第28回 津山(まち)づくりミーティング-高校生と取り組むまちづくり-
第28回 津山(まち)づくりミーティング-高校生と取り組むまちづくり-
8月28日、森本慶三記念館(山下)で、「つやま城下ハイスクール*(以下「城下HS」)」に参加する高校生などの皆さんと企画・運営者の4人が、若者の目線から考え、行動するまちづくり活動について、市長と意見交換しました。
*つやま城下ハイスクール 学校の枠を超えて集まった市内の高校生などが、自分たちの目線で、津山のまちの未来について考え、企画し、実践する活動の場。2020年に和田デザイン事務所代表取締役の和田優輝さんが立ち上げた。その活動は、人材育成とともに、キャリアデザインの構築や郷土愛の醸成などにつながっている。
「自分たちにもできる」という体験
市長 まず、和田さんにお尋ねしますが、城下HSはどのような思いで運営を始めたのですか。
和田 わたしは普段、都市計画や環境デザインといったまちづくりの分野で仕事をしています。
いろいろな自治体の皆さんと仕事をする中でも、自分の住むまち、子どものふるさとであるこの津山の未来は、わたしにとって特別なテーマです。
これまで、まちの未来像を描く場面では、まちの専門家と行政が会議室の中だけで議論して決めてしまうということが多かったと思います。
未来を実際に歩む若い人たちが入っていない場で議論して作られた計画では、できあがって振り返ると、主人公であるはずの若い人が誰もついてきていないということになりかねない。「若い人たちと一緒にまちの未来を考えたい」という気持ちから企画したのが城下HSです。この思いにさまざまな皆さんが賛同してくれ、企画が動き出しました。
参加している高校生の動機はさまざまですが、最初の年に集まってくれた子どもたちから少しずつつながって、広がってきました。
城下HSは、津山の未来を担う高校生が、実際にまちを歩き、自分たちの目線でまちについて考え、まちの中で「提案」「アクション」「チャレンジ」することを目標に活動しています。
これまで、高校生の目線で、つやま自然のふしぎ館や国際ホテル跡地の活用を考えてきました。
「将来、もしもこの場所がこうなったら、このまちがもっと好きになる」というアイデアを、1つ形にする。例えば「国際ホテル跡地が公園になったら、どんな公園がいいか」という具体的なお題に「卓球台が欲しい」「ベンチがあったら」など自由に話し、イベント開催の日を目標に、文化祭のような雰囲気の中で、大人も参加して一緒に取り組んでいきます。
参加者全員に役割があり、例えば、ものづくりが初めての人には大工の仕事をしている大人がサポートするなど、みんなで知恵を共有しながら協力して進めます。
自分たちで「できる」と感じた思い出が「津山を楽しくできるかも」という気持ちに変わってくれていると思っています。
関わった大人にとっても、子どもたちが楽しそうに活動する姿が、自分たちが動き出す原動力になっていると感じています。
若い人がどこのまちを選ぶかは自由。それぞれ、自分が自分らしく生きられるまちを選ぶ権利があります。守らなければならない大切なものもありますが、これからの未来を若い人たちの感覚で自由に作っていけるまちにしていかないと、選ばれるまちにはなりません。そして、まちを選んだ人たちが責任をもって未来をつくり、今度は自分たちがもらった自由を次の世代にプレゼントする。その行動を「チャレンジ」と考えています。
積み上げられてきた大切な津山の歴史に加わる、新しい兆しのスパイスになると思っています。
市長 達成感、「できる」という感覚を若い人たちの間でどんどん広めてほしいですね。
地域に関わる活動がしたい
市長 城下HSに参加したきっかけを教えてください。
有田 将来、地域に関わる職業に就きたいと考えています。
城下HSのことは、学校の先生から紹介されました。「高校生のうちに津山のことを知る活動に参加したい」という思いにぴったりと合う存在に興味を持ち、参加しました。
宰務 単純に楽しそうだと思って参加しました。
出身の作陽高校は、市内の他の高校と距離が少し離れていて、他の高校の人と出会ったり話したりする機会が少ないと感じていました。
元々人と出会うことが好きで、城下HSに参加すれば、いろいろな人とコミュニケーションできると思いました。
近藤 出身の津山東高校は、たくさんのボランティア活動をしてみたいという気持ちから決めた学校でした。
気になるボランティアがあったら参加してみたいと思っていたところ、教室に掲示されていた城下HSのチラシに興味を持ち、参加しました。
市長 学校の先生にも広まっているんですね。
和田 四校連携による講座(津山高校・津山東高校・津山商業高校・津山工業高校の生徒が学校の枠を越え、地域でのフィールドワークなどを通じて発見した課題の解決方法について、高校生の視点から提言する「地域創生学」講座)の1年目から講師をしています。各学校の担当の先生と、四校連携の中でやり切れなかった課題、四校の枠組みを超え市内の他の学校に通う高校生なども巻き込んで取り組んでみたかったことなどについて話す中で、城下HSの立ち上げや活動について思いを伝えたところ、先生が興味がありそうな生徒の皆さんに声を掛けてくださり、広がっていきました。
市長 生徒さんたちだけでなく、先生とも出会いがあったということですね。
「出会い」「コミュニケーション」という言葉が出ましたが、わたしも「出会い」と「意気」を大事にしています。良い「出会い」をして、いろいろな人の考え方や捉え方を知り、自分も何かしてみようと「意気に感じる」。そんな場になっているんですね。
和田さんの努力が実っている感じがします。
和田 市内の学校に通う16歳から18歳までの人なら誰でも参加できるという形でスタートし、2020年の1期生は津山高専の学生も含め30人が参加しました。
始めて4年経ちますが、毎年20人程度が参加していて、高校卒業後もOB・OGとして参加してくれている人がいます。
アンケートでも「他の学校の子と話ができてよかった」という感想が寄せられています。
「学校の枠を飛び出してでも活動したい」という、意欲的で元気な子が多い印象です。
活動の内容は、どちらかというと後からついてきたもので、みんな、とにかく「何かしたい」というエネルギーにあふれています。
津山はほどよいまち
市長 宰務さんと近藤さんは、進学先の岡山市に住んでいるそうですが、外から見た津山はどんな印象ですか。
宰務 地元に帰るたびに、岡山の友だちに伝えたいことがある「話題性のあるまち」だと思います。
県南地域では知られていないことを友だちにたくさん話せるのがうれしいです。
近藤 津山は、ほっとできる場所です。
岡山は、どこにいても人がいて、ガヤガヤしていて、しんどさを感じることがあります。
津山はほどよい田舎で、住みにくいとは思いません。
離れてみて、県北地域の良さを強く感じるようになりました。
岡山での生活は、大学の友だちがいるので楽しいですが、津山は帰ってきたい場所です。
市長 「ほどよい田舎」という表現には、わたしも同じ思いを持っています。
津山は、病院、学校、買い物など生活に必要な最低限のものはそろっていて、少し離れれば豊かな自然に恵まれている。移住希望者などに「津山は適度な田舎暮らしができるまち」と紹介しています。
津山に移住された和田さんは、津山にどんな印象をお持ちですか。
和田 16年前、妻の実家がある津山に住み始めました。
自然、歴史に恵まれ、雰囲気も良く、暮らしていく中でも足りないものを感じたことはほとんどありません。
困ったこともあまりなく、便利なまちだと思います。
特別に足りないものがあれば、インターネットがあり、少し離れたところには大阪など大きなまちもあり、さまざまな選択肢から簡単に選べます。
まさに「ほどよい」がキーワードで、拠点ポジションとしていいまちだと思っています。
市長 アフター5や休日の楽しみ方は、都会が充実しているという考え方もありますが、東京暮らしを経験して感じるのが、津山は生活がしやすいまちということです。
生活にはほどよい環境の中で、暮らしを充実させるためには「皆さんがしたいことを見つけられるまち」であることも大切だと感じています。
みんなを巻き込むまちの雰囲気づくり
市長 城下HSに参加したり、津山を離れたりして、気付いたことはありますか。
宰務 城下HSで感じたのは「企画があれば人が集まる」ということです。
子どもは自然と楽しいことに向かうもので、そこには親など大人もついてきます。
小さい企画でも積み重ねていけば「楽しい」と感じる人が自然と集まってきます。
近藤 城下HSの活動でさまざまな企画を行った「つやま自然のふしぎ館」では「来たことがなかった」という来館者にたくさん会いました。
地域のさまざまな資源を生かした企画を形にしていきたいです。
市長 その場所を知らなかった人に訪れてもらうきっかけとして、企画を仕掛けるのは有効ですね。また「楽しい」というのが大事なポイントです。
企画を練り上げて形にし、やり切ったときの達成感をみんなで感じることができるのも良さです。
近藤 岡山に住んでみて感じたのが、岡山駅近くの奉還町商店街と比べ、津山の商店街は暗いイメージです。
企画を積み重ねていくなど、子どもを中心にした人が集まる仕掛けを作り、まちの中心にある商店街を明るい雰囲気にできたら、まち全体の雰囲気も変わってくると思います。
市長 今、商店街で店などを始める若い人が増えています。
先日開催した津山づくりミーティングでは、商店街で店を始めた若手の皆さんから「こんなに商売しやすい場所なのにその良さが伝わっていない」という意見を聞きました。
商店街が元気になることで、まちが明るくなるという視点は大切です。また、子どもに注目し、一緒に来る大人を引き込むというのも良い視点だと思います。
有田 城下HSでの活動中にみんなでまちを歩き、シャッターで閉まっている店の多さやアルネ・津山3階の暗い空間の存在にあらためて気付きました。
みんなが日常的に出入りするにぎわいのある雰囲気づくりについて、これから考えていきたいと思っています。
市長 自分たちの目で実際にまちを見ることはとても大切です。
宰務 進学後、さまざまな人と関わる中で感じたことですが、岡山や都会の大きなまちには「若者はやりたいことをやればいい」という雰囲気があります。
若い人が自由な発想で新しいことをしようと思ったとき、理解し、応援してくれる人が増えたら、津山はもっと良いまちになると思います。
市長 いろいろな考え方がありますが、昔から積み重なってきたことを大切にしながら、新しいことへの価値を認め合う雰囲気づくりも、まちづくりには必要ですね。
若い皆さんの気持ちを汲むことの大切さも伝えていきたいと思います。
皆さんの活動を通じた気づきは、とても頼もしいです。
商店街やアルネ・津山の問題について話が出てきましたが、皆さんの視点からどんなことができたら人が集まってくると思いますか。自由な発想で聞かせてください。
有田 津山はおいしい飲食店がたくさんあるので、そんなお店が集まる「ごはんマルシェ」があったら面白いと思います。
宰務 他の商店街を見ていて感じましたが、若者が好きな古着屋や友だちと気軽に行けるバーなどがあると、若い人が集まってくるかもしれません。
近藤 学生の移動手段は自転車が中心です。市内には自転車で行けない場所にもカフェやいいお店がたくさんあります。そんなお店を集めることができたら、学生が集まってくるのではないでしょうか。
また、アルネ・津山にフットサルなど運動ができる場所があっても面白いと思います。
市長 古着屋、運動できる施設など、これは思いつかなかった視点です。新しいものは自由な発想から生まれます。いろいろなアイデアが出てきてうれしいです。
では、津山というまちへの思いや希望を聞かせてください。
宰務 重ねてになりますが、若者の自由な発想を応援してほしいです。
そして、因美線は廃線にしてほしくないです。
(全員でなごむ)
近藤 城下HSでは、自分にはできないと思っていたことも、みんなと話をしてみたら意外とできるという体験ができ、考え方もどんどん柔軟になりました。やってみたいことができる場所。それが城下HSです。
津山は県北の中心として他の市町村をまとめる存在です。
わたしたちにとっての城下HSのように、津山を中心に県北地域全体が、さまざまな年代の人がしてみたいことができ、それぞれが活躍できる地域になってほしいです。
市長 全国に700ある市の中で、人口が10万人前後のまちが48市あります。
その中で高校、専門学校、高専、大学を合わせた定員の数が5,300人というのは、48市の中で上位5番目になります。市役所周辺に昼間5,000人の若者が集まってくるという、まちの拠点性を大切にしていきたいと考えています。話してくれた「津山を中心に」というのが、この拠点性にも当たってくると思います。
有田 城下HSで同年代の人と出会ったことで感じましたが、同じ高校の友だちには、地域での活動に自主的に参加したことがない人もたくさんいます。
楽しい活動なので、みんなをもっと巻き込んで参加する人を増やしていきたいです。
地域づくり活動に自分から参加する人がもっと増えたら、いろんなアイデアが出て、まちも楽しくなると思います。
市長 他人事でなく自分事にして、地域づくりに興味を持ってもらうことが、地域の元気につながります。
自分たちのまちは自分たちでつくる
市長 最後に、城下HSの目指す姿、まちづくりに必要なことについて和田さんの思いを聞かせてください。
和田 今日は、参加してくれているみんなから、城下HSの活動や津山のまちへの思いをあらめて聞くことができてうれしかったです。
参加している子どもたちには「卒業しても参加を」と声掛けしています。
未来を担う一人ひとりが、生活者として、まちそのものを楽しむことが大切です。
このまちの当事者として「自分たちのまちは自分たちでつくる」という思いをもつ若者を増やしていきたいです。
そのための少しの仕掛けを、連携して作る。それがわたしたち大人の役割です。
高校生が思いを実現する体験を積んでいくには、企画できる場や高校生に刺激を与える大人の存在も重要です。
5年続けてきて、市のスマートシティの取り組みや森の芸術祭とのコラボレーションに広がるなど、新しい企画を作っていくためのプラットフォームとして城下HSの価値が伝わってきていると感じています。
活動が鳥取や四国にも広がっていて「津山モデル」ともいわれる存在になってきています。
この取り組みが続いていくよう、城下HSのことをもっとたくさんの人に知ってもらい、スクールの取り組みを応援し、参加し、見守ってもらうことが、実はこのまちの「人づくりとまちづくり」に直結するという価値を、行政や企業、地域の皆さんに感じてほしいです。
市長 考えたこともなかったアイデアなど、若い皆さんの思いが聞ける貴重な機会となりました。いろいろな世代の皆さん、一人ひとりが、自分らしく生きることができるまちづくりに向け、取り組んでいきます。
前列左から 宰務美紅さん、近藤陽菜さん、有田華梨さん、後列左から 和田優輝さん、谷口市長
つやま城下ハイスクール
つやま城下ハイスクールについて、詳しくはホームページで紹介しています(外部サイトにリンクします)。
活動の内容や実際に行った社会実験の動画などをぜひご覧ください。
参加者の皆さんからいただいた事後アンケートの声
- それぞれの立場や伝えたい思いに配慮してもらいながら、話しやすい環境を作ってもらえて良かったです。市政の面から見た際、地域課題の解決やアイデア出しの対象として「地域の若者・高校生」というキーワードが出ることが多くあると思います。全国的にも、地域で高校生をどのように集め、促し、つなぐかということに課題があります。城下HSのようなプラットフォームがあれば、動き出せることも増えると思います。全国的にも先進的な取り組みとして、引き続き応援をお願いします。
この情報に関する問い合わせ先
- 津山市 秘書広報室(広報)
-
- 直通電話0868-32-2029
- ファックス0868-32-2152
- 〒708-8501岡山県津山市山北520
- Eメールkouhou@city.tsuyama.lg.jp