第27回 津山(まち)づくりミーティング-岐路に立つ学校部活動-
第27回 津山(まち)づくりミーティング-岐路に立つ学校部活動-
7月5日、令和5年度に実施した「部活動の在り方検討及び地域連携・地域移行推進会議*」に参加した委員4人が、学校部活動の地域連携・地域移行について、市長と意見交換しました。
*部活動の在り方検討及び地域連携・地域移行推進会議
国のガイドラインに示された地域連携・地域移行の方針を受け、津山市教育委員会が基本的な方針(推進計画)を策定するため、意見収集や論点の整理を目的に設置した会議です。
岐路に立つ学校部活動
市長 少子化が進む社会情勢の中で、子どもの多様性への対応、人材の確保、施設の整備、地域との関わり方など、教育を巡るさまざまな課題と直面しています。
その中の一つが、今日のテーマである「学校部活動の地域連携・地域移行」です。
知徳体のバランスがとれた子どもたちを育んでいく場として「学校部活動」の存在意義は大きいと考えています。
スポーツ推進・文化振興・保護者・教育現場、それぞれの立場から考えられている、学校部活動の意義や現状の課題などについて、お話しください。
髙原 津山市スポーツ協会には、現在27種目団体が参加し、会員は1万1千人います。
学校の部活動が、少子化などで現状維持には限界がきているという実情を聞き、スポーツを推進する地域の団体として、学校スポーツが持続可能な形になるよう、応援していかなければならないという強い思いを持ちました。
学校スポーツがなくなると、スポーツ自体が維持できなくなるという危機感も抱いています。
学校部活動の地域連携・地域移行は、団体としての重点目標にも入れていて、会員間で情報を共有し、移行への協力体制を取っています。
市長 学校部活動への支援が、スポーツの維持にもつながるということですね。
児島 市立8中学校すべてが、何らかの競技で合同部活動を行うなど、何とか継続している状況です。
少子化によって、人数を確保できず、学校部活動が成り立っていないという現状があります。
現在、子どもたちは中学校に入学した4月に、大会参加に向けて、クラブチームか、学校部活動か、登録先を選ぶようになっています。
これまで、クラブチームからは、日本中学校体育連盟の大会には出場できませんでした。
子どもたちの選択により、活動の場が制限されるということが問題になっていましたが、現在では、緩和されています。
ただ、活動への熱量が違うクラブチームは、大会に出ると上位に入ります。
成績が良いクラブチームを選ぶ子どもたちが増えると、学校部活動の弱体化につながるというジレンマもあります。
小坂田 津山文化振興財団は、芸術文化の振興に向けた事業や支援を行う団体です。
音楽や演劇といったプロの演奏や演技などに触れてもらう機会の提供、子どもから大人まで、市民の皆さんが行う文化芸術活動の支援や発表の場の提供などを行っています。
地域移行に関しての課題は「人」「場所」「お金」に尽きると思います。
その中でも一番難しいと思うのが「人材」の確保です。
指導ができ、しかも継続的に活動できる人は、そう簡単には集まらないと思います。
指導者の候補となり得るのが、わたしたちの団体ともつながりがある、芸術文化の分野でアマチュア活動をしている地域の皆さんです。
子ども・学校・地域の皆さんを財団のネットワークでつなぐ、中間的組織としての役割が、求められているのではないかと感じています。
また、地域でも学校部活動との関わり方を考えていく必要があると思っています。
吹奏楽は、ある程度の人数がいないと成立しないため、学校部活動のあり方を考えていく必要があります。
では、単純に合同で行えば問題が解決するかというと、考えなければならないことも出てきます。
例えば、全国大会に地域の学校が出ることは、子どもたちのモチベーションを高めるだけでなく、地域の皆さんにとってもうれしいことです。
また、吹奏楽は地域のイベントに呼ばれる機会も多いです。子どもたちや学校だけでなく、地域にとっても大きな財産である交流の機会は、維持してほしいと思っています。
市長 発表の場があることは重要で、そこから広がる輪もあります。
学校部活動が、中学校と地域をつなぐ役割を担っているという視点も大切ですね。
須江 昨年度まで津山市PTA連合会の会長を務めていて、会議には、PTAからの視点と民間企業からの視点の両方の立場から参加しました。
まず、わたしたちが中学生の時は当たり前のようにあった学校部活動が、危機的な状況になっていると知り、衝撃を受けました。
学校の部活動で学んだ、一番大切なことは「人間関係」だと思っています。
市長 学校は、社会生活に必要な知識を身に付けるための場で、集団の中で、どう生きるか、自分の能力や個性をどう生かしていくかなどを学ぶ場所だと思っています。
そんな中で、学校部活動は人間関係を学ぶことができる大切な場ですね。
須江 人間関係が希薄になっているといわれる今の子どもたちにとって、人間関係を養う場として、学校部活動の存在は大切だと考えています。
それは、スポーツの世界でも、文化の世界でも同じです。
さまざまなことが、学校だけでは立ち行かなくなっている中、家庭や学校を含む地域全体で子どもを育てる必要があります。
家庭・学校・地域が連携して子どもを育んでいく。その活動の一つに学校部活動や地域クラブ活動があると思います。
広がる子どもの選択肢
市長 地域連携・地域移行により広がると考えられる新たな可能性には、どのようなことがあるでしょう。
児島 子どもたちの選択肢が広がるというメリットがあると思います。
学校にはない部活動など、学校だけではできないさまざまな活動に、他の学校の子どもたちと参加することで、経験や人間関係を広げることができます。
子どもたちの「したい」ことができるのは、大きなメリットです。
また、学校現場には、専門的な知識や技術を持った顧問が必ずしもいるわけではないので、地域の指導者という受け皿ができることで、子どもたちが専門的な指導を受けることができるのも良い点だと思います。
教職員の働き方改革にもつながると考えています。
市長 子どもたちがしたいと思う分野に挑戦できる良さはありますね。
専門的な技術を持った人や場所で指導を受けるメリットは、あると思います。
学校部活動ではありませんが、小中学校の水泳の授業への民間スイミングスクールの活用を試験的に始めています。子ども・保護者・先生・事業者、それぞれから評判が良いと聞いています。
須江 小学6年生のなりたい職業に、学校の先生が男女ともにランクインしているそうです。
子どもたちの夢ある仕事として、先生方にやりがいを感じながら働いてもらうためには、先生方の労働環境を整えることも、PTAとして大切だと思っています。
先生方にとって一番大事な、学校での教育活動に生かされるような学校部活動であるためにも、地域連携・地域移行の取り組みは大切だと思っています。
課題は指導者の確保
市長 地域連携・地域移行に向け、どのような課題が考えられるでしょうか。
児島 地域での指導者の確保は、難しい状況です。
地域に全部を任せてしまうのでなく、休日も、兼職兼業という形で積極的に関わっていきたいという思いを持っている教員のことも大切に考えたいところです。
小坂田 「部活動の指導がしたくて先生になった」という強い思いを持っている先生もいますよね。
いろいろな立場や思いの違いがある中で、現場の先生の意見も大切にしてほしいと思っています。
髙原 指導者の確保が、一番の課題です。
当初は、スポーツ協会の会員が、それぞれの学校に行って指導することも考えましたが、平日はそれぞれ仕事をしているので、学校に出向くのは無理です。
そこで考えたのが、土曜日と日曜日に開催している、既存のスポーツ教室の活用です。
柔道、弓道、バレーボールなど、各種目の団体が行う、さまざまなスポーツ教室が10件以上あり、それぞれに指導者がいます。
中学生には、休日に教室に参加してもらう。この方法で、指導者の確保という課題解決に向けた方向性を見出そうとしています。
市長 指導者の確保という課題を解決するために、早速に考えてくださっているんですね。
児島 事故やトラブルの責任の所在、子どもたちの安全確保についても大きな課題です。
学校外の場所に活動が移ることで、現地までの送迎、活動費の発生など、保護者負担が増えることへの懸念もあります。
また、特性のある子どもたちは、特に学校生活とうまく引き継ぐ必要があるという課題もあります。
みんなで協力して津山らしい方法を
市長 学校部活動の地域連携・地域移行が抱える課題解決に向けた、皆さんの考えをお聞かせください。
小坂田 吹奏楽では、先生によって得意・不得意の楽器があることなどもあって、民間の人が学校の指導に入っている事例があります。
都会では、プロのオーケストラや楽団に委託する方法もありますが、津山では難しいです。
津山には、普段は別の仕事をしながら、昔の経験を生かしてアマチュアで活動を続けている人がたくさんいます。
公務員の割合も高く、学校部活動の課題解決に向けて地域の人材を活用していくためには、民間企業を含め、兼業規定の見直しが必要だと感じています。
髙原 人材確保に向け、兼業できる環境の整備は必要です。
児島 地域クラブ活動の指導に関し、教員の兼職兼業も認められていますが、超過勤務など、労働基準法との兼ね合いもあります。
小坂田 音楽が得意な人との雇用契約に、業務として学校部活動での指導を取り入れ、3時までは本来業務を行い、3時からは部活動に派遣する。会社自体も練習会場として提供しているという民間企業の例もあります。
公務員も民間も関係なく社会全体で、子どもたちの成長にとって大切な人材を地域に送り出す雰囲気ができてほしいです。
また、指導する人は中学生を教えることになります。指導者としての研修の機会を整える必要も今後は出てくると思います。
市長 兼業、育成などの環境整備、企業でのビジネスモデルとして成立するかなど、貴重な人材が活動しやすくなるような研究が必要です。
須江 保護者としては、送迎や費用負担などへの不安や懸念も大きいです。
地域連携・地域移行の受け皿としての候補リストに民間企業も入っていました。
どんなに子どもたちのためとはいえ、あくまでも営利団体であり、費用の問題は出てくると思います。
そうなってくると、行政の後ろ盾も必要になるかもしれません。
まずは、さまざまな課題があることをみんなで共有して、課題解決に向かって取り組む雰囲気づくりが第一です。
PTAでも、学校部活動や地域クラブ活動に熱心な保護者の皆さんも相当数いるので、協力できることはたくさんあると思います。
津山の子どもたちに健やかに育ってほしいという共通の思いのもと、いかに皆さんを巻き込んでいくかが重要です。
みんなで意見を持ち寄って、一部の学校からでもいいので取り組んでみて、そこから少しずつ広げていけばよいと思います。
いろいろな取り組みの中で、バランスの良い、持続可能な仕組みができれば、それが子育てしやすい津山のまちづくりにつながるのではないでしょうか。
小坂田 スポーツ・文化など、事情はそれぞれに違い、正解はなかなかありません。
試行錯誤を繰り返し、柔軟に変えていく。とにかくやってみることが大切です。
そのうえで課題を抽出し、解決方法を考えていけばよいと思います。
部活動の地域連携・地域移行というと、マイナスイメージが先行しがちですが、子どもにとって考えてみると、例えば、eスポーツや演劇、ヒップホップ、合唱など、今まで学校部活動ではできなかったものについて、新しい選択肢を提示できる可能性があるともいえます。
今の時代にあった活動に、参加できるチャンスだと考えることもできるのではないでしょうか。
髙原 一人でもたくさんの子どもが、スポーツと関われるような環境づくりを続け、子どもたちの健やかな成長に寄り添いたいです。
児島 中学生期に文化芸術活動や運動を一生懸命することは、精神的、肉体的な成長に欠かせない、大切なものであることは間違いありません。
すべての子どもたちに、何らかの活動をしてほしいと思っています。
学校部活動の現状から、今の部活動の形態をそのまま維持しようとするのは、無理な発想です。検討委員会でも、受入先をリストアップして、子どもが行きたいところを選べるようにする方向で話を進めています。
地域全体で発想を変え「地域みんなで子どもたちを育てていく」という気持ちへの切り替えが必要だと感じています。
例えば、専門性が必要なものだけでなく、eスポーツや軽スポーツ(体の負担が少なく、ルールが簡単で、誰でも楽しめるスポーツの総称)、体力づくりのためのものもあります。
こういった活動であれば、専門的な指導者は無理に必要ありません。
地域の大人が関われることはたくさんあります。
子どもたちが自主的にする活動を、大人が見守るという活動のあり方も、今後は検討が必要かもしれません。
できることから取り組み、津山独自の方法を確立していきたいと思っています。
市長 サッカー、ゴルフ、陸上などのスポーツに加え、舞台芸術や音楽などさまざまな分野で、津山出身の皆さんが活躍しています。
未来に向けて子どもたちの可能性を狭めることはできないという思いは、皆さん共通するところです。
課題を真正面から捉え、現実に即した形で解決方法を考えてくださっている皆さんの存在は、大変心強いです。
部活動の地域連携・地域移行について、解決が必要な課題はありますが、方向性が見い出せそうです。
皆さんの意見も聞きながら、地域全体で子どもを育む、子育てしやすいまちに向けた取り組みを進めていきます。
前列左から 髙原清隆さん(津山市スポーツ協会会長)、児島みどりさん(前津山市中学校長会代表)、後列左から 須江庸司さん(前津山市PTA連合会会長)、谷口市長、小坂田裕造さん(津山文化振興財団常務理事)
「津山市立中学校部活動の在り方及び地域連携・地域移行の基本方針(案)」への意見を募集しています(令和6年8月16日まで)
今後の中学校部活動の在り方や地域連携・地域移行していく方向性について基本的な方針を示す「津山市立中学校部活動の在り方及び地域連携・地域移行の基本方針」を策定します。
策定に向け、基本方針(案)への意見を、令和6年8月16日まで募集しています。
皆さんの意見をお寄せください。
詳しくは、こちらをご覧ください。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参加者の皆さんからいただいた事後アンケートの声
- 市長と直接意見交換ができたのがよかったです。一つのテーマで話すことで論点が絞れると思います。文科系部活動の地域移行について、津山文化振興財団の位置づけ、関わり方、その条件整備など、議論する必要があると思います。
- 中学校部活動の地域移行の難しさについて、市長にも分かってもらえたと思います。指導者の確保については、どうしても予算が必要となるので、方法論をしっかりと協議しなければならないと思います。
- 各団体の地域移行に向けての進捗状況や思い、具体的なアイデアを交流し、それを直接市長にお伝えする機会を得られたことは、大変有意義であったと思います。
- 改めて学校部活動の地域移行について考え直す機会になり、色々な課題を各界の皆様と共有できたことがよかったです。市長に市民の意見を直接伝えられる懇談会は本当にありがたいです。
この情報に関する問い合わせ先
- 津山市 秘書広報室(広報)
-
- 直通電話0868-32-2029
- ファックス0868-32-2152
- 〒708-8501岡山県津山市山北520
- Eメールkouhou@city.tsuyama.lg.jp