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施政方針 令和6年3月

「新時代を“築く”大いなる挑戦」~創造と変革で未来を築く~

 
1 はじめに
 令和6年3月津山市議会定例会の開会に当たりまして、今後の施政方針を申し述べさせていただきます。
元日に甚大な被害をもたらした能登半島地震により、多くの尊い命が犠牲になり、今も1万人を超える被災者が避難生活を送っておられます。お亡くなりになった方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 現在、仮設住宅の整備や、産業・観光など様々な分野の復旧・復興に向けた支援が進められていますが、本市としても、職員派遣・給水支援、義援金窓口の設置などの対応を行っているところです。今後においても、関係機関と連携しながら、最大限の支援をしてまいります。昨年8月の台風7号では、本市も道路や河川、家屋などへの被害を受けており、改めて災害への備えの重要性を痛感しております。新型コロナウイルス感染症の5類移行という大きな変化を迎える中で、持続可能で天災・災難から速やかに回復する力・レジリエンスの高いまちづくりを進めていかなければなりません。
一方、本市を取り巻く情勢は、エネルギーや食料品等の物価高騰に加え、人口減少や少子化、高齢化の進行など、様々な課題が存在しています。
その中でも、最も深刻といわれる少子化への対応として、今年度、多子世帯応援事業などの市独自の取組により、子育て世帯の負担軽減を行ったところですが、こうした取組に加え、将来にわたり、津山に住み続けたい、住む価値があると思われる将来ビジョンと都市像を示していくことが急務です。「津山市スマートシティ構想」や「津山まちじゅう博物館構想」を次年度においても、着実に推進するとともに、地方創生にもつながる脱炭素社会の実現に向けて注力してまいります。
 歴史文化遺産と都市機能が集積する中心市街地の再生は、持続的に本市が発展していくための重要な政策課題です。人が集い交流し、新たな価値やビジネスが創出されるエリアとして再生させるための道筋をつけ、都市としての付加価値を高めてまいります。
 私は、未来を切り拓くためのこれらの取組が、住民のWell-Being、すなわち満足度や幸福感の向上につながると確信しております。引き続き、住民、事業者、関係機関等の皆様と共創型のまちづくりを進め、「誰もが輝く拠点都市津山」を築いてまいります。
 その取組内容について、4つの重点目標と8つのまちづくりのビジョンに沿って、順次、御説明いたします。

2 市政運営における基本的な考え方(4つの重点目標)
 まず、市政運営における基本的な考え方となる4つの重点目標を申し述べさせていただきます。
 1つ目は、「快適で楽しい、住み続けたい街を築く」であります。
 スマートシティ構想の推進により、住民の生活を便利で快適にしていくとともに、まちじゅう博物館構想のアクションプランの実施により、歴史と文化が息づく、憩いの空間を創出し、本市の豊かさと魅力を感じ、深い愛着を持てるまちの創造に取り組んでまいります。
 また、災害に対するレジリエンスを高め、住民の安全と安心を守るとともに、AIデマンド交通等の導入による公共交通の維持・確保や、市内の幹線道路網等の整備を進めることで、本市の都市基盤を築いてまいります。
 2つ目は、「安心して暮らせる地域共生の社会を築く」であります。
 若い世代が結婚・子育ての将来展望を描ける環境をさらに整え、安心して家庭を築き、子どもを育むことができるよう、全力で支援してまいります。
 持続可能な地域コミュニティの実現に向けた取組を進めるとともに、地域包括ケアの仕組みづくりや、健康寿命の延伸にも注力し、高齢者や障害のある方も住み慣れた地域で安心して生活できる環境づくりを推進してまいります。
 3つ目は、「持続可能な地域内循環型の経済を築く」であります。
 「地域内循環型経済」を実現するため、地域内サプライチェーンの構築に向け、企業間マッチングなどを推進し、新たなビジネスモデルを創出してまいります。
 また、「津山城下まちづくりビジョン」による城下地区のまちづくりを進めるとともに、中心市街地の賑わい創出と経済活動の活性化を図ってまいります。
 地域脱炭素の推進については、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入などの地球温暖化対策を進めるとともに、地域経済の成長にもつながる水素エネルギーの利活用の検討を官民共創で行うなど、脱炭素社会と地方創生の実現を目指してまいります。
 4つ目は、「教育の充実で未来を切り拓く人材を築く」であります。
 学校施設の整備や、「GIGAスクール構想」の推進、多様な学びの提供、郷土愛の醸成などを通じて、より良好な教育環境の整備を進めてまいります。
 また、確かな学力を定着させるため、授業改善、家庭学習、確認テスト、補充学習等を一体的に取り組む「学びのサイクル」などを推進することにより、自ら学び、考え、行動する能力を養うことで、将来、地域社会で活躍できる人材の育成を目指してまいります。 
 高等教育機関との連携については、美作大学・津山高専の強みを活かした取組を進めることで、時代に応じた「学園都市津山」を実現してまいります。
 
 
3 新たな津山を築く8つのビジョン
 続きまして、まちづくりの8つのビジョンに沿って個別の施策を申し述べさせていただきます。
 
(1)拠点都市にふさわしい都市機能が整備された津山へ
 最初に、「拠点都市にふさわしい都市機能の整備」であります。
 まず、重要な都市基盤となる道路整備についてです。
 空港津山道路は、災害に強い道路ネットワークの構築という観点からも、必要不可欠であり、国道53号の代替路として機能するダブルネットワーク化を図るため、引き続き、沿線自治体などと連携し、未着手区間の早期事業化を国・県に対し、要望してまいります。また、現在施工中の津山南道路についても、より一層の事業促進を図ってまいります。
 河辺高野山西線「北工区」については、第3次救急医療施設である津山中央病院への救急搬送の時間短縮や、交通の利便性向上などの大きな効果が期待されており、本路線の早期整備を県に要望してまいります。
 総社川崎線は、3月20日に山北工区と、沼林田工区の県道大篠津山停車場線以西の沼区間の開通を予定しております。両工区の開通により、交通の円滑化、本市の経済・観光分野の活性化も期待されます。残る沼林田工区の林田区間についても、早期開通に向け、全力で取り組んでまいります。
 生活道路・通学路等の維持管理については、定期的な点検等により、安全性・快適性の確保と長寿命化を図ってまいります。
 城東地区の道の駅整備については、地方創生と観光振興につながる拠点施設として、国と共同で取組を進めております。今後、周辺地区への波及効果も踏まえながら、整備候補地を近隣にも広げ、検討を進めていく方針です。
 水道インフラについては、安全・安心な水道を維持するため、老朽管の更新事業や施設の耐震化事業を進めております。物価高騰の住民生活への影響を考慮し、次年度、水道料金の見直しは行いませんが、水道事業経営審議会から答申された水道料金の適正水準のあり方を踏まえながら、改定時期を見極めてまいります。
 災害に対するレジリエンス向上については、浸水被害に対応するため、計画的な河川の浚渫や、ポンプゲート上流の幹線雨水路の整備を進めてまいります。また、「雨水管理総合計画」を策定し、優先度の高い地域に計画的な対策を実施するなど、浸水被害の軽減を図ってまいります。
 防災体制の強化に向けては、「津山市防災ハザードマップ」や「津山市災害情報等配信システム」による情報発信の強化、自主防災組織の育成、消防団の施設・装備の充実を図ってまいります。
 公共交通の維持・利便性向上については、加茂、阿波、勝北及び久米地域において、AI技術と既存の交通手段を融合したAIデマンド交通の実証実験を来月から開始します。今秋には本格運行に移行し、JRや路線バス等への二次交通の強化に加え、高齢者や障害のある方などへの移動手段の確保も図ってまいります。
 津山駅については、今夏を目途に、駅の内外装がリニューアルされるとともに、バリアフリー機能を備えたトイレの新設や、交通系ICカードの利用開始も予定されており、引き続き、JR西日本と連携し、JR路線の活性化につなげてまいります。
 歴史まちづくりの推進については、まちじゅう博物館構想の実現に向けたアクションプランを策定し、地域一体となった地域資源を活用する施策展開、交流人口増加の核となるスポットづくり、城東・城西地区等の空き家対策、「珈琲のまち津山」を具現化するためのコンテンツづくり、自然や歴史文化を体験するイベント開催などに取り組んでまいります。
 城下地区の津山国際ホテル跡地については、津山城跡の石垣や備中櫓を背景にした象徴的な眺望を確保しつつ、住民や観光客が気軽に時間を過ごせ、イベント実施などができる多目的広場の整備を進めるとともに、隣接する森本慶三記念館との一体的な利活用について検討してまいります。
 中心市街地の活性化については、引き続き、鶴山通り沿道における改修・建築に対する助成や、中心商店街の空き店舗・空き家対策を行うとともに、新規創業や販路開拓・拡大、商品開発などを支援する体制を構築してまいります。また、昨年12月に中心市街地活性化協議会から受けた提言等を踏まえ、第3期となる中心市街地活性化基本計画の国の認定を目指してまいります。
 映画館については、本年度に実施した調査でもニーズが高く、アルネ・津山など、中心市街地での開設の可能性を検討してまいります。
 公民館の施設整備については、佐良山公民館の次年度中の完成を目指すとともに、大崎公民館の実施設計、河辺公民館の建替に向けた地元協議を進めてまいります。
 スマートシティ構想の推進については、昨年10月に設立した推進協議会を中心に、産・学・官・民連携によるデジタル社会の推進を加速させてまいります。本年2月から運用を開始した「つやまポータル」では、住民一人ひとりに対応した情報発信や、買い物データを活用したヘルスケア事業、電子申請、書かない窓口等の連携サービスなどが可能となります。住民にも広く周知し、さらなる利用者の増加につなげてまいります。
 
(2)安心して子どもを産み育てられる多世代共生の津山へ
 次に、「安心して子どもを産み育てられる多世代共生」についてであります。
 妊娠から出産、そして、子育てにおける一体的できめ細やかな支援が必要であることから、保健師等による伴走型相談支援と経済支援を推進してまいります。
 引き続き、不妊・不育治療の助成により、出産につながる支援を行っていくとともに、昨年度から開始した市独自の「多子世帯応援給付金」を継続実施し、第2子以降の児童を養育する世帯の経済的負担を軽減してまいります。
 令和4年10月に導入した「つやま子育てアプリ」については、妊娠届出者のうち約91%の方が利用されており、今後もサービスを提供してまいります。
 子ども医療費については、本年1月診療分より、対象の上限を中学生から高校生に拡大しており、子どもに係る医療費の自己負担を無料化することで、子育てしやすい環境づくりを進めてまいります。
 幼稚園、保育園等と小学校との連携・接続については、推進体制を一層強化するとともに、発達支援が必要な子どもの情報共有ツールである「津山市共通支援シート」を活用し、幼児教育から小学校教育へのスムーズな移行を図ってまいります。
 保育園等の保護者に係る負担軽減については、使用済み紙おむつの自園での処分を推奨し、保管用ゴミ箱の購入・更新に対する補助を行ってまいります。
 放課後児童クラブについては、利用を希望する全ての児童の受け入れができる体制を目指し、支援員の人材確保やクラス増設等により、児童の安全で安心な居場所の確保に努めてまいります。
 発達支援が必要な幼児の相談体制については、公認心理師等が保育園を訪問するなど、指導や助言を行ってまいります。
 県北に1つしかない児童発達支援センターの機能強化に向けて、重度の身体・知的障害児が身近な地域で必要な療育を受けることができるよう、次年度より、定住自立圏事業として取り組んでまいります。
 ヤングケアラー支援については、安心して相談できる窓口の設置や支援体制の構築、ヤングケアラー世帯の負担軽減につながる家事・育児等の支援、社会的認知度の向上などに取り組んでまいります。
 地域福祉については、来月策定する「第3次津山市地域福祉計画」等により、誰もが住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせる支え合いのまちづくりの実現を目指してまいります。また、次年度より、「地域包括ケア推進室」を設置し、重層的支援体制や地域包括ケアシステムの構築などの取組を加速させてまいります。
 健康づくり・食育推進については、来月、「第3次健康つやま21」を策定し、全ての住民が共に支え合い、健やかで幸せに暮らせるまちを目指し、切れ目のない取組を進めてまいります。
 健康寿命の延伸については、本年度より南部圏域で開始した「健康長寿はつらつ事業」の対象地域に、東部圏域、加茂・阿波圏域を新たに追加し、さらに取組を進めてまいります。また、住民が継続的にウォーキング等の健康づくりを行うアプリを活用することで、取組効果を向上させてまいります。
 高齢者の居場所づくりについては、「ふらっとカフェ」の開設に向けた助言や相談等を行うとともに、活動支援の補助制度を新設いたします。
 障害のある方への支援については、高齢化・重度化や「親亡き後」に備えるとともに、障害福祉サービス事業者等と連携し、地域生活支援拠点の機能を充実させてまいります。
 また、障害のある方が制作した芸術作品の展示等を行う「第8回きらぼし★アート展」を本市で初開催し、地域共生の社会づくりを進めてまいります。
 福祉交通については、屋外での移動が困難な高齢者や障害者が制限を受けることなく活動の範囲を広げられる環境を整備するため、福祉タクシーの車両更新やAIデマンド交通の活用など、支援を拡充してまいります。
 自殺対策の推進については、来月策定する「第2次いのち支える津山市自殺対策計画」に基づき、かけがえのない命を大切にする社会の実現を目指してまいります。
 
(3)雇用が安定して定住できる津山へ
 次に、「雇用の安定と定住」についてであります。
 企業誘致については、本年度、津山産業・流通センターへの立地協定を2社と締結したことから、立地率は93.9%に達する見込みであり、新たな産業用地の確保について、民間活力の活用も視野に入れた検討を進めてまいります。
 若者の地域内就職の促進については、地域企業の存在や魅力を小学生などの早い段階から理解していただくため、「つやまエリアオープンファクトリー」「高校生向け企業ガイダンス」等を実施することで、地元での就職につなげてまいります。また、雇用促進協定を締結した企業が提供する「Airワーク 採用管理」を活用し、世界一の求人検索エンジン「Indeed」に自動掲載することで、地域企業の採用力向上につなげてまいります。
 人材確保については、つやま産業支援センターと津山広域事務組合の「津山圏域無料職業紹介センター」において連携した取組を行っており、今後も企業の採用ニーズと就職希望者とのマッチングを進めてまいります。
 雇用につながる人材の創出については、経営者、技術・IT人材などの育成に加え、創業塾や高校生・高専生等の創業意識の醸成、補助制度などにより、社会的課題の解決につながるソーシャルビジネスの創出も図ってまいります。
 女性活躍の推進については、企業向け研修会の開催や、ワークライフバランスのアドバイザー派遣など、働く意欲のある全ての方が、それぞれの力を最大限発揮でき、安心して働くことができる環境を整備してまいります。
 先月発売された移住情報誌では、住みたい田舎の都市ランキングで、本市が若者世代やシニア世代の各部門で全国上位に取り上げられました。これを好機として、今後においても、「津山ぐらし移住サポートセンター」を拠点としたワンストップの移住相談を進めるとともに、空き家の購入・改修費等の助成など、きめ細やかな支援を継続してまいります。また、移住・定住ポータルサイト「LIFE津山」等による情報発信や、トライアルステイの充実、オーダーメイドツアーの実施など、取組をさらに推進してまいります。
 
(4)地域産業が発展する津山へ
 次に、「地域産業の発展」についてであります。
 つやま産業支援センターの取組については、国・県や金融機関等と連携し、成長に向けてチャレンジする企業や新規創業を支援することで、地域産業の活性化を図ってまいります。
 次年度は、生産性向上に注力し、企業内デジタル人材の育成、ICTやロボットの導入など、デジタル化、自動化への投資を後押ししてまいります。特に、デジタル化については、経済産業省の認定を受けた「津山市DX推進ラボ」の計画を基に、「つやまICTコネクト」の成長支援や、津山高専内に設置した「津山IoTラボ」を通じたDX推進、サテライトオフィスの設置サポートを行ってまいります。
 また、「津山ステンレス・メタルクラスター」「津山高専技術交流プラザ」の枠組みや「MADE IN TSUYAMA」「TSUYAMA FURNITURE」のブランドなど、テーマごとの地域産業の強化も図りながら、サプライチェーンの構築を推進してまいります。
 これら以外にも、高いポテンシャルを秘めている中小企業が多数存在します。例えば、京都府立大学と連携したフラン樹脂化技術、施工性・安全性・断熱性に優れた膜天井技術、新国立競技場や東京スカイツリーにも採用された塗料技術を有する企業などのプロモーション・販路開拓も支援してまいります。
地域内の経済循環についても、専門機関による地域分析を実施し、キャッシュアウトを防ぎ、キャッシュインを増加させる施策の立案・実施につなげてまいります。
 農業は、持続的な発展が求められる本市の重要な産業であります。農地の集積・集約化や担い手の確保については、次年度、従来の「人・農地プラン」に替わり、「地域計画」を策定し、新たに10年後の農地利用を示した「目標地図」を作成することで、農地を次世代に引き継いでいくための取組を加速させてまいります。
 農業生産者の所得向上を目的とする農業ビジネスモデルについては、地域商社「曲辰」を核として、引き続き、定住自立圏エリアの農産物の高付加価値化やブランド化、新商品の開発に取り組み、圏域外への販路開拓を進めてまいります。また、本年度より試験運用を開始した「アグリつやまっち」の活用により、直売所を結節点として、生産者と消費者のマッチングを促進してまいります。
 津山産小麦のブランド化については、生産拡大はもとより、需要拡大を図る「パンフェスタ」の開催などの取組を進めてまいります。
 ぶどう生産については、今後も需要拡大が見込まれることから、県や農地中間管理機構と連携して新規就農者の掘り起こしや、ぶどう団地の造成などに取り組み、多様な担い手の確保と産地形成を図ってまいります。
 つやま和牛については、本年2月に香港への輸出も行い、国内のみならず海外を含めた販路拡大や、安定的な供給体制の構築を進めてまいります。また、市内のホテルや飲食店の取扱店舗数が増加しており、観光などの関連産業の活性化、交流人口の増加につなげてまいります。
 老朽化が進んでいる津山市食肉処理センターについては、現在、調査検討委員会からの中間報告を受けており、将来におけるセンターの位置付けも含め、経営の方向性を検討してまいります。
 林業・木材産業については、森林環境譲与税も活用しながら、林業の担い手対策や搬出間伐等の補助の拡充、民有林の整備などを推進してまいります。加えて、地域材を利用した住宅への助成についても、新たに店舗などを対象とするなど、地域材の利用拡大に取り組んでまいります。
 地域脱炭素については、先行的な取組を通じて、次の時代の地域社会を目指す「脱炭素先行地域」の選定を受けるべく、全力で挑戦してまいります。
 また、エネルギー効率の高い機器や、二酸化炭素の削減設備等の導入を支援する「スマートエネルギー導入補助事業」を拡充するとともに、市内事業者による販売、工事施工等を通じた地域経済の活性化を図ってまいります。
 水素の利活用に関しては、JR西日本が現在進めている水素燃料電池列車のJR津山線への導入の取組と連携を図りながら、本市における水素需要の創出と水素エネルギーの普及・活用を検討してまいります。
 
(5)将来を見据えた人材育成を進める津山へ
 次に、「将来を見据えた人材育成」についてであります。
 本年1月、美作学園より美作大学の公立化に向けた検討を求める要望書が提出されました。同大学は、地域生活を支える専門人材を育成してこられましたが、今後、地方都市での私大運営は、一層厳しさが増すと予想しており、その存続が危ぶまれる状況になれば、地域の人材供給や経済活動など、多方面へ影響があるものと受け止めております。本市にとって、同大学は、重要な都市機能の一つであると認識していることから、慎重に検討したいと考えております。
 また、津山高専を含む本市の高等教育機関との連携については、本年度より、行政課題や地域課題の解決につながる取組に対し、その費用の一部を補助しています。県北地域の教員不足解消や、デジタル技術を活用した道路の劣化診断などの研究が行われており、実践的職業人の育成と、地域への理解と愛着を深めることで、地元に定着する学生が増加するよう、支援を続けてまいります。
 岡山大学津山スクールにおいては、同大学と県北3市5町2村、津山商工会議所との連携により、地域を支える人材の育成確保につながるワークショップ等の開催を引き続き実施してまいります。
 その他の高等教育機関との連携については、早稲田大学とはまちじゅう博物館構想について、慶應義塾大学SFC研究所とはスマートシティ構想について、大阪大学とオランダのグローニンゲン大学による日蘭学生会議とは津山の洋学の魅力発見について、それぞれ共同研究を実施してまいります。また、中央大学との連携も計画しており、県内外の学生と地域住民との交流や学生独自のアイデアを通じて、地域活性化に資する人材の育成と関係人口の創出を図ってまいります。
 アルネ・津山内に開設している「津山まちなかカレッジ」においては、リカレント教育やリスキリングを行っており、引き続き、専門知識と技能を持った人材を育成し、再就職や企業力の向上につなげてまいります。
 
(6)多様な教育機会が得られる津山へ
 次に、「多様な教育機会の充実」についてであります。
 本市の教育については、「第3期教育振興基本計画」に基づき、自らの将来を自らの力で切り拓く人材の育成とともに、ふるさと津山に誇りと愛着を持ち、自己肯定感を高め、地域や社会に貢献できる人材の育成を目指してまいります。
 まず、学校施設の整備については、北陵中学校体育館の長寿命化改修や、西小学校校舎の外壁改修工事などを実施するほか、次年度は、市内16の小中学校において、エアコン未設置の特別教室にエアコンを設置し、より快適な学習環境づくりを推進してまいります。
 「GIGAスクール構想」については、ネットワーク回線の増強など、通信環境の整備を引き続き進めてまいります。また、鶴山小学校と勝北中学校をモデル校とし、教育データの抽出・分析内容をグラフやチャートにするなどの可視化を進めており、次年度は、学校現場での試行的な運用を開始します。
 さらに、情報教育の推進については、市独自に「ICT活用推進員」を委嘱し、ICTを活用した授業公開や情報提供を広く進めてまいります。
 教育体制の充実については、「小1グッドスタート支援員」を年間配置することで、就学前から小学校1年生への円滑できめ細やかな支援を行うとともに、市独自の「業務アシスト員」の継続や、外国籍の児童生徒の増加に伴う日本語指導等担当教員の新たな配置、小学校の学年担任制の導入などを進めてまいります。
 学力向上については、本年度の学力調査において、小学校全体で全国・岡山県平均を上回る結果となりました。今後は、中学校において、基礎・基本を確実に習得するため、学び重ねの取組を徹底するなど、授業改善をより一層進めてまいります。
 不登校については、小中学校ともに長期欠席者数が増加傾向にあります。現在、学校に行きづらい生徒を対象とする専用教室を4中学校に設置しておりますが、次年度、さらに1中学校に新設するとともに、不登校生徒に配慮した特別な教育課程を編成する「学びの多様化学校」の設置を検討してまいります。
部活動の地域連携・地域移行については、基本方針を策定し、令和8年度を目標として、着実な実施を目指してまいります。
 郷土愛の醸成については、「つやま郷土学」を推進しており、次年度は、「地域の大人に学ぶ夢育講座」として地域で活躍する方々の人生に学ぶ取組や、小中学生版「つやま検定」を実施するなど、郷土に誇りと愛着を持つ取組を充実させてまいります。また、大分県中津市・島根県津和野町との「蘭学・洋学三津同盟」による学校間交流などを引き続き実施してまいります。
 コミュニティ・スクールについては、次年度、全ての小中学校で導入する予定であり、地域とともにある学校づくりをより一層推進してまいります。
 ニートやひきこもりの対策については、講演会の開催や小中学校の学習内容を学び直す支援等、青少年育成センターの機能の充実を図ってまいります。
 学校給食については、まずは地場産品を安定的に利用し、安全・安心な給食提供に努めながら、津山産小麦を使用した麺やつやま和牛なども積極的に活用してまいります。また、食材等の物価高騰に対しては、引き続き、家庭の負担軽減を図ってまいります。
 市立図書館では、デジタル社会の推進や読書バリアフリー法などに対応するため、新たに電子書籍貸出サービスを定住自立圏事業として実施いたします。これにより、来館が困難な方への対応に加え、小中学校との連携をより深め、児童生徒が読書しやすい環境づくりを推進してまいります。
 スポーツ振興については、スポーツ協会をはじめ、各種団体と連携し、様々なスポーツを通じて、健康で明るく活力のある生活が送れ、人と地域との交流を促し、地域の一体感や活力が生み出せるまちの実現に取り組んでまいります。
 プロスポーツの誘致促進については、プロチーム主催の教室、学校訪問、サイン会など、地域貢献事業も積極的に行っており、次年度は、新たな種目のプロリーグ誘致を進めることにより、スポーツ全体の振興と地域への経済効果を増加させてまいります。
 スポーツ施設の整備については、スポーツ推進審議会から答申されたスポーツ施設の今後のあり方を踏まえ、各施設の長寿命化や機能強化等を行い、利用率などの向上に努めてまいります。
 市内外の体操競技団体等に利用されている「加茂町スポーツセンター体操練習場」については、空調設備の設置によるグレードアップを行い、地域活性化につながる施設にしてまいります。また、「加茂町武道館」についても、損傷が著しい外壁と雨樋を改修いたします。
 老朽化が進む久米市民プールの更新については、今月策定した「津山市久米総合文化運動公園市民プール整備基本計画」に基づき、公認プール機能を有する施設の更新整備に着手いたします。久米地域の活性化はもちろん、スポーツ振興、健康・体力づくり等の推進、そして、交流拠点施設としてふさわしい機能を有するプール整備を進めてまいります。
 
(7)歴史と文化に誇りを持ち、観光都市として発信する津山へ
 次に、「歴史と文化に誇りを持った観光都市としての発信」についてであります。
 昨年の「津山さくらまつり」「津山納涼ごんごまつり」では、いずれの来場者数も過去最高を記録し、本市の観光にも、確実な回復の兆しが見えております。
 今後、年間で最も多くの観光客が訪れる「春はつやま」の各種イベントに加え、歴史・文化・食・自然等の観光資源の活用や新規イベントの実施、関係団体との連携などにより、観光コンテンツをさらに充実させ、年間観光入込客数250万人の実現を目指してまいります。
 本市の魅力を効果的に発信し、より一層の誘客促進とブランド力の向上を図り、需要が高まっている国内外からの観光誘客を推進してまいります。特にインバウンドについては、観光協定を締結した台湾彰化市との連携事業を積極的に実施してまいります。
 また、本市の牛肉食文化については、農林水産省の「SAVOR JAPAN」、文化庁の「100年フード」に認定され、度々メディアにも取り上げられるなど、全国的な認知度が向上していることを好機と捉え、「食」による滞在型観光を目指してまいります。
 「津山版DMO」の取組については、地域活性化起業人を活用した人材により、教育研修旅行、体験プログラムの造成、食文化の海外発信等の取組を加速させてまいります。
 歴史的資源を活用した「城泊・城下町泊」については、まずは津山城の鶴山館、衆楽園の迎賓館と余芳閣などを対象施設とし、コンセッション方式による運営を視野に入れて、事業を推進してまいります。
 この秋に開催される「森の芸術祭 晴れの国・岡山」では、本市がメイン会場の一つとなっており、グリーンヒルズ津山や衆楽園、城東・城西地区において、国内外のアーティストの作品が展示されます。これを機に観光資源の掘り起こしや、地域資源の磨き上げを通じたシビックプライドの醸成と地域活力の向上を図ってまいります。また、各会場を周遊するバスを運行することにより、快適な芸術体験につながる環境を整備してまいります。
 津山総合芸術祭については、「津山芸術文化博」と題し、各地域の芸術文化コンテンツにスポットを当て、情報発信等を通じ、文化振興による地域活性化を目指してまいります。
 城東・城西重伝建地区については、建造物の修理・修景を着実に実施するとともに、城東地区では無電柱化に向け、地域の方々や関係機関と協議をしていくほか、城西地区では観光駐車場の整備や防災計画の策定などに取り組み、歴史的風致を後生に継承してまいります。
 「あば交流館」については、本年度実施した大規模改修により、観光や合宿などの長期滞在にも適した施設となり、今後のさらなる交流人口の拡大につなげてまいります。
 
(8)行財政改革を断行し、効率的な行政運営を行う津山へ
 最後に、「行財政改革の断行と効率的な行政運営」についてであります。
 本年度の長期財政見通しにおいては、エネルギー価格、物価高騰などの影響はあるものの、最も減少が見込まれる令和12年度末の基金残高は、災害等に最低限対応するための目標額である10億円を確保できる見込みとなりました。今後においても、国の地方財政対策や新たな財政需要などに適切に対応し、健全な財政運営に努めてまいります。
 歳入確保策の一つであるふるさと納税については、着実に寄付額を増加させ、昨年1年間の寄付額は約8億円で、令和4年と比較して約4億3,000万円の増となっています。今後も魅力的な返礼品の開発などを進め、本市のふるさと納税の取組の充実を図ってまいります。また、企業版ふるさと納税についても、同様に増加させており、昨年1年間の寄付額は、約2,900万円で、令和4年と比較して約1,600万円の増と順調に推移しています。引き続き、本市の取組に賛同していただけるよう、立地企業や取引企業等への働きかけに一層注力してまいります。
 さらに、新たな歳入確保の取組として、「城泊・城下町泊」でのクラウドファンディングなどにも挑戦していきたいと考えております。
 ファシリティマネジメントについては、コンセッション施設として運営している「城下小宿 糀や」と「Globe Sports Dome」が、内閣府の政府広報や国土交通省が推進しているスモールコンセッションの先進事例として取り上げられており、全国的な注目を集めております。
 また、民間提案制度による事業としては、次年度、太陽光発電設備を主とし、LED照明、EVカー等を複合的に導入する脱炭素化パッケージ事業を実施いたします。電気代の削減による将来的な財政負担の軽減に加え、公共施設の脱炭素化を推進してまいります。
 今後もコンセッション方式や民間提案制度などの手法を活用することで、公共サービスの充実を図り、住民・民間事業者・行政が「三方よし」となる関係を実現することで、「活性型の行財政改革日本一」を目指してまいります。
 公共施設の適正化については、本年度、ファシリティマネジメント委員会からの答申を受けており、ワンセット主義からの脱却を目指し、より効率的で持続可能な施設運営が行えるよう、方針の検討を進めてまいります。
 また、空調設備等の老朽化などにより、大規模修繕の必要性が生じている勝北支所の庁舎についても、公共施設の方針を踏まえつつ、民間活力の導入も視野に入れ、方向性を検討してまいります。
効率的で生産性の高い行政運営の推進に当たっては、デジタル技術による行政サービスを提供できる組織づくりに向け、「津山市デジタル人材育成方針」を策定し、BPRを通じた意識改革や、中核を担うDX推進リーダーを育成するなど、総合的な人材育成・確保を図ってまいります。
 今後の施策・事業の決定手法については、より直近の客観的なデータ分析に基づいたデータドリブン型の政策形成を推進することで、迅速で効果的な行政運営を目指してまいります。
 次期総合計画については、現在の第5次総合計画の終期が令和7年度であることから、次年度より、住民共創型の新たな手法も用いながら、策定作業に取りかかってまいります。
 
4 おわりに
 以上、次年度の主要な施策を申し述べさせていただきました。
 津山市は、県北の中心都市・拠点都市としての基盤を築き、同時に住民一人ひとりの幸福と満足度を高めるという重大な役割があると考えております。
 また、その役割を果たしていくことで、チャールズ・ティボーの「足による投票」のごとく、多くの人が集まってくる魅力的なまちになっていくと確信しております。
 私は、このような時だからこそ、「かつてない困難からは、かつてない革新が生まれる。かつてない革新からは、かつてない飛躍が生まれる。」という現パナソニックの創業者の松下幸之助氏の言葉を肝に銘じ、あらゆる課題の解決に向けて、果敢に挑戦し続けてまいる所存であります。
 これからも、「一心一意」の気概を持ち続け、「新時代を“築く”大いなる挑戦」を旗印として、津山市の新しい歴史を切り拓いていきたいと思います。
 この実現は、私一人の力だけで成し遂げられるものではありません。住民の皆様、そして、議員の皆様など、多くの関係者のお力添えが不可欠であります。
 これからの未来への道のりは、私たち一人ひとりの行動や選択によって決まります。津山市に住む方々にとって、誇りと愛着の持てるまちとなるよう、これからの津山を共創してまいりましょう。
 住民の皆様並びに議員各位には、なお一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げ、私の施政方針といたします。