忘れるのは年のせい?認知症?
「忘れるのは年のせい?認知症? -物忘れの見分け方-」 ~津山市医師会~
顔は分かるのに名前が出てこない、うっかり約束を忘れてしまう、物の置き場所をすぐに思い出せない・・。もう若いとは言えない年になってくると、こういう経験は誰にでもあるのではないでしょうか。自分や家族の物忘れが目立ってくると、年のせいだからしょうがないと思いつつも、「認知症の始まりかしら」と心配になるものです。しかし、自然の老化による物忘れと認知症による記憶障害は、当初は似ていることがあっても次第に性質の違いがはっきりしてきます。物忘れが病的かどうか見分けることは、認知症の早期発見のために(無用な心配をしないためにも)重要ですので、その見分け方のコツについて説明したいと思います。

記憶は、まず脳に記憶を刻み込み(記銘)、それを脳の中に維持しておき(保持)、必要なときに思い出す(再生)という3つの過程で成り立っていますが、正常な老化現象では、このうちの「再生」の段階が上手くいかなくなることで「ど忘れ」が起きやすくなると理解されています。つまり、頭の中の記憶を取り出しにくくなるせいで、若い頃のようにパッと正解が出て来ず、細かいところまで十分に思い出せないことが多くなる結果、「あれ、あの、ほらアレだよ」「何か忘れているような気がするけど何だったかな?」などが増えるのです。
ただし、正常の老化現象ならば、「再生」以外の「記銘」「保持」の機能は保たれていますので、単に思い出しにくいだけで記憶自体は脳の中に残っています。ですから一時的に思い出せなくても、ふとしたはずみや、他人からの訂正やヒントなどをきっかけに記憶の「再生」が可能になり、「あーそうだった」と正しい記憶を思い出して納得することが出来ることがほとんどです。このような後から正しいことが思い出せる物忘れは良性と言えるでしょう。
これに対して認知症では、病的な脳の機能低下のために、「記銘」の段階から「保持」「再生」までのすべての記憶の過程が障害されますので、記憶が脳の中に一度も入ることがないままに失われてしまいます。そのため、忘れていることを他人に指摘されても思い出すことはできず、まったく身に覚えがないことのように感じますし、訂正されても納得できません。このように、記憶がスッポリ抜け落ちていて全然思い出せない、しかも本人には忘れているという自覚が乏しいというのが認知症の忘れ方の特長です。認知症の始まりは、本人よりも周囲の人の方が早く気付きやすいと言われているのはこのためです。

認知症の物忘れには他に、ゆっくり確実に進行してくる、日常生活への支障が大きくトラブルが起こりやすくなる、気が短くなったり意欲が低下するといった性格の変化を伴うことが多い、などの特長もあります。認知症は早期の診断が重要ですので(「認知症の早期診断の大切さについて」参照)、上記のような「認知症的な物忘れが増えてきているのでは?」と気になる方は、お早めにかかりつけ医か専門医にご相談下さい。
(希望ヶ丘ホスピタル 引地 充)



