えることができる」と思う子どもが少ないように感じます。実際、大人になっても同じだと思います。それは「教えられる」ことや「与えられる」ことに慣れ、自然と受け身になって日々過ごしているからのような気がします。日頃、子どもたちに接しているわたしたち教職員は「教える」ことや「与える」ことに重点を置くのではなく、子どもたちを「見取る」力やその様子を「フィードバックする」力を磨く必要があると考えます。そして、教えるとしても「学び方」を、与えるとしても「自己決定の場」を、それが「自律を支援する」ことにつながるはずです。これらを将来の津山の担い手に関わる教育専門職として果たすことができれば、よりよい津山をつくることに寄与できるのではないかと思いながら日々過ごしています。
市長はもちろん、他の教職員の皆さんとも話す機会を得て、明日からの活力につながりました。大変なことも多いですが、教育公務員は魅力ある素敵な仕事だと思いますので、今後も微力ながら頑張ります。ありがとうございました。
 
  • 市長をはじめ、市内にいる近い年代の先生方の教育に対する思いを聞くことができ、自分自身、より一層仕事を頑張りたいと思いました。モチベーションがさらに上がったので、参加できてよかったです。ミーティングをする会場が普段入ることのない部屋だったので、とても緊張しました。
教師用タブレットを1人1台持てるようにしてもらえると、授業だけでなく、研修でも使えるなど、さらにICT活用につながるかもしれません。
 
  • とても緊張しましたが、皆さんの温かい雰囲気の中、熱い思いを聞くことができ、わたし自身、自分の仕事を振り返ることができました。貴重な経験ができてありがたかったです。

このほかの津山(まち)づくりミーティングの様子はこちらをご覧ください

この情報に関する問い合わせ先

津山市 秘書広報室(広報)
  • 直通電話0868-32-2029
  • ファックス0868-32-2152
  • 〒708-8501岡山県津山市山北520
  • Eメールkouhou@city.tsuyama.lg.jp